第四十話 足りない力、足りている力
中級ダンジョン。
第一階層。
魔物との戦闘を終えた後。
三人は少し休憩を取っていた。
「怪我は?」
悠真が確認する。
「問題ない。」
漣が腕を回す。
「少し押されたけどな。」
雪乃も頷く。
「私も大丈夫です。」
三人とも大きな傷はない。
しかし。
悠真だけは、戦闘を振り返っていた。
「……。」
「また考えてるな。」
漣が言う。
悠真は顔を上げる。
「分かる?」
「分かる。」
漣は笑う。
「お前、戦いが終わった直後が一番真剣な顔してる。」
悠真は少し考えてから答える。
「さっきの戦い。」
「漣が前で止めてくれた。」
「雪乃さんが魔法で援護してくれた。」
「ポムが隙を作ってくれた。」
「俺は、最後に動いただけ。」
漣が眉を寄せる。
「いや。」
「それは違うだろ。」
「俺たちが動けたのは、お前が指示を出したからだ。」
悠真は黙る。
自分では。
まだ実感がなかった。
レベル。
ステータス。
数値。
それらを見ると。
自分は弱い。
でも。
戦闘では。
自分にもできることがある。
「不思議だな。」
悠真が呟く。
「何が?」
「ステータスを見ると、俺は弱い。」
「でも。」
「戦うと、できることがある。」
雪乃が静かに答える。
「それは、悠真さんが見ているものが違うからだと思います。」
「見ているもの?」
「はい。」
雪乃は続ける。
「多くの人は、自分の能力を見ると思います。」
「魔力量。」
「攻撃力。」
「スキル。」
「でも悠真さんは。」
「周りを見ています。」
その言葉に。
悠真は少し驚く。
自分では当たり前だった。
でも。
他の人から見ると違うらしい。
探索を再開する。
第二階層。
そこには鉱石が採取できる場所があった。
「鉱石?」
雪乃が近づく。
「武器素材になるかもしれません。」
漣も見る。
「こういうものって、鍛冶師が使うんだよな。」
その言葉。
悠真の足が止まる。
「鍛冶師……。」
「どうした?」
漣が聞く。
「いや。」
悠真は鉱石を見る。
魔力を含んだ素材。
魔力を通すもの。
「……。」
一つの考えが浮かぶ。
魔力が足りない。
なら。
魔力を扱いやすくするものを作ればいい。
まだ答えではない。
でも。
方向性は見え始めていた。
「持って帰れるなら、少し調べたい。」
悠真が言う。
漣が笑う。
「やっぱりそうなるか。」
「何が?」
「探索より研究の顔してる。」
その後。
三人は順調に探索を進める。
しかし。
第五階層へ到達した時。
空気が変わった。
魔物の数。
明らかに多い。
そして。
今までとは違う気配。
悠真が足を止める。
「……いる。」
漣が剣を構える。
「強い奴か?」
悠真は頷く。
「たぶん。」
雪乃が魔法準備に入る。
三人は自然に位置につく。
以前なら。
悠真は一人で考えていた。
でも今は違う。
仲間がいる。
頼ることができる。
その事実が。
悠真自身を少しずつ変えていた。
そして。
暗闇の奥から。
一体の魔物が姿を現す。
通常個体ではない。
ダンジョンが生み出した、
特殊個体。
その目が。
悠真を見る。
まるで。
初めから知っているかのように。




