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第三十八話 足りないものを作る

探索者協会訓練施設。




特別探索実習まで、残り三日。




「もう一度確認する。」




黒崎レオンが資料を開く。




「今回の目的は、中級ダンジョンの攻略ではない。」




「探索者として必要な判断力を見る。」




漣が頷く。




「つまり、無理に魔物を倒す必要はない。」




「そういうことだ。」




黒崎は答える。




「生き残る判断。」




「仲間を守る判断。」




「それができるかを見る。」






雪乃が魔法訓練をしている。




小さな火球。




以前より小さい。




しかし。




炎の揺らぎが少ない。




魔力の流れが安定している。




悠真はそれを見ていた。




「雪乃さん、魔力制御がかなり上手くなったね。」




雪乃は少し驚く。




「分かりますか?」




「うん。」




「前より魔力の無駄が少ない。」






雪乃は微笑む。




「悠真さんに言われると、少し複雑ですね。」




「え?」




「悠真さんは、そういうところを見るのが得意なので。」






漣が笑う。




「戦う前から相手を分析してるからな。」






悠真は否定できなかった。




魔物の動き。




仲間の癖。




周囲の環境。




使えるもの。






気づけば、常に考えるようになっていた。






訓練終了後。






悠真は一人で魔法訓練場に残った。






小さな火球を作る。






炎が生まれる。




しかし。




すぐに消える。






「……。」






理由は分かっている。






魔力量。






自分には、大きな魔法を維持するだけの魔力がない。






レベルが上がらない以上。




この問題は簡単には解決しない。






普通なら。




ここで諦める。






「魔法職は向いていない。」




そう判断する。






でも。




悠真は違った。






「魔力が少ないなら。」






「少ない魔力で使える方法を探せばいい。」






指を見る。






そこには一本の指輪。






【零落の指輪】






探索者協会の倉庫に眠っていた、


呪われたアーティファクト。






長い間。




誰にも使われることはなかった。






理由。






装備者の魔力量が一定以上になると、


魔力を失う呪いが発動するため。






魔力量の多い探索者ほど。




この指輪を使えなかった。






魔法職。




高ランク探索者。




才能ある者。






誰も装備できなかった。






「失敗作。」




そう呼ばれていた装備。






しかし。






鬼塚教官は違った。






悠真のステータスを見て。




この指輪を渡した。






「普通の装備が合わないなら。」






「普通じゃない装備を試す価値はある。」






そう言った。






そして。




悠真は装備できた。






呪いが発動する条件。




魔力量。






それを満たさなかったから。






「皮肉だな。」






悠真は小さく笑う。






誰も使えなかった理由が。




自分にとっては問題にならなかった。






現在確認できている能力。






【魔力消費軽減】






魔法使用時の魔力消費を大幅に抑える。






しかし。




悠真は気づいていた。






この指輪だけでは足りない。






消費を減らす。




それだけでは。




根本的な解決にはならない。






必要なのは。






「魔力を助けるもの。」






「魔力を循環させるもの。」






「作ることができるもの。」






視線が動く。






職業一覧。






錬金術師。






鍛冶師。






魔法士。






全てLv1。






でも。




使えないわけではない。






「まだ、使い方を知らないだけだ。」








その夜。






個人空間。






六畳一間。






小さな机。






悠真は紙に書き始める。






魔力消費。




魔力回復。




素材。




循環。






まだ完成には程遠い。






しかし。






初めて、自分で作りたいものができた。






「魔力が足りないなら。」






「補えるものを作る。」






ポムが横で跳ねる。






「ぷる!」






悠真は笑った。






「一緒に作ろう。」








その瞬間。






誰にも知られない場所で。






小さな可能性が生まれた。






レベルではなく。






熟練によって。


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