第三十四話 帰還者たち
ダンジョン入口。
警報音が鳴り響いていた。
普段なら。
探索者たちの出入りで賑わう場所。
しかし。
今日は違った。
協会職員。
探索管理官。
そして。
探索者育成学園の教官たち。
多くの人間が集まっていた。
「深層反応……間違いないのか?」
一人の職員が確認する。
「はい。」
「通常では観測されない魔力変動です。」
「しかも……。」
職員は端末を見る。
「反応の中心にいたのは。」
「神代悠真たちです。」
その名前を聞いた瞬間。
周囲が静かになる。
「またか……。」
誰かが呟く。
第一章。
学園ダンジョンで発生した異常。
強力個体との遭遇。
そして。
レベル1にも関わらず突破した少年。
神代悠真。
彼の名前は。
すでに協会内部では知られ始めていた。
しかし。
本人は。
「……疲れた。」
ダンジョン出口で。
そう呟いていた。
「普通に授業に戻れるかな……。」
蓮が呆れた顔をする。
「お前。」
「さっきまで世界の秘密みたいな場所にいたんだぞ?」
「なのに最初に心配するのが授業かよ。」
悠真は少し困った顔をする。
「だって。」
「明日、実技訓練あるし。」
雪乃が小さく笑う。
「悠真さんらしいですね。」
三人は。
強くなった。
以前とは比べものにならないほど。
しかし。
変わらない部分もある。
それが。
悠真たちらしさだった。
その時。
「神代。」
声がかかる。
振り返ると。
そこには鬼塚教官がいた。
「教官。」
鬼塚は三人を見る。
そして。
少し安心したように息を吐いた。
「無事で何よりだ。」
「深層で何があった。」
悠真は少し迷う。
零落の指輪。
アステル。
ダンジョンの意思。
すべて話すべきなのか。
しかし。
鬼塚の表情を見る。
怒っているわけではない。
ただ。
心配している。
「……全部説明します。」
悠真は答えた。
協会会議室。
数時間後。
「信じられない話だな。」
協会幹部が資料を見る。
映像記録。
魔力反応。
探索ログ。
すべてが。
通常では説明できない。
「古代文明。」
「ダンジョンの意思。」
「そして、零落の指輪。」
一人が言う。
「神代悠真。」
「君は自分が何に関わっているか理解しているか?」
悠真は黙る。
少し考える。
そして。
答える。
「分かりません。」
会議室が静まる。
「でも。」
「分からないから。」
「調べたいです。」
「ポムも。」
「蓮も。」
「雪乃も。」
「一緒に進みたいと思っています。」
その言葉に。
鬼塚教官は小さく笑った。
「やはり。」
「お前は変わらんな。」
協会側は判断を迫られていた。
危険な存在なのか。
監視すべきなのか。
それとも。
支援すべきなのか。
しかし。
一つだけ決まった。
【神代悠真】
【黒崎蓮】
【雪乃白石】
この三名を。
正式な特別探索実習対象として登録する。
「特別……。」
悠真が呟く。
蓮が笑う。
「学生生活、終わったな。」
「まだ18歳なんだけど……。」
悠真が返す。
雪乃が笑う。
「でも。」
「私たちはまだ学生ですよ。」
そう。
世界の秘密に触れていても。
ダンジョンに認められていても。
彼らはまだ。
18歳の学生だった。
そして。
翌日。
学園では。
新たな騒ぎが起きる。
「神代悠真が?」
「深層攻略者……?」
「レベル1なのに?」
噂は。
静かに広がり始めていた。




