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第三十三話 小さな進化の意思

深層領域。




巨大な影が。




三人と一匹を見下ろしていた。




その姿は。




魔物とは少し違っていた。




巨大な獣のようでもあり。




人のようでもある。




しかし。




最も特徴的なのは。




その目だった。




感情がある。




知性がある。




まるで。




人類を観察しているような目。






『確認する』




低い声が響く。






『お前たちは』




『完成を望むか』






悠真は警戒しながら答える。




「完成……。」




「それは、強くなることですか?」






巨大な存在は少し沈黙した。






『違う』






『旧文明の者たちは』




『強さを完成と勘違いした』






その言葉に。




アステルが目を伏せる。






『力を得れば』




『失うものはないと思っていた』






『しかし』






『力が大きくなるほど』




『選択の責任も大きくなる』






悠真は黙る。






レベル。




ステータス。




魔力量。






この世界では。




数字が強さの基準になる。






でも。




本当の強さとは何なのか。






その答えを。




今、試されている。






『最初の問い』






巨大な存在がポムを見る。






『未完成の生命』






『お前は』






『なぜ進化を望む』






ポムの身体が揺れる。






「ぷる……。」






悠真は思わず声をかける。




「無理に答えなくていい。」






ポムは悠真を見る。






そして。




小さく震えた。






違う。




そう伝えているようだった。






ポムは前へ出る。






悠真の後ろではなく。






隣へ。






「……。」




悠真は驚く。






初めてだった。






ポムが。




自分を守る側へ立とうとしている。






『答えよ』






巨大な存在が問う。






『力が欲しいのか』






『強者になりたいのか』






ポムは首を振る。






「ぷる。」






違う。






『では何だ』






ポムの身体が光る。






小さな記憶が。




空間に映し出される。






最初の日。






誰にも相手にされなかった小さなスライム。






弱い。




役に立たない。






そう言われ続けた存在。






しかし。




ある日。




一人の少年が手を伸ばした。






「一緒に来るか?」






神代悠真。






あの日から。




ポムの世界は変わった。






『答え』






巨大な存在が確認する。






ポムは。




悠真を見る。






「ぷる。」






そして。




前を見る。






自分が進化したい理由。






それは。






「悠真を守れるようになりたい」






だった。






言葉にはならない。






しかし。




意思は届いた。






空間が震える。






【回答確認】






【条件達成】






【契約存在】




【進化意思】






確認。






悠真の零落の指輪が光る。






【ポム】




進化条件更新。






【必要項目】




・魔力適性

・経験値

・契約者との共鳴

・進化意思






悠真は息を呑む。






「進化意思……。」






今まで。




レベル。




経験値。




能力。






そういうものだけが成長条件だと思っていた。






でも。




ポムの場合。




一番重要だったのは。




本人の意思だった。






アステルが静かに笑う。






『それが』




『私たちが最後まで理解できなかったものだ』






『生命は』




『与えられた力だけでは進化しない』






『自ら望んだ時』




『初めて変化する』








すると。




巨大な存在が悠真を見る。






『次の問い』






『神代悠真』






『お前は』






『仲間が自分より先に強くなることを』






『受け入れられるか』






悠真は一瞬。




言葉を失った。






それは。




自分でも考えたことがなかった問いだった。






ポムが。




蓮が。




雪乃が。




自分より強くなる日。






その時。




自分は。




本当に喜べるのか。






悠真はゆっくり答える。






「もちろんです。」






「むしろ。」






「そうなってほしい。」






「僕一人では守れる範囲に限界がある。」






「でも。」






「仲間が強くなれば。」






「もっと多くのものを守れる。」








沈黙。






そして。






【判定】






【合格】






巨大な存在が初めて。




少しだけ表情を変えた。






『旧文明との差異』






『確認』






『お前たちは』






『力を所有するのではなく』






『力を繋げようとしている』








その瞬間。




ポムの身体に。




小さな光が集まる。






しかし。




まだ進化は起きない。






【進化条件】




【一部達成】






悠真は笑う。






「まだ途中なんだな。」






「ぷる!」






ポムも嬉しそうに揺れる。








しかし。




その直後。




ダンジョン全体に警告が響いた。






【異常】






【外部接続確認】






アステルの顔色が変わる。






『……まさか』






悠真が振り返る。






「何が起きたんですか?」






アステルは答える。






『誰かが』




『この深層への入口を開いた』






『そして』






『お前たちの存在が』






『外の世界に知られる』


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