第三十二話 眠れる深層
ダンジョン深層。
巨大な扉の前。
悠真たちは立っていた。
目の前にあるものは。
ただの扉ではない。
まるで。
世界そのものが閉じ込められているような。
そんな圧力を感じる。
「……これが。」
蓮が呟く。
「次の階層か。」
アステルは静かに首を振った。
『違う』
『これは階層ではない』
雪乃が問いかける。
「では、何なんですか?」
アステルは扉を見る。
『記憶だ』
「記憶?」
悠真は眉をひそめる。
アステルは頷く。
『この場所には』
『かつての人類の選択が残されている』
『ダンジョンは』
『ただ敵を生み出しているわけではない』
『過去を記録している』
悠真は思い出す。
零落の指輪。
ポム。
そして。
旧文明の崩壊。
すべてが一本につながっている。
「僕たちに見せたいものがあるんですか。」
アステルは答えない。
ただ。
扉へ手を向ける。
『進めば分かる』
その瞬間。
ポムが突然反応した。
「ぷる……。」
悠真はすぐ気づく。
「怖いのか?」
ポムは少し揺れる。
しかし。
逃げなかった。
「偉いな。」
悠真が微笑む。
「一緒に行こう。」
「ぷる!」
蓮が笑う。
「本当に変わったな、そいつ。」
雪乃も頷く。
「最初に会った頃とは別の存在みたいです。」
悠真はポムを見る。
確かに。
ポムは強くなった。
でも。
それ以上に。
変わったのは。
一緒に歩こうとする意思だった。
三人と一匹。
扉へ近づく。
すると。
零落の指輪が反応した。
【第三段階】
【条件確認】
悠真の表情が変わる。
「第三段階……。」
しかし。
続く表示に。
全員が驚く。
【必要条件】
【主人の成長】
【契約存在の進化】
【仲間との信頼】
そして。
最後。
【世界との接触】
「世界との接触?」
雪乃が呟く。
アステルの表情が変わった。
『……そうか』
『ついに、その条件まで出たか』
悠真を見る。
『これより先は』
『ただの探索ではない』
『お前たちは』
『ダンジョンに認識された』
その瞬間。
遠くから音が響く。
ゴゴゴゴ……。
巨大な何かが動いている。
「魔物?」
蓮が武器を構える。
しかし。
アステルは首を振る。
『違う』
『あれは魔物ではない』
『ダンジョンが生み出した』
『次の観測者だ』
闇の奥。
巨大な影が目を開く。
その存在は。
悠真たちを見る。
『確認』
『未完成の指輪』
『未完成の生命』
『未完成の人間』
『興味深い』
悠真は構える。
しかし。
その声には。
敵意がなかった。
『質問する』
『お前たちは』
『完成を望むか』
悠真は答えようとする。
しかし。
その前に。
ポムが前へ出た。
「ぷる。」
悠真は驚く。
ポムが。
自分より先に答えようとしている。
アステルは静かに呟いた。
『始まったか』
『本当の進化が』




