第二十七話 ダンジョンからの招待状
Dランクダンジョン。
第五階層。
「今日はここまでですね。」
雪乃が時計を見る。
探索開始から三時間。
初心者向けダンジョンとはいえ。
油断はできない。
「問題なさそうだな。」
蓮が周囲を見る。
「魔物の強さも予想通り。」
「連携も問題なし。」
悠真は頷く。
確かに。
戦闘自体は順調だった。
蓮。
雪乃。
そして自分。
第一章の頃とは違う。
三人とも成長している。
しかし。
悠真には気になることがあった。
「……。」
壁を見る。
「どうした?」
蓮が聞く。
悠真は黙ったまま。
ダンジョン内部。
普通なら存在しない場所。
先ほどから。
魔物の配置。
通路の形。
少しだけ違和感がある。
「何かいる。」
雪乃が緊張する。
「魔物ですか?」
悠真は首を振る。
「違う。」
「敵じゃない。」
「でも。」
「見られている感じがする。」
その瞬間。
ポムが反応した。
「ぷる……。」
悠真の肩に乗っていたポムが、前方を見る。
「ポム?」
ポムがゆっくり進む。
そこには。
ただの岩壁。
しかし。
ポムが触れた瞬間。
光が走った。
「……!」
岩壁に文字が浮かび上がる。
古代文字。
雪乃が息を呑む。
「これは……。」
「古代ダンジョン文字。」
蓮が驚く。
「読めるのか?」
雪乃は首を振る。
「一部だけです。」
「でも……。」
文字の意味を読み取る。
そして。
表情が変わった。
「……適合者。」
悠真を見る。
「そう書いてあります。」
悠真は壁を見る。
適合者。
その言葉。
零落の指輪でも見た。
すると。
右手の指輪が反応する。
【零落の指輪】
【共鳴対象確認】
【古代ダンジョンシステム】
【接続開始】
悠真は驚く。
「接続?」
次の瞬間。
頭の中に声が響いた。
『確認』
『未完成の存在』
『進化可能な個体』
『選定条件を満たしました』
悠真は周囲を見る。
誰も反応していない。
聞こえているのは。
自分だけ。
『質問』
『なぜ力を求める』
悠真は答えに迷った。
昔なら。
強くなるため。
そう答えていた。
でも。
今は違う。
ポムを見る。
蓮を見る。
雪乃を見る。
「守りたいから。」
『……。』
「僕自身は。」
「まだ弱い。」
「でも。」
「大切なものを失わないために。」
「強くなりたい。」
しばらく沈黙。
そして。
『条件確認』
『適合』
壁がゆっくり開く。
その先には。
小さな部屋。
中央に。
古びた石碑があった。
【魔力ではなく】
【可能性を持つ者へ】
悠真は読む。
【世界は力ある者だけを選ぶ】
【しかし】
【力を持たない者だからこそ】
【見える可能性も存在する】
悠真は息を止めた。
これは。
零落の指輪と同じ思想。
「誰が……。」
その時。
石碑の奥。
一つの映像が浮かぶ。
白髪の研究者。
そして。
その隣には。
黒い指輪。
『もし、この記録を見る者がいるなら』
『零落の指輪は失敗作ではない』
『完成するための』
『最初の欠片だ』
映像が消える。
悠真は指輪を見る。
零落の指輪。
まだ。
本当の力は眠っている。
そして。
このダンジョンは。
それを知っている。




