第二十五話 ポムの変化
個人空間。
静かな時間が流れていた。
悠真は机に向かい、魔法式の研究をしている。
その横。
「ぷる。」
ポムが本を覗き込んでいた。
「それは違うぞ、ポム。」
悠真は笑う。
「そこは魔力の流れじゃなくて、術式構造を見るんだ。」
「ぷる?」
首を傾げるように身体を揺らす。
悠真は少し笑った。
以前なら。
この空間には自分しかいなかった。
誰とも話さず。
誰にも期待されず。
ただ強くなるためだけに時間を使っていた。
しかし。
今は違う。
「ポム。」
「お前がいると、研究も少し楽しいな。」
「ぷる!」
嬉しそうに跳ねる。
その瞬間。
右手の指輪が淡く光った。
【共鳴反応】
悠真が気づく。
「また……。」
表示を見る。
【対象】
ネオスライム
ポム
【対象】
零落の指輪
【共鳴率】
68%
悠真は驚く。
「昨日より上がっている。」
しかし。
理由が分からない。
戦闘したわけではない。
特別な訓練をしたわけでもない。
「何が条件なんだ?」
その時。
ポムが突然、苦しそうに震え始めた。
「ポム!?」
悠真が駆け寄る。
小さな身体が光を放つ。
「大丈夫か?」
触れる。
すると。
温かい感覚が伝わってきた。
苦しみではない。
変化。
【進化条件確認】
【信頼度】
100%
【主人との共同行動】
達成
【特殊条件】
達成
悠真の目の前に表示が現れる。
【ネオスライム】
↓
【???】
「……。」
悠真は息を止める。
進化。
本来。
魔物の進化には条件がある。
レベル。
能力値。
特殊素材。
しかし。
ポムの場合。
違った。
一緒に過ごした時間。
信頼。
絆。
それが進化条件だった。
「ポム。」
「お前……。」
ポムの身体を包む光が強くなる。
その瞬間。
零落の指輪が反応した。
【共鳴】
【未完成存在を補助します】
悠真は驚く。
「補助?」
すると。
別の表示が現れる。
【能力共有】
【主人への影響】
・魔力制御補正
・契約魔物との意思疎通強化
悠真は目を見開く。
「僕にも……。」
力が流れ込む。
魔力量が増えたわけではない。
しかし。
魔力操作の感覚が変わった。
今までより。
細かく。
正確に。
扱える。
「これは……。」
まるで。
ポムの成長が。
自分にも影響している。
数分後。
光が消える。
そこにいたのは。
少し姿が変わったポム。
以前より透明感が増し。
身体の中心に小さな核のようなものが見える。
悠真は鑑定する。
【名称】
ポム
【種族】
ネオスライム
【状態】
進化準備段階
【進化可能】
「準備段階?」
すると。
新しい表示。
【完全進化条件】
???
悠真は苦笑する。
「まだ先があるのか。」
「ぷる。」
ポムが元気よく揺れる。
悠真は笑った。
「そうだな。」
「一緒に探そう。」
その頃。
ダンジョン深層。
巨大な魔力反応。
長い眠りについていた存在が目を開く。
『……。』
『契約者。』
『成長を開始したか。』
暗闇の中。
誰かが呟く。
『ならば、次の試練を与えよう。』




