第二十三話 零落の真価
ダンジョン協会・第七訓練施設。
魔法検証室。
悠真は、自分の右手を見る。
黒い指輪。
【零落の指輪】
アーティファクト級。
しかし。
誰にも使えなかった装備。
「本当に大丈夫なのか?」
蓮が心配そうに聞く。
悠真は頷く。
「今のところは。」
「今のところって……。」
蓮は呆れた顔をする。
「お前さ。」
「普通ならもっと慎重になるところだぞ。」
悠真は少し考える。
「そうかな。」
雪乃が小さく笑った。
「神代さんらしいと思います。」
「危険を無視しているわけではありません。」
「ちゃんと確認した上で、可能性を見ている。」
蓮はため息をつく。
「それが一番危ないんだけどな。」
黒崎が魔法測定装置を見る。
「まず確認する。」
「魔力量。」
装置に手を置く。
数値が表示される。
魔力量。
5
以前と変化なし。
悠真は少し驚く。
「増えていない。」
黒崎は頷く。
「当然だ。」
「零落の指輪は魔力を増やす装備ではない。」
「なら。」
「何を変えた?」
悠真は考える。
魔力を操作する。
いつものように。
魔法式を構築。
すると。
違和感。
「……。」
魔力の流れが違う。
今まで。
魔法を発動するとき。
どうしても一定量の魔力が漏れていた。
それは普通のことだった。
人間の魔力操作には限界がある。
しかし。
今は。
魔力が一切無駄なく流れている。
まるで。
全ての魔力が目的地へ向かっている。
「これは……。」
雪乃が驚く。
「魔力制御率が……。」
測定器を見る。
「98%?」
蓮が驚く。
「それって高いのか?」
雪乃は頷く。
「異常です。」
「普通の魔法使いでも、70%を超えれば優秀です。」
「90%以上なんて……。」
雪乃は悠真を見る。
「聞いたことがありません。」
黒崎が静かに言う。
「違う。」
全員が黒崎を見る。
「神代の場合。」
「元々制御技術が高すぎた。」
「だから。」
「零落の指輪は能力を与えたんじゃない。」
「邪魔していた無駄を消しただけだ。」
悠真は指輪を見る。
「僕の力を増やしたんじゃなくて。」
「僕が持っていたものを、全部使えるようにした。」
黒崎は頷く。
「そういうことだ。」
その言葉を聞いた瞬間。
悠真は理解した。
零落の指輪。
これは。
強者をさらに強くする装備ではない。
弱者が持つ、小さな力を最大限に引き出す装備。
だから。
誰にも使えなかった。
魔力量1000の人間。
↓
失うものが多すぎる。
魔力量5の人間。
↓
失うものがない。
「皮肉ですね。」
悠真が呟く。
「弱いから使えるなんて。」
黒崎は答える。
「違う。」
「弱かったから、見つけられたんだ。」
その日の夕方。
悠真は個人空間へ入る。
ポムが近づいてくる。
「ぷる?」
悠真は右手を見せる。
黒い指輪。
「新しい仲間だ。」
ポムが近づく。
すると。
零落の指輪が淡く光った。
【共鳴確認】
悠真の表情が変わる。
「……共鳴?」
ポムが嬉しそうに揺れる。
「ぷる!」
表示。
【対象】
ネオスライム
ポム
【対象】
零落の指輪
共通点。
【未完成】
【成長可能】
悠真は息を止める。
「未完成……。」
ポムを見る。
「ポムも?」
「ぷる。」
その瞬間。
悠真は気づいた。
ポムも。
零落の指輪も。
最初から完成された存在ではなかった。
だからこそ。
成長できる。
遠く。
ダンジョンの深層。
何かが目覚める。
『……適合者』
『確認』
『成長する可能性を持つ者』
世界のどこかで。
ダンジョンそのものが。
悠真という存在を認識し始めていた。




