第二十二話 使えない才能
ダンジョン協会。
地下保管区画。
そこには、数千にも及ぶ装備品が保管されていた。
強力な武器。
希少な防具。
歴代の探索者が残した遺産。
その中には。
世界を変えるほどの価値を持つものも存在する。
しかし。
価値があるからといって。
誰もが使えるわけではない。
「これが……。」
悠真は目の前の指輪を見る。
黒い金属。
装飾は少ない。
一見すると、ただの古びた指輪。
しかし。
鑑定結果だけは違った。
【零落の指輪】
ランク:
アーティファクト級
その文字だけなら。
最高級装備。
だが。
その下には。
【使用禁止】
【呪い付き】
と表示されている。
「アーティファクト級なのに……。」
悠真が呟く。
鬼塚教官が頷く。
「そうだ。」
「だからここにある。」
鬼塚は腕を組む。
「アーティファクト級装備は、本来なら国家レベルで管理される。」
「だが。」
指輪を見る。
「これは誰にも使えなかった。」
数十年前。
この指輪を発見した探索者がいた。
当時、その探索者は期待した。
「新しい神器になる。」
そう思った。
しかし。
装備した瞬間。
魔力が消えた。
魔法使いとしての力を失った。
その後も。
何人もの探索者が試した。
剣士。
魔法使い。
治癒師。
結果は同じ。
魔力消失。
そして。
いつしか。
「呪われた失敗作」
と呼ばれるようになった。
「……。」
悠真は指輪を見る。
「本当に失敗作なのかな。」
鬼塚が少し驚く。
「なぜそう思う?」
悠真は指輪を手に取る。
「分かりません。」
「でも。」
「これだけ長い時間、残っている。」
「完全な失敗なら。」
「もっと早く消えている気がします。」
鬼塚は黙った。
この少年は。
時々、不思議な視点を持っている。
「鑑定してみろ。」
黒崎が言った。
悠真は頷く。
【鑑定】
情報が表示される。
【零落の指輪】
所有者:
未設定
能力:
魔力変換
呪い:
魔力量10以上の場合、魔力完全消失
条件:
魔力量10以下
悠真は目を細める。
「……。」
「条件があります。」
鬼塚が反応する。
「条件?」
「はい。」
悠真は表示を見る。
「これ。」
「壊れているんじゃない。」
「使う人を選んでいる。」
沈黙。
黒崎が指輪を見る。
「つまり。」
「今まで使おうとした人間が、全員条件を満たしていなかった。」
悠真は頷く。
「そうだと思います。」
鬼塚は苦笑する。
「そんな馬鹿な話があるか。」
「魔力量が少ない者だけが使えるアーティファクト?」
普通なら。
欠陥品。
しかし。
悠真には思い当たることがあった。
自分自身。
レベル1。
魔力量。
最低。
「試すか?」
黒崎が聞く。
悠真は少し考える。
危険かもしれない。
でも。
この指輪には。
ポムと同じものを感じた。
誰にも必要とされなかった存在。
「……。」
「お願いします。」
悠真は指輪を装備する。
その瞬間。
世界が静かになった。
【条件確認】
【魔力量】
【5】
【条件達成】
【装備開始】
黒い指輪が淡く光る。
しかし。
何も起こらない。
「……?」
鬼塚が驚く。
「魔力消失が起きない?」
黒崎は目を細める。
「違う。」
「始まったんだ。」
悠真の視界に、新しい表示が浮かぶ。
【零落の指輪】
第一段階解除
能力:
【魔力変換】
追加効果:
【魔力効率化】
悠真は息を止める。
「……。」
黒崎が言う。
「神代。」
「お前。」
「また普通では使えないものを使ったな。」
悠真は指輪を見る。
そして。
少し笑った。
「僕に似ているのかもしれません。」
「誰にも評価されなかったところが。」
その瞬間。
遠く。
ダンジョンの奥。
何かが反応した。
まるで。
新しい存在を認識したように。




