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第二十一話 レベル1の限界

先日に起きた変異種討伐。


その出来事は、探索者たちの間で大きな話題となっていた。




レベル1の探索者。


神代悠真。




通常なら、まだ新人探索者として扱われるはずの少年。


しかし。


彼はAランク探索者・黒崎レオンと共に、通常では学生が相手にすることのない強力個体との戦闘を経験した。




問題は。


彼の評価だった。




戦闘中の判断。


仲間への指示。


魔物の分析。


危険察知能力。




どれも新人とは思えない。




しかし。




ステータスを見ると。




レベル。


1




身体能力。


魔力量。


すべてが初心者相当。




説明がつかなかった。




そこでダンジョン協会は、特別な制度を適用することを決定した。




特別観察制度




将来的に大きな影響を与える可能性がある探索者候補を対象に、


上級探索者が直接指導・観察を行う制度。




目的は三つ。




一つ。


能力の正確な把握。




二つ。


未知スキルへの対応。




三つ。


本人が秘める可能性の確認。




そして。


神代悠真の担当となった人物。




Aランク探索者。


黒崎レオン。




「面倒な仕事を押し付けられたものだ。」




最初、黒崎はそう言った。




しかし。


断ることはなかった。




理由は。




興味があったからだ。




レベル1。


最弱。




そう呼ばれる少年。




だが。


あの戦闘で見せた判断力は。


レベルという数字では説明できなかった。






現在。




ダンジョン協会・第七訓練施設。




一般探索者や学生は使用できない、上級探索者専用施設。




悠真は周囲を見渡した。




「ここ……本当に使っていいんですか?」




黒崎は木剣を手に取りながら答える。




「協会の許可を取っている。」




「お前はもう、普通の新人探索者として評価する段階ではない。」




悠真は少し驚く。




「俺が?」




黒崎は首を振る。




「勘違いするな。」




「強いからじゃない。」




「分からないからだ。」




悠真は黙る。




「お前の能力は、今の評価基準では測れない。」




「だから俺が見る。」






黒崎が木剣を構える。




「まず確認する。」




「お前自身が、自分の限界を理解しているか。」









木剣がぶつかる。




一撃。


二撃。


三撃。




悠真の剣筋は美しかった。




無駄がない。


迷いがない。




相手の動きを予測し、


最適な場所へ剣を置く。




しかし。




「遅い。」




黒崎の木剣が悠真の肩を止めた。




悠真は息を吐く。




「やっぱりか。」




黒崎は頷く。




「技術だけなら問題ない。」




「いや。」




「異常なレベルだ。」




悠真を見る。




「だが。」




「身体が追いついていない。」






悠真は拳を握る。




分かっていた。




個人空間で積み重ねた時間。




剣術。


武術。


戦闘経験。




知識なら誰にも負けない。




しかし。




身体は18歳。




レベル1。




それが現実だった。




「もう一度。」




悠真は構える。




黒崎が頷く。




再び木剣が交差する。




完璧な一撃。




しかし。




届かない。




あと少し。




力が足りない。




「……。」




黒崎が言う。




「お前は弱いわけじゃない。」




「ただ。」




「今のお前は、技術だけが先に進みすぎている。」









午後。




魔法訓練施設。




「次は魔法ですね。」




雪乃が協会施設へ来ていた。




悠真の能力確認に協力するためだ。




魔法陣が展開される。




雪乃は術式を見る。




そして。


表情が変わった。




「……神代さん。」




「この術式。」




「第七階位魔法の構築式ですよね?」




悠真は頷く。




「そう。」




蓮が驚く。




「第七階位って……」


「上級探索者が使う魔法だろ?」




雪乃は頷く。




「そうです。」




「普通なら、理解するだけでも長い年月が必要です。」




悠真は魔法陣を見る。




個人空間で何度も研究した。




術式。


魔力循環。


制御方法。




すべて理解している。




「じゃあ、発動できるのか?」


蓮が聞く。




悠真は少し間を置いた。




「試す。」




魔法陣が輝く。




術式展開。




完璧。




雪乃は息を呑む。




「すごい……。」




そして。




発動。




小さな炎が浮かぶ。




拳ほどの火球。




蓮が首を傾げる。




「……え?」




「これが?」




「第七階位魔法?」




雪乃は首を振る。




「違います。」




「これは神代さんの魔力量では、出力できる限界です。」




悠真は炎を見る。




知識はある。


技術もある。




でも。




力が足りない。




黒崎が静かに言った。




「神代。」




「お前は。」




「神級の設計図で、豆電球を光らせている状態だ。」




悠真は顔を上げる。




黒崎は続ける。




「術式は完成している。」




「制御も完璧だ。」




「だが。」




「燃料が足りない。」




「だから。」




「本来なら巨大な光を生み出せる技術で、小さな光しか出せない。」




悠真は静かに炎を見る。




悔しい。




でも。




諦める理由にはならなかった。






帰り道。




蓮が笑う。




「しかし。」




「本当に変わってるよな。」




「普通は力はあるけど技術がないって悩むんだぞ。」




「なのに悠真は逆。」




「技術だけ化け物。」




悠真は少し笑う。




「それ、褒めてるのか?」




蓮は考える。




「……半分。」




「半分か。」




「残り半分は呆れてる。」




「ひどいな。」




三人は笑った。




その夜。




悠真は個人空間へ入る。




机の上には研究資料。




鍛錬した記録。




積み重ねた時間。




しかし。




足りない。




「レベルという壁か……。」




ポムが揺れる。




「ぷる。」




悠真は笑った。




「そうだな。」




「まだ方法はある。」




翌日。




鬼塚教官から呼び出しが届いた。




場所。


ダンジョン協会保管庫。




「神代。」




鬼塚は言った。




「お前に見せたいものがある。」




そこにあったのは。




一本の古びた指輪。




「これは?」




鬼塚は答える。




「アーティファクト級装備だ。」




悠真が目を見開く。




しかし。




「誰にも使えなかった。」




鑑定結果。




【零落の指輪】


ランク:


アーティファクト級




状態:


呪い付き




呪い:


魔力量10以上の使用者。


魔力を完全消失。




悠真は指輪を見る。




普通なら。


使えない。




でも。




なぜか。




この指輪は。




自分を見ている気がした。


第二章『ダンジョンの意思』が始まりました。


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。


第二章では、第一章で積み上げてきた設定をさらに掘り下げていきます。


レベル1のまま成長できない悠真。


しかし、レベルでは測れない熟練度や経験。


そして、彼を取り巻く新たな謎。


これから少しずつ明らかになっていきます。


もし、

「続きが気になる」

「悠真の成長を見届けたい」

「ポムの活躍が楽しみ」


と思っていただけましたら、


評価やブックマークをしていただけると、とても大きな励みになります。


また、

「このキャラクターが好き」

「この展開が面白かった」

「ここが気になる」


など、感想も大歓迎です。


皆様の応援を力に、これからも『LEVEL 1』の世界を描いていきます。


第二章も、神代悠真たちの冒険をよろしくお願いいたします。


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