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第十九話 レベル1の判断


第一階層異常個体発生。


その報告は、ダンジョン協会の緊急案件として扱われた。


新人探索実習中に発生した、通常ではありえない魔物。


そして、その魔物は通常個体とは異なる魔力反応を示していた。




「変異種の可能性があります。」


協会職員の報告に、会議室の空気が重くなる。


変異種。


それは通常の魔物とは違う進化を遂げた存在。


発生例は少ない。


しかし、共通していることがある。


危険度が、通常個体とは比較にならないこと。




「調査隊を派遣する。」


協会責任者が告げる。


「新人探索者だけで対応できる案件ではない。」


当然の判断だった。




翌日。


探索者育成学園。


悠真たちは会議室へ呼ばれていた。


そこには鬼塚教官。


そして一人の男。


黒い探索者装備。


無駄のない立ち姿。


鋭い目。


「Aランク探索者、黒崎レオンだ。」


鬼塚教官が紹介する。


「今回の調査責任者になる。」




「君たちにも同行してもらう。」


蓮が少し驚く。


「俺たちもですか?」


黒崎は頷く。


「最初に遭遇した人間の証言は重要だ。」


「ただし。」


黒崎の視線が鋭くなる。


「戦闘は禁止。」


「危険を感じたら、すぐに後退しろ。」


悠真たちは頷いた。


自分たちの実力は理解している。




第一階層。


今回は前回とは違った。


周囲には協会調査員。


そしてAランク探索者、黒崎。


鬼塚教官も同行している。


安全を確認しながら慎重に進む。




「ここです。」


悠真が足を止める。


オークと遭遇した場所。


黒崎は周囲を見る。


「……。」


「確かに妙だな。」


雪乃も魔力を探る。


「空間全体の魔力循環が乱れています。」


黒崎が尋ねる。


「分かるのか?」


「はい。」


雪乃は頷く。


「魔法を扱う者なら、ある程度は感じ取れます。」




その時。


ポムが震えた。


「ぷる……。」


悠真がしゃがむ。


「ポム?」


ポムは奥を見る。


逃げたい。


でも。


何かを伝えようとしている。




「奥に何かいます。」


悠真が言った。


黒崎が見る。


「理由は?」


「ポムが反応しています。」


黒崎は一瞬だけ眉を動かした。


「スライムが?」


疑っている。


しかし否定もしない。




次の瞬間。


地面が揺れた。


ズン……。


ズン……。


奥から現れた魔物。


黒い魔力をまとった異形。




「……変異種。」


黒崎が呟く。


「全員、戦闘準備。」




鬼塚教官がすぐに指示を出す。


「生徒は無理をするな!」


「危険なら私の判断で撤退する!」


「了解!」


蓮と雪乃が頷く。




黒崎が前へ出る。


「俺が正面から抑える。」


剣を抜く。


一瞬。


姿が消える。




斬撃。


しかし。


ギィン!


刃が弾かれる。




「硬い。」


黒崎の表情が変わる。


さらに攻撃。


速度。


技術。


全てが一級品。


しかし。


魔物は倒れない。




「ただ強いだけじゃない。」


悠真は魔物を見る。


「魔力が暴走しています。」


黒崎が振り返る。


「根拠は?」


悠真は答える。


「攻撃後だけ魔力の流れが乱れます。」


「胸部。」


「そこに魔力核があります。」




黒崎は魔物を見る。


数秒。


そして。


「……作戦を聞こう。」




悠真は少し驚く。


しかし、すぐに答える。


「黒崎さんが正面から攻撃してください。」


「魔力核が露出する瞬間を作ります。」


「蓮。」


「動きを止める補助をお願いします。」


蓮は頷く。


「任せろ。」


悠真は雪乃を見る。


「雪乃さん。足止めをお願いします。」


雪乃は一瞬だけ驚いた。


しかし。


すぐに微笑む。


「分かりました。」




鬼塚教官が確認する。


「神代。」


「勝算はあるのか?」


悠真は魔物を見る。


「あります。」


「ただし。」


「全員の協力が必要です。」




黒崎が剣を構える。


「いいだろう。」


「やるぞ。」




戦闘開始。


黒崎が正面から攻める。


変異種の注意を引く。


蓮が側面から動きを制限する。


雪乃の魔法が足元を凍らせる。


そして。


悠真が観察する。




「今です!」


魔力の流れが乱れる。


黒崎が踏み込む。


しかし。


魔力壁が発生する。


攻撃が止まる。




「まだです。」


悠真が言う。


「次の攻撃後。」


「もう一度、魔力が乱れます。」




変異種が咆哮する。


大きな一撃。


黒崎が避ける。


その瞬間。


胸部の魔力が揺らいだ。




「ポム。」


悠真が呼ぶ。


「怖かったら戻っていい。」


ポムは震える。


しかし。


悠真を見る。


「ぷる。」




ポムが前へ出る。


最弱の魔物。


スライム。


しかし。


悠真と過ごした時間がある。




ポムが魔力核へ触れる。


吸収ではない。


攻撃でもない。




【スライム固有能力】


【魔力循環】


発動。




暴走していた魔力が一瞬だけ正常化する。


変異種の力が弱まる。




「今!」


黒崎の剣が閃く。


蓮の攻撃。


雪乃の魔法。


三つの力が重なる。




ドン……。


変異種は崩れ落ちた。




静寂。




悠真はすぐにポムを抱き上げる。


「大丈夫?」


「ぷる……。」


弱々しい返事。


でも。


ポムは悠真の手の中で揺れた。




黒崎はその姿を見る。


「神代悠真。」


「はい。」


「お前のスライム。」


少し間を置く。


「普通ではないな。」


悠真は首を振る。


「違います。」


「ポムは普通です。」


「僕と一緒にいただけです。」




その瞬間。


表示が現れた。




【条件達成】


【共生契約 第一段階】


達成。




【進化条件】


全項目達成。




ポムの身体が淡く光る。




白い空間。


アーカスが静かに目を開く。


「ようやく辿り着いたか。」


「最弱の存在が。」


「最も大きな可能性を得る瞬間へ。」


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