第一話 開門の日(ゲートデイ)
はじめまして、瑞雲です。
数ある作品の中から『LEVEL 1』を見つけていただき、ありがとうございます。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
2025年7月7日。
この日は後に、人類史上最悪の日として記録される。
しかし、その朝を生きる人々は、まだ誰一人として知らなかった。
世界が、終わりへ向かって歩き始めたことを。
午前7時7分。
東京都千代田区。
通勤途中の会社員が足を止めた。
「……何だ?」
道路の真ん中に、光が集まっている。
最初は蜃気楼のように揺らめくだけだった。
しかし次の瞬間。
空間そのものが、音もなく裂けた。
黒い亀裂。
高さは三メートルほど。
まるで世界に穴が開いたようだった。
「映画の撮影か?」
「プロジェクションマッピング?」
誰もがスマートフォンを向ける。
すると、亀裂の奥から石造りの階段が現れた。
地下へ続く、古びた階段。
まるで何千年も前からそこにあったかのような、重厚な造りだった。
「……地下鉄?」
誰かが冗談交じりに呟く。
その瞬間。
世界中で同じ現象が起きていた。
ニューヨーク。
ロンドン。
パリ。
北京。
シドニー。
砂漠の真ん中。
海の上。
南極。
人が住まない島。
地球上のあらゆる場所に、黒い裂け目が現れた。
後に人類はそれを、
ダンジョン
と名付ける。
その日の夕方。
各国政府は緊急会見を開いた。
「現在確認されている未知の構造物は、世界で約一万二千か所。」
「内部には石造建築が存在しています。」
「現時点で外部への危険性は確認されていません。」
「国民の皆様は、決して内部へ立ち入らないようお願いします。」
だが、その警告は三日ともたなかった。
人は未知を恐れる一方で、未知に惹かれる生き物だった。
配信者。
冒険家。
研究者。
軍人。
そして、ただの好奇心。
人々は次々とダンジョンへ足を踏み入れた。
そこで彼らが見たものは――
魔物。
魔石。
未知の金属。
未知の植物。
そして、人類の常識を覆す「スキル」という力だった。
世界は混乱した。
しかし、不思議なことに。
魔物はダンジョンの外へ出てこなかった。
そのため、多くの人はこう考えた。
「危険ではあるが、管理できる。」
この判断は、人類最大の誤算となる。
二十五年後。
人類は知ることになる。
あの二十五年間は、平和ではなかった。
準備期間だったのだ。
人類の。
そして――
ダンジョンの。
これは、一人の青年の物語である。
レベルは、最後まで1。
それでも世界を変えた、神代悠真という探索者の記録である。




