プロローグ ──終焉の日
二〇五〇年七月七日。
その日は、人類が最も恐れた日となった。
二十五年前、世界中に突如として現れたダンジョン。
誰もが滅亡を覚悟した。
だが、魔物は地上へ現れなかった。
人類は安堵し、探索者という新たな職業を生み出し、ダンジョンを攻略しながら発展を続けた。
誰もが信じていた。
このまま共存できるのだと。
――その考えは、あまりにも甘かった。
午前零時。
世界中のダンジョンが、一斉に震えた。
次の瞬間。
無数の魔物が地上へ溢れ出した。
「北海道方面、防衛線崩壊!」
「九州支部、通信途絶!」
「S級探索者部隊……全滅!」
悲鳴が世界を駆け巡る。
炎に包まれる都市。
崩れ落ちる高層ビル。
空を覆い尽くす飛竜。
巨大な魔物の一撃で、大地そのものが裂けていく。
人類は必死に抗った。
だが、それでも止められない。
絶望だった。
誰もが、人類の終わりを悟った。
その時だった。
一人の青年が、崩壊した街の中を静かに歩き出す。
年齢は24歳。
煤で汚れた黒い戦闘服。
腰には一本の剣。
肩には、小さな青いスライムが乗っていた。
「……行こう、ポム。」
スライムは小さく震え、こくりと頷く。
青年の前に、巨大な魔物が姿を現した。
人類最強と呼ばれた探索者たちでさえ歯が立たなかった災厄。
その瞬間。
青年のステータスが宙に浮かび上がる。
そこに表示された数字を見て、誰もが目を疑う。
個人レベル Lv1
職業レベル Lv1
あり得ない。
この世界で、レベルは強さそのもの。
レベル1など、駆け出し以下だ。
そんな者が、この戦場に立てるはずがない。
しかし青年は笑った。
「レベルなんて、最初から一度も上がったことはない」
悠真は剣を構える。
「だけど――」
「俺には、積み重ねてきた時間がある。」
「俺は、レベルで測れない強さを手に入れた。」
その一歩で、大地が揺れた。
そして、人類の常識が覆る戦いが始まる。
これは――
レベルが上がらない青年が
努力だけを積み重ね、
世界最強へ至る物語。
物語は二十五年前へと遡る。
すべての始まりの日へ。




