表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
17/45

第十六話 初めてのダンジョン


2044年。


探索者育成学園に入学して数ヶ月。


神代悠真、藤堂蓮、白石雪乃。


そして、スライムのポム。


三人と一匹は、初めて実習として本物のダンジョンへ向かっていた。




19年前。


2025年。


世界各地に突然現れた未知の迷宮。


人類はそれを――


ダンジョン


と呼んだ。


内部には魔物。


未知の鉱石。


人類の科学では説明できないエネルギー。


当初、世界は混乱した。


しかし。


多くの犠牲と研究の末、人類は少しずつダンジョンを理解していった。


探索者制度が作られ。


各国にダンジョン協会が設立された。


現在では、管理された低階層ダンジョンは新人探索者の訓練場所として利用されている。


少なくとも。


2044年の人類は、そう信じていた。




「ここが……。」


悠真は巨大な入口を見上げた。


黒い岩壁。


奥から流れてくる冷たい空気。


訓練施設とは違う。


画面越しに見たものとも違う。


本物のダンジョン。


「緊張してる?」


雪乃が聞く。


悠真は少し考えた。


「してる。」


「意外です。」


「怖いから。」


雪乃は少し驚いた顔をする。


「怖いんですか?」


悠真は頷く。


「怖いから、慎重になれると思う。」


「怖くないと思い込む方が危ない。」


その答えに、雪乃は小さく笑った。


「神代さんらしいですね。」




「おいおい。」


横から蓮が入ってくる。


「初ダンジョン前に難しい話してるな。」


「蓮は怖くないの?」


悠真が聞く。


蓮は少し考えた。


「怖い。」


「でも。」


剣の柄を握る。


「楽しみでもある。」


「お前と初めて本物の場所を探索するからな。」


悠真は少し笑った。




入口で探索者証を確認する。


今回の実習は学園管理区域。


第一階層のみ。


担当教官も同行する。


「よく聞け。」


鬼塚教官が言う。


「ダンジョンを甘く見るな。」


「低階層だから安全。」


「管理されているから安心。」


そんな考えを持つな。


「探索者に必要なのは、倒す力より帰る力だ。」


全員が真剣に頷いた。




第一階層。


内部は洞窟のようになっていた。


壁には淡く光る魔力結晶。


足元には見たことのない植物。


「綺麗……。」


雪乃が呟く。


蓮も周囲を見る。


「本当に別世界だな。」


悠真は静かに観察していた。


足跡。


壁の傷。


空気の流れ。


《個人空間》で積み重ねた知識が役立つ。


「近くに魔物がいる。」


蓮が剣を構える。


「何体?」


「三体。」


その直後。


岩陰から魔物が現れた。


ゴブリン。


三匹。


「来る!」




蓮が前へ出る。


剣士としての役割。


一匹目を受け止める。


「悠真!」


「右!」


悠真の声に反応して、蓮が動く。


二匹目の攻撃を避ける。


その隙に雪乃が魔法を放つ。


「ファイア!」


炎が魔物を包む。


見事な連携だった。


しかし。


最後の一匹が悠真へ向かう。


「悠真!」


蓮が叫ぶ。


悠真は慌てない。


《個人空間》で何度も繰り返した。


観察。


判断。


回避。


一歩横へ。


攻撃を避ける。


そして。


木剣を振るう。


一撃。


ゴブリンは倒れた。




静寂。


これが本物の戦闘。


ゲームではない。


魔物は消えない。


命の重さがある。


悠真は倒れたゴブリンを見る。


「……。」


その時。


ポムが足元へ寄ってきた。


「ぷる……。」


悠真はポムを撫でる。


「大丈夫。」


「忘れないよ。」


「僕たちは、この世界で生きている。」




その後も探索は続いた。


しかし。


予定地点へ向かう途中。


悠真が突然足を止めた。


「待って。」


蓮が振り返る。


「どうした?」


「……変だ。」


雪乃が魔力を探る。


「確かに。」


「魔物の数が多いです。」


教官へ報告しようとした瞬間。


地面が揺れた。


ズン……。


低い音。


第一階層には存在しないはずの魔力。




教官の表情が変わる。


「全員、後退!」


しかし。


間に合わなかった。


岩壁が崩れる。


その奥から現れたのは――


本来、この階層には存在しない魔物。




悠真は息を呑む。


蓮が剣を構える。


雪乃が魔力を集中する。


そして。


ポムが震える。


「ぷる……。」


だが。


逃げなかった。


小さな身体で。


悠真の前へ出る。




「ポム。」


「下がって。」


しかし。


ポムは動かない。


小さな身体が淡く光る。




【条件確認】


【仲間を守る意思を確認】


【信頼度上昇】




悠真はまだ知らない。


この小さな変化が。


後に世界を変える進化の始まりになることを。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ