第十五話 初めての正式パーティ
探索者育成学園。
一年A組では、新しい授業が始まろうとしていた。
鬼塚教官が教壇に立つ。
「今日から、お前たちは正式にパーティを組む。」
教室がざわめく。
「パーティ?」
「二人組じゃなくて?」
鬼塚は頷く。
「探索者は一人では限界がある。」
「どれだけ強い人間でも、全てを一人で補うことはできない。」
黒板に文字が書かれる。
前衛
後衛
支援
探索
「役割を理解しろ。」
「自分にできないことを、仲間に任せる。」
「それが探索者だ。」
授業後。
生徒たちは早速、パーティ作りを始めた。
高レベルの生徒には声がかかる。
「一緒に組まないか?」
「君なら前衛で頼りになる。」
自然と人気が集まる者もいた。
そんな中。
悠真は教室の端で静かに考えていた。
(僕は……。)
(どうするべきだろう。)
戦闘能力だけなら、自分は高くない。
レベルも1。
職業もすべて1。
普通なら誘われない側だ。
「悠真。」
声をかけたのは蓮だった。
「もちろん組むよな?」
悠真は少し驚く。
「いいの?」
「何回目だよ、それ。」
蓮は笑う。
「俺はお前と組みたい。」
「それだけ。」
その言葉に、悠真は頷いた。
「ありがとう。」
しかし。
パーティ登録には三人以上が必要だった。
「最低三名。」
受付の職員が説明する。
「二人では正式登録できません。」
蓮が困った顔をする。
「あと一人か。」
その時。
「……あの。」
小さな声が聞こえた。
振り返る。
そこにいたのは。
第8話で悠真へ声をかけた少女だった。
長い黒髪。
落ち着いた雰囲気。
胸元には魔導士の紋章。
「神代さん。」
「はい。」
「もし迷惑でなければ……。」
少女は少し緊張した様子で続ける。
「私も、そのパーティに入れてもらえませんか?」
悠真と蓮は驚いた。
少女の名前は。
白石 雪乃。
魔導士。
冷静で頭が良く、学年でも上位の成績を持つ。
しかし。
雪乃は周囲から距離を置かれていた。
理由は単純。
彼女もまた、人付き合いが得意ではなかった。
「どうして僕たちに?」
悠真が聞く。
雪乃は少し迷ってから答えた。
「神代さん。」
「あなたは……。」
「魔物を見て、弱いから切り捨てませんでした。」
悠真はポムを見る。
「ポム?」
「はい。」
雪乃は小さく笑う。
「私は、そういう考え方が好きです。」
「強いものだけが価値を持つとは思わないので。」
蓮が笑う。
「なんだ。」
「このパーティ、似た者同士じゃん。」
悠真と雪乃が同時に蓮を見る。
「?」
「何?」
蓮は首を傾げる。
「いや。」
「自覚ないんだなって。」
こうして。
正式登録された。
パーティ名
未定
メンバー。
神代悠真
藤堂蓮
白石雪乃
そして。
ポム。
その日の放課後。
三人と一匹は、初めて作戦会議をした。
蓮は前衛。
雪乃は魔法支援。
悠真は探索と判断。
ポムは補助。
「……。」
しばらく沈黙。
蓮が笑う。
「なんか変な組み合わせだな。」
悠真も少し考える。
「でも。」
「悪くないと思う。」
雪乃が頷く。
「私も。」
その瞬間。
ポムが机の上で跳ねた。
「ぷる!」
三人が笑う。
まだ弱い。
まだ未熟。
でも。
確かに。
ここから始まった。
未来を変える小さなパーティが。
その夜。
《個人空間》。
悠真はいつものように修練をしていた。
しかし。
今日は少し違う。
「仲間ができたな。」
「ぷる。」
ポムが嬉しそうに揺れる。
悠真は空間を見渡す。
初めは自分だけの場所だった。
今は。
ポムがいる。
そして。
いつか仲間たちも来るかもしれない。
「……。」
悠真は小さく笑った。
「一人になれる場所が欲しかった。」
「でも。」
「大切な人と過ごせる場所になるのも……悪くないね。」




