第十二話 昼休みの約束
実力試験を翌日に控えた昼休み。
一年A組の教室は、昼食を取る生徒たちで賑わっていた。
悠真はいつものように、窓際の席で静かに弁当箱を開く。
「今日も一人か。」
そう思ったときだった。
「悠真。」
聞き慣れた声がした。
振り向くと、笑顔で手を振る青年が立っていた。
短く切った黒髪に、人懐っこい笑顔。
「久しぶり。」
悠真の表情が、少しだけ柔らかくなる。
「蓮。」
藤堂 蓮。
幼い頃からの友人だった。
小学校までは同じ学校に通っていたが、中学から別々になり、連絡も時々取る程度になっていた。
「まさか同じ学園とはな。」
蓮は笑いながら向かいの席へ座る。
「俺もびっくりした。」
悠真も自然に笑う。
その様子を見ていたクラスメイトたちは少し驚いていた。
「あれ?」
「神代って普通に笑うんだ。」
「友達いたんだな。」
そんな声が聞こえてくる。
悠真は苦笑した。
「友達くらいはいるよ。」
「ただ……。」
「初対面は苦手だけど。」
蓮が吹き出す。
「昔から変わらないな、お前。」
「でも、その方が悠真らしい。」
二人は昔話に花を咲かせた。
虫取りに夢中だったこと。
図書館へ毎週通っていたこと。
木の枝で剣の真似をして遊んだこと。
「あの頃から剣の本ばっかり読んでたもんな。」
「うん。」
「楽しかったから。」
その言葉を聞いた蓮は頷いた。
「やっぱり好きなことを続けるのがお前らしいよ。」
そこへ、小さな青い影が机の上へ飛び乗る。
「ぷる!」
「おっ。」
蓮は目を丸くした。
「こいつが噂のスライムか?」
「ポム。」
「ぷる!」
「よろしくな、ポム。」
恐る恐る指を差し出す。
ポムは少し警戒したあと、ぺちっと指先に触れた。
「ははっ。」
「かわいいじゃないか。」
ポムは嬉しそうに身体を揺らした。
その様子を見ていた悠真は、少しだけ安心したように微笑む。
「ありがとう。」
「何が?」
「ポムを普通に接してくれて。」
蓮は首をかしげた。
「仲間なんだろ?」
「だったら普通じゃないか。」
その一言に、悠真は少しだけ胸が熱くなった。
「……そうだね。」
チャイムが鳴る。
昼休みが終わる。
蓮は立ち上がる。
「実力試験、頑張ろうな。」
「うん。」
「また話そう。」
「もちろん。」
蓮は笑顔で教室を出ていった。
その背中を見送りながら、悠真は小さく息をつく。
「僕は、人と話すのが苦手だ。」
「でも。」
「一人でいたいわけじゃない。」
その言葉を聞くように、ポムが肩へ飛び乗る。
「ぷる。」
「ありがとう。」
悠真はそっとポムを撫でた。
窓の外では、春風が桜を揺らしていた。
明日は、初めての実力試験。
悠真とポムの努力が、初めて試される日になる。
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます。
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これから《個人空間》と仲間たちの物語りは、さらに大きく動き始めます。引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです。




