表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
15/22

15・分別は特殊スキル?

「さて。そろそろ本題に入ろうか」

「はい」


 双子がフェリル様の部屋で遊ぶことになり、母さんはそれを見守ることにして……私は、ルヴェール様と二人きりになった。


「魔石の再生についてだ。どのように行ったんだ?」


 今後公爵邸で暮らすかはともかくとして、魔石の再生方法は、私達の保護と引き換えに教えることになった。


 正直、魔石の再生方法が知りたいからって、いつまでもつきまとわれるのは面倒だし。とっとと教えてしまったほうが楽だと判断したのだ。


「実際にお見せします。厨房(キッチン)をお借りできますか? あ、魔灰を持ち込むことになりますが」

「魔石再生に必要なんだろう。なら、当然許可する」


 さらりと答えられた。身分の高い人こそ、魔灰には抵抗感を示すものなのに。私も変わり者だけど、ルヴェール様も変わり者では?


 ともかく、私達は厨房に移動した。ルヴェール様が人払いしてくださって、他の料理人や使用人は誰もいない。

 私は、あらかじめ用意しておいた魔灰を取り出す。


「まず、魔灰を分別していきます」

「分別?」

「はい。元の種類ごとに分けていくんです。今回用意した魔灰なら、これは元が火の魔石、こっちは水の魔石……と、こういう感じに」


 鞄の中に、大量に用意しておいた魔灰を、ひょいひょいと元の種類ごとに分けていく。


「待ってくれ」

「なんです?」

「君は、魔灰の元となった魔石を、どうやって判別しているんだ?」

「指先の感覚でわかります。私はずっと掃除人として、魔灰を扱ってきましたので」


 ルヴェール様は、魔灰を触ってみる。そして眉根を寄せた。


「……正直、よくわからないな」

「うちの家族もそう言いますね。慣れないと難しいと思います」


 私がそう答えると、ルヴェール様は何か思案するように黙り込んだ。


「レーラ。君、能力鑑定をしたことはあるか?」

「え? いえ、ないです」


 能力鑑定というのは、ギルドにある魔法装置によって、自分のスキルなどを調べることだ。

 レベルが上がればスキルも増えるし、スキルによって向いている職業(ジョブ)も異なる。冒険者などは定期的に鑑定を受けることが多いそうだ。


 ただ、鑑定にお金がかかるので、私はやったことがない。


「それはもしかして何か、君の特殊能力なんじゃないか。今からギルドに行って調べてみないか」


 え? 嫌だな。万が一、珍しい特殊スキルだったら、また目をつけられて大変なことになりそうだし。私は、目立たず平穏に暮らしたい。転生者だとかバレるのも面倒だし。


 あと、ギルドの人と話さなきゃいけないのも嫌だ。知らない人と会話する機会は、できるだけ回避したい。


「いえいえ、遠慮しておきます! 私は単なる平民の子ですし、特殊能力なんてないですよ! それに分別さえしちゃえば、この後の行程は至って簡単ですので」


 そもそも、魔灰から分別できなくたって問題ない。魔灰になる前の……使用する前の魔石の種類を記録しておけばいいだけだ。仮に私が何か分別のスキルを持っていたとしても、大して役に立たないだろう。


 私はルヴェール様に、魔石の再生方法について説明しつつ、実演してゆく。

 分別した魔灰を熱して溶かして、冷やして固める。この厨房は、公爵邸らしく魔導コンロもたくさんあるので、同時進行で火・水・風の魔石をそれぞれ作った。


 魔灰だったものが、形は歪とはいえ、鮮やかな色を取り戻す。

 ルヴェール様は完成したそれを手に取り、試しに使用してみる。


「……すごいな、問題なく使える。まさかこんな方法で、魔石を再生できるなんてな……。これは、錬金術の一種ではないのか?」


 なるほど。私は「リサイクル」のつもりだったけど、これはもしかして錬金術ということになるのか? 


 私、錬金術師? おお、がぜん異世界ファンタジーな感じがしてきた!


「お褒めいただき光栄です。ですが……レヴァイゼ領には鉱山があるのですから、魔石の再生方法を追求する意味はないのでは?」


 魔石の再生方法を他の貴族に渡したくない、というのはわかる。

 だけど、魔灰から家庭で簡単に魔石が再生できるのなら、新品の魔石が売れなくなってしまう。レヴァイゼ家としては、それは望ましくないのではないか。


「確かに鉱山はあるが、資源は無限じゃない。いつかは尽きるものだ。再生方法があるなら、知っておくにこしたことはないだろう」

「まあ、それはそうですね」

「それに、あの治癒魔石は、信じられない効果を持っていた。自然に採掘される治癒魔石で、あそこまで強力な効果を持つものはない。正直、一般魔石の再生よりも、特殊魔石の再生こそが本題だ」

「そうですけど……特殊魔石は、まだ完全な生成方法が確立していないんです。偶然の産物と言いますか……再現することが難しくて」

「ふむ。珍しく完成した、完璧な治癒魔石を盗まれるとは、君も大変だったな」


 ああ、そういえば、そういう設定にしてました。

 大人版の私とルヴェール様が会うことは二度とないだろうけど、一応自分の冤罪を晴らしておくか。ルヴェール様は盗人でも幻滅しないとわかってしまったし。


「その……すみません、それは嘘でした」

「ほう? 詳しく聞かせてもらおうか」

「実は、ポケットに入れておいた魔石を、うっかり落としてしまったんです。だから多分その女性が、拾ってくれたんだと思います」

「そうか。なら最初からそう言ってくれればよかったのに」

「えーと、貴重な魔石を落としてしまったなんて、間抜けすぎて言いたくなくて」

「ふうん。ふふ……君は、隠しごとが好きなんだね」


 クスクスと、ルヴェール様はなんだか妖しい感じで笑う。


「まあ、嘘だと思っていたよ。彼女は、盗みなんてする人ではないだろうし。……とても、優しい人だからね」

「一度会っただけで、本当はどんな人かなんて、わからないでしょう? そんなに入れ込むのは危険だと思いますよ」

「これまで何度顔を合わせてきた人間達よりも、一度会っただけの彼女に、俺は救われた。……それが全てだ」


 ……本当に、大人版の私のこと、好きなんだなあ。

 その「彼女」が目の前のちんちくりんだとわかったら、どんな顔するんだろう?


 ……うん、まあ、幻想をぶち壊さないようにしてあげよう。この秘密は墓場まで持っていきますので、安心してください!


「さて。では次に、特殊魔石の再生方法を探ろう。まずは、以前治癒魔石を再生できたときのやり方を教えてくれるか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『黙って我慢していてもいいことなんてなかったので、ブチギレます』3巻、電子書籍にて発売中です!
表紙です
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ