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読まれるエンタメ物語のテンプレ集 ~テンプレは悪じゃない!読者の期待を外さない物語の組み立て方~  作者: 夕月 悠里
ファンタジー・SF系でよくあるテンプレ

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悪役のやり直し

やあ(´・ω・`)


ようこそ、2020年代前半の最強のなろう系テンプレ「悪役のやり直し」へ。


悪役令嬢、悪役令息、クズ貴族、破滅予定の王子、ラスボス候補。エロゲの寝取り役。呼び方はいろいろあるが、このジャンルの中心にあるものは共通している。


それは、主人公が「このままだと破滅する役」に置かれていることだ。処刑、追放、没落、婚約破棄、投獄、暗殺、魔物化、ラスボス化など様々な終わり方を迎えることが確定している。


破滅には色々とあるものの、このジャンルの本質は世界から悪役という役割を押しつけられた主人公が、その理不尽な運命に抗う物語だ。


今回は、なぜ普通の主人公ではなく「悪役」でなければならないのか。なぜ悪役令嬢や悪役令息が、ここまで強いテンプレになったのか。その機能を分解して見ていこう。


◆ ◇ ◇ ◇ ◇


1. 悪役のやり直しとは


悪役のやり直しとは、乙女ゲーム、RPG、漫画、小説などの世界における「悪役」に転生・憑依する、または本人が死に戻りして人生をやり直す物語だ。


代表的なのは悪役令嬢ものだ。乙女ゲームの世界で、主人公は王太子の婚約者であり、原作ではヒロインをいじめた末に断罪される悪役令嬢として生まれ変わる。ある日、自分の未来を思い出す。このまま原作通りに進めば、婚約破棄、国外追放、修道院送り、あるいは処刑が待っている。そこで主人公は、その破滅を回避するために行動を始める。


このジャンルを一言で表すならこうなる。


「確定した破滅を持つ悪役主人公が、未来の知識を武器にバッドエンドを回避し、本来の物語を上書きして自分だけの幸福を掴み取る物語」


ここで重要なのは、最初からメインクエストが提示されていることだ。


主人公の欲求は明確だ。死にたくない。追放されたくない。破滅したくない。そのために、原作で自分がやったはずの悪行を避け、破滅フラグを折り、味方を増やし、未来を変えていく。


この構造は、非常に強い。なぜなら、読者がすぐに「この主人公は何を目指しているのか」を理解できるからだ。物語のゴールが、最初からはっきりしている。読者は何を楽しめばいいのかがすぐわかる。序盤が最重要のWeb小説にとって相性がとてもいい。



三幕構成で見ると、次のようになる。


■第一幕

主人公が自分の立場を理解する。自分は物語の悪役であり、このままでは破滅する。ここで「未来のバッドエンド」が提示され、主人公は回避を決意する。


■第二幕

主人公が破滅フラグを折っていく。本来いじめるはずだったヒロインと仲良くする。婚約者への執着をやめる。勉強や魔法を鍛える。領地改革をする。味方を増やす。しかし、主人公の行動によって原作の流れがずれ始め、新しい問題も生まれる。


■第三幕

原作最大の破滅イベントがやってくる。断罪、戦争、ラスボス化、陰謀、処刑イベントなどだ。そこで主人公は、それまで積み上げてきた人間関係、能力、証拠、信頼を使って、運命そのものをひっくり返す。



つまり悪役のやり直しは、「破滅回避」という目標が最初からあり、そこに向かって主人公の行動を組み立てやすいジャンルなんだ。最初からゴールが決まっているから、プロットが迷子になりにくい。だから初心者にはこれ以上ないほど優しいテンプレだ。そりゃ人気にもなる。


◆ ◆ ◇ ◇ ◇


2. 悪役のやり直しのここがすごい


このジャンルが強い理由は、大きく分けて三つある。



一つ目は、マイナスからの評価逆転が作りやすいことだ。


悪役というスタート地点は、周囲からの好感度が低い。わがまま、傲慢、冷酷、意地悪、怠惰、執着が強い。そういう人物だと思われている。


だから、主人公が少しまともな対応をするだけで周囲は驚く。人に親切にする。謝る。努力する。相手の気持ちを考える。約束を守る。普通なら当たり前の行動でも、もともとの評価が低いため、「あの人がこんなことを」と過剰に再評価される。


いわゆる「不良が捨て猫を助けると、なぜかものすごく善人に見える」現象だ。少女漫画でもよくつかわれるが、最初の印象が悪いほど、改善した時の落差が大きい。この落差が、読者に強い承認の快感を与える。



二つ目は、未来を知っている、という知識チートだ。


主人公は、原作の展開や自分の破滅を知っている。誰が裏切るのか。どこで事件が起きるのか。誰が死ぬのか。どの選択が破滅につながるのか。この情報を使って、未来を先回りできる。


・本来なら死ぬはずだった推しキャラを救う。

・起こるはずだった災害を防ぐ。

・裏切り者の正体を事前に見抜く。

・原作では敵だった人物を味方にする。


これにより、普通の主人公でも活躍できる余地が生まれる。チート能力がなくても物語を進めることができるんだ。



三つ目は、悪役が最初から高いリソースを持っていることだ。


悪役令嬢や悪役令息は、貴族、王族、名家、領主の子、権力者の婚約者などであることが多い。つまり最初から地位、財産、教育、人脈、情報へのアクセスを持っている。


これは創作上かなり便利だ。平民主人公だと王宮や貴族社会へ入るだけで大変だが、悪役令嬢なら最初からその中心にいる。領地改革、政治、婚約、社交界、王族との関係、神殿や学園への接触などを自然に扱える。


さらに、悪役が破滅する理由にも説得力を持たせやすい。


・才能や地位に甘えて努力しなかった

・本来向いていない相手や役割に執着していた

・家庭環境や教育のせいで視野が狭くなっていた

・愛情不足や承認欲求から行動を誤っていた

・周囲に利用され、悪役として振る舞わされていた


こうした理由をつければ、単なる性悪ではなく、変わる余地のある人物になる。読者はその変化を見たい。悪役が、自分の弱さや歪みを自覚し、別の生き方を選ぶ。ここに、このジャンルの強いドラマがある。


◆ ◆ ◆ ◇ ◇


3. 男女向けの差


悪役のやり直しは、男性向けと女性向けの両方で使える。ただし、読者が期待する快感の方向はかなり違う。


【男性向け:悪役令息・クズ貴族・かませ犬の逆転】

男性向けでは、悪役令息、クズ貴族、かませ犬キャラ、主人公に倒される中ボス、エロゲの嫌われ役などに転生する型が多い。


ここでの快感は、破滅を回避するだけではない。むしろ、原作主人公よりも強くなり、より大きな権力や戦力を手に入れることにある。


主人公は、破滅を避けるために体を鍛え、魔法を学び、領地を改革し、人材を囲い込む。本来なら勇者の仲間になるはずだった有能キャラを先に味方にする。敵側の強力な幹部を救済して、自分の陣営に入れる。戦争を回避したり、逆に戦争で勝つ準備を整えたりする。


その結果、主人公は原作の勇者よりも強大な存在になる。世界を裏から動かす。領地を発展させる。軍事力を持つ。魔王すら味方にする。


男性向けでは、悪役のやり直しが「成り上がり」「領地経営」「戦略無双」「人材収集」と接続しやすい傾向にある。



【女性向け:悪役令嬢の破滅回避と溺愛】

女性向けでは、乙女ゲームの悪役令嬢型が圧倒的に強い。


主人公は、原作ではヒロインをいじめ、王太子や攻略対象に嫌われ、最後には婚約破棄や処刑を受ける立場にいる。


そこで破滅を避けるために、ヒロインをいじめない。婚約者に執着しない。周囲を大切にする。自分を磨く。すると、原作とは違う評価が積み上がっていく。


本来ヒロインと結ばれるはずだった攻略対象たちが、主人公の優しさ、賢さ、気高さ、努力に惹かれていく。冷たかった婚約者が執着し始める。敵だったはずの人物が味方になる。ヒロイン本人とも友情や百合的な関係が生まれることもある。


女性向けでは、最終的な報酬が権力よりも、「絶対的な愛情」「安全な居場所」「守ってくれる存在」に寄りやすい。つまり、悪役のやり直しが「溺愛」「救済恋愛」「自己肯定感の回復」と接続する。


男性向けが「原作主人公を超える」方向に行きやすいなら、女性向けは「原作の中で憎まれていた自分が、誰よりも大切にされる」方向に行きやすい。


どちらも目的は破滅回避だが、行き着く先が違う。


男性向けは、最強の権力、武力、陣営を得る。

女性向けは、最強の愛情、保護、居場所を得る。


この違いを意識すると、読者の期待を外しにくい。


◆ ◆ ◆ ◆ ◇


4. どうカスタマイズするか


悪役のやり直しは、設定の組み合わせで無数のバリエーションを作れる。


基本は、次の4つを決めることだ。


・どんな世界の悪役なのか

・いつ未来の情報を得るのか

・原作の扱いをどうするか

・どうやって破滅を回避するのか


この4つを組み合わせれば、かなりの数の物語が作れる。



【世界設定を決める】

まず、主人公がどんな物語世界にいるのかを決める。物語により悪役の種類や破滅設定に違いが出る。


・ゲーム世界

乙女ゲーム、RPG、ソシャゲ、ギャルゲー、エロゲなどの世界。攻略対象、ルート分岐、イベント、好感度などゲーム要素を使いやすい。悪役令嬢ものの王道設定。


・漫画世界

主人公が読んでいた漫画の悪役に入る型。読者にとっても展開をイメージしやすく、少年漫画、少女漫画、バトル漫画、恋愛漫画など幅広く使える。


・小説世界

ライトノベル、Web小説、恋愛小説、ファンタジー小説の中に入る型。原作が自作または未完であることを逆手にとった進め方もできる。


・ループ世界・死に戻り型

転生者ではなく、悪役本人が処刑や破滅のあとに過去へ戻る型。本人の後悔が強いため、感情が重くなりやすい。成長や贖罪の物語に向いている。


・現地主人公型

前世の記憶を持たない、悪役本人が主人公。未来予知や神託などで未来を知ることが多い。



また、よくある悪役設定は以下の通り。

悪役令嬢 / 悪役令息 / 偽聖女 / 毒婦 / 悪妃 / かませ犬 / 中ボス / 豚貴族 / ラスボス / 裏ボス / 偽勇者 / 寝取り(NTR)男 / ビッチ / 暴君 / 暗君 / 狂王 / 破壊神



よくある破滅設定は以下の通り。

国外追放 / 修道院送り / 平民落ち / 婚約破棄 / 処刑 / 毒殺 / 暗殺 / 投獄 / 戦争で死亡 / 魔女認定 / 聖女失格 / ラスボス化 / 魔物化 / 家族全員処刑 / 領地没収 / 国の滅亡 / 攻略対象に殺される / 原作主人公に断罪される


なお、破滅理由はなんでもいいが、重ければよいというものではない。大事なのは、主人公が行動する理由として十分に機能するかだ。この動機が明確だと、読者は主人公の行動についていきやすい。また前世との因縁を加えると、物語に深みが出る。



【 いつ情報を得るのか】

いつ記憶や未来情報を得るタイミングによって、物語の性質は大きく変わる。


・幼少期覚醒型

幼い頃に前世の記憶を思い出す型。時間的な余裕があるため、勉強、魔法訓練、領地改革、人間関係の構築をじっくり描ける。長編向きで、成長譚と相性がよい。原作を崩壊させる方向に向かいやすい。


・断罪直前覚醒型

断罪イベントの数日前、あるいはその瞬間に記憶を取り戻す型。時間がないため、即座の機転、証拠提示、交渉、逆転劇が中心になる。短編や導入のインパクトを重視する場合に強い。ミステリーやサスペンスとの相性が良い。


・断罪後・追放後型

すでに破滅イベントが起きた後から始まる型。婚約破棄された後、国外追放された後、家を出た後など。

スローライフ、再就職、隣国での再評価、第二の人生と接続しやすい。


・入れ替わり型

別人が悪役の身体に入る型。元の悪役との人格差が大きく出る。入れ替わった先の悪役令嬢とのストーリーが作れる。


・未来予言型

予言者または、予知夢や信託などで、未来が決められる型。転生などの設定を付けなくても済む。ただし情報の信憑性がいまいちなので信じさせる出来事を入れる必要がある。


ここで考えるべきなのは、主人公が何で戦うかだ。前世知識だけで戦うのか。悪役が持つ地位や権力を使うのか。実は隠しステータスが高いのか。悪役しか使えない闇魔法や禁術を持っているのか。

どの武器を持たせるかで、物語のジャンルが変わる。



【原作をどう扱うか】


悪役やり直しでかなり重要なのが、原作の扱いだ。ここをどう扱うかで、物語の印象は大きく変わる。


・仲良くなる

原作ヒロインや勇者と仲良くなり、共に運命に立ち向かう型。友情、百合、薔薇、バディものに向いている。読後感もよくなりやすい。


・原作主人公の悪役化

原作主人公が実は腹黒、転生者、搾取者、偽善者だった型。悪役令嬢側が真の被害者だった、という反転が作れる。ざまぁや知略戦と相性がよい。


・原作犠牲者の救済

原作の裏ボス、魔王、闇落ちキャラを早めに救う型。推し救済の快感が強く、恋愛や主従関係にもつなげやすい。本来の末路と合わせて落差を楽しめる。


・原作に関わらない

主人公が原作イベントから離れ、田舎、領地、隣国などで静かに生きようとする型。スローライフや職業ものに向いている。大体の場合は、原作が近づいてくる。


全く近づかないことも可能だが、悪役である必要性を作らないとこのジャンルの必然性がなくなる。流行目的にとらえられやすいし、ジャンル詐欺になりがち。



【破滅回避の手段を決める】


最後に、主人公がどうやって破滅を回避するかを決める。回避手段の例を挙げていく。

・攻略対象に近づかない

・原作主人公をいじめない

・婚約者に執着しない

・自分から婚約解消する

・勉強して有能になる

・魔法や剣術を鍛える

・領地を改革する

・商会を作る

・味方を増やす

・敵を更生させる

・原作主人公と友達になる

・ラスボスを救う

・王妃、教師、神殿など上位者に根回しする

・原作イベントを先回りする

・断罪イベントの舞台そのものを潰す

・原作知識が通用しないと認め、今の人間関係を見直す

・そもそも悪役という役割から降りる


ここで大事なのは、「原作をなぞる」のか、「原作から逃げる」のか、「原作を壊す」のかを決めることだ。


・原作をなぞる場合:イベントを知っている主人公が先回りする攻略ものになる。

・原作から逃げる場合:スローライフや新天地での再評価になる。

・原作を壊す場合:陰謀、政治、戦争、ラスボス救済など、大きな物語に発展しやすい。



このように悪役のやり直しは基本的な構造が決まっているわりに、バリエーションも多くあるため、初心者でも書きやすいのが特徴だ。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


まとめ


悪役のやり直しの本質は、「決められた破滅への反逆」と「マイナスからの評価逆転」だ。


主人公は、最初から不利な役割を押しつけられている。このままなら処刑される。追放される。嫌われる。没落する。その未来を知った主人公は、原作や運命に従うのではなく、自分の意思で別の人生を選び始める。


このジャンルが強いのは、目標が明確だからだ。読者は最初から、何を楽しめばいいのか分かる。


さらに、悪役という立場が強い。最初の評価が低いからこそ、少しの変化で再評価が起きる。未来を知っているから、運命を先回りできる。地位や権力を持っているから、物語を大きく動かせる。


悪役のやり直しは誰かに決められた役割から降り、自分の選択で未来を書き換える話なんだ。それを頭に入れて創作してみてくれ。


今回は以上だ、解散!

【参考】

悪役令嬢もの(ピクシブ百科事典)

https://dic.pixiv.net/a/%E6%82%AA%E5%BD%B9%E4%BB%A4%E5%AC%A2%E3%82%82%E3%81%AE

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