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読まれるエンタメ物語のテンプレ集 ~テンプレは悪じゃない!読者の期待を外さない物語の組み立て方~  作者: 夕月 悠里
ファンタジー・SF系でよくあるテンプレ

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モブ転生

やあ(´・ω・`)


ようこそ、物語の本筋から外れた自由な観測者「モブ転生」へ。


原作世界への転生ものでは、主人公はたいてい重要な役を背負っている。勇者なら世界を救わなければならないし、悪役令嬢なら破滅を回避しなければならない。原作主人公なら、決められた物語の中心に立たなければならない運命が待っている。


では、物語の中心人物ではない「モブ」に転生したらどうなるのか。


村人A、通りすがりの学生、攻略対象の友人、悪役令嬢の兄弟姉妹、勇者の幼なじみ、原作では名前も出なかった貴族の子、あるいは、序盤で死ぬだけの端役。


一見すると地味である。だが、この地味さこそがモブ転生の武器になる。


主人公でもない。悪役でもない。だからこそ、物語の重圧から自由でいられる。原作に従ってもいいし、逃げてもいい。推しを救ってもいいし、原作主人公より先に隠しアイテムを回収してもいい。世界を救う義務はないが、世界を変えることはできる。


モブ転生とは、物語の中心から外れた存在が、原作知識を使って世界の裏側から介入するジャンルだ。今回は、この一見地味な立場がなぜ強いのか、その機能を見ていこう。


◆ ◇ ◇ ◇ ◇


1. モブ転生とは


モブ転生とは、ゲーム、小説、漫画、アニメなどの物語世界において、本筋にはほとんど絡まない「モブキャラ」に転生・憑依する物語だ。


このジャンルの基本構造は、「原作ストーリーの裏側、あるいは外側からの介入」だ。


主人公には、勇者のように世界を救えという使命はない。悪役令嬢のように、このままだと断罪されるという明確な破滅も、あるわけではない。そのため、主人公は原作に縛られすぎず、自分の目的で動ける。


だが、ただのモブではない。「前世の記憶」と「原作の先の展開を知っている知識」を持っている。


だから、未来に起きる事件を知っている。誰が死ぬのか。誰が裏切るのか。どこに隠しアイテムがあるのか。どのキャラが本当は報われないのか。この情報を使って、原作の外側から世界に手を入れることができる。


結果として、モブであるはずの主人公が、少しずつ世界のパワーバランスを変えていく。推しキャラを救ったり、悪役の破滅を防いだり、原作主人公より先に重要イベントを回収したりする。


主人公転生や悪役転生と比べると、モブ転生は自由度が高い。主人公に転生すれば、原作のメインストーリーが重くのしかかる。悪役に転生すれば、破滅回避という大きな目的がついてくる。しかしモブ転生なら、原作に関わってもいいし、関わらなくてもいい。


だからこそモブ転生は「もし自分だったら、この物語の世界でどう動くか」という読者の妄想とぴったり重なる。読者自身が物語の観測者だからだ。この読者との距離の近さが、モブ転生の強みなんだ。


◆ ◆ ◇ ◇ ◇


2. モブ転生のここがすごい


なぜ読者はモブ転生を読みたくなるのか? その理由は、大きく分けて三つある。


■1. 物語の責任からの解放


原作主人公は大変である。世界を救わなければならない。恋愛ルートを進めなければならない。仲間を集めなければならない。読者から見れば主人公は華やかだが、本人にとっては重圧の塊だ。


一方、モブにはその責任がない。最初から世界の中心に立たなくていい。だから、主人公はもっと気楽に世界を楽しめる。


この気楽さは現代の読者にとってかなり強い。現実では、多くの人が役割や責任に追われている。仕事、学校、家族、人間関係、将来の不安。だからこそ、何者でもない立場から、好きなように世界を眺めて、必要なところだけ関わるというモブ転生の距離感には、強い癒やしがある。



■2. 未来を知っていることによる優越感


モブ転生の主人公は原作を知っている。つまり、他のキャラクターが知らない未来を知っている。この立場は読者に近い。


読者もまた、原作を知っている観測者である。そういう知識を持つ読者が、もし物語世界に入れたらどうするか。モブ転生は、その妄想をそのまま物語化できる。


特に近年は、推し活の感覚とも相性がいい。推しを眺めたい、推しを幸せにしたい、推しの破滅を防ぎたい、推しの恋を応援したい。この「読者目線の愛着」を、モブ転生は主人公の行動原理にできる。



■3. 第三陣営として介入できる


主人公陣営でも、悪役陣営でもない。だからこそ、モブ転生の主人公は自由に動ける。原作主人公を助けてもいい。悪役を救ってもいい。ヒロインを支援してもいい。黒幕を先回りして潰してもいい。場合によっては、主人公陣営と悪役陣営の両方を出し抜くこともできる。


この第三陣営感が、モブ転生の痛快さである。


最弱のモブという立場からスタートし、知識と地道な努力だけで、才能あふれる主人公や強大なボスキャラを上回っていく。本来なら物語に関われないはずの凡人が、世界そのものを動かしているという達成感。これがモブ転生の大きな見どころだ。


◆ ◆ ◆ ◇ ◇


3. 男女向けの差


モブ転生は、男性向けにも女性向けにも使える。ただし、読者が期待する快感の方向は少し違う。


【男性向けが求めるもの:裏ルート攻略と成り上がり】

男性向けのモブ転生では、主人公が第三陣営として力をつけ、最終的に原作主人公に匹敵する、あるいは超えていく展開が多い。


最初はモブだが、原作知識を使って効率よく強くなる。隠しダンジョンを攻略する。本来なら主人公が手に入れるはずだった武器を先に回収する。後に仲間になる有能キャラを先に救う。破滅予定のヒロインを助けて惚れられる。本編開始前に力を蓄え、原作開始時点ではすでに別格の存在になっている。


また、「不遇なヒロインの救済」も非常に人気がある。


原作では結ばれないヒロインや、悪役に利用されて捨てられる女騎士などを、知識を使って事前に救う。結果として、ヒロインの好意が原作主人公ではなく、モブに向く。原作の悲しい結末を書き換え、自分だけが彼女の本当の価値を知っているという優越感がポイントになる。



【女性向けが求めるもの:巻き込まれと無自覚な愛され】

女性向けのモブ転生では、「自分はモブだから平和に暮らしたい」「推しを遠くから見守りたい」と思っていた主人公が、なぜか物語の中心に引きずり込まれる展開が多い。


主人公は最初、原作に深く関わる気がない。推しを観察できればいい。悪役令嬢が破滅しないように少しだけ助けたい。攻略対象たちの恋を応援したい。自分は脇役のままでいい。しかし、そうした行動が結果的にフラグを回収してしまう。


本来ヒロインが経験するはずだったイベントを、モブである自分が受けてしまう。攻略対象に助けられる、秘密を共有する、推しを救う、悪役令嬢の心を開く。その結果、主人公は無自覚に愛されポジションへ移動していく。


また、悪役令嬢の兄弟姉妹や侍女など、悪役側の近しい人物に転生する型も多い。この場合、主人公は悪役令嬢を幼少期から支え、孤独や歪みを減らし、破滅を防ごうとする。いわば「悪役の子育て」「推しの更生」「家族としての救済」だ。


さらに、BLやGLの文脈でモブ転生は使いやすい。原作では脇役だった自分が、なぜか主人公や攻略対象に執着される。あるいは、推しカップリングを成立させようとしていたのに、自分が関係性の中心になってしまう。この「観測者が当事者に変わる」構造が、夢小説ジャンルとよく合う。



まとめると、男性向けは「裏側から原作を攻略して強くなる」方向に寄りやすい。

女性向けは「モブのつもりが、無自覚に愛されて中心に引き込まれる」方向に寄りやすい。


同じモブ転生でも、読者が求める快感はかなり違うので、そこは最初に決めておいたほうがよい。


◆ ◆ ◆ ◆ ◇


4. どうカスタマイズするか


モブ転生を作るときは、まず主人公の立ち位置と目的を決めるとよい。


【立ち位置を決める】

モブといっても、どこにいるモブなのかで物語は大きく変わる。


・主人公側のモブ

原作主人公の友人、同級生、仲間候補、幼なじみなど。原作主人公に近い位置にいるため、メインイベントに絡みやすい。


・悪役側のモブ

悪役令嬢の兄弟姉妹、侍女、部下、婚約者候補、悪役組織の下っ端など。悪役救済や内側からの改革に向いている。


・第三陣営のモブ

商人、貴族、冒険者、別国の人間、学園の別クラスなど。主人公側にも悪役側にも属さず、自由に動きやすい。


・無関係モブ

平民、村人、職人、研究者、通行人、モブ兵士など。原作から距離があるため、スローライフや生存戦略、最強ものに向いている。



【行動目的を決める】

次に、主人公が何をしたいのかを決める。モブ転生は自由度が高いので、目的がないと散漫になりやすい。


・破滅回避

原作では悪役の破滅の巻き添え、戦争参加、学園崩壊、魔王復活、王国滅亡などに巻き込まれて死ぬため、それを避けるために行動する。


・推しの救済

原作で死ぬ推し、闇落ちする推し、報われない推しを救うために動く。対象になりやすいのは、悪役令嬢、悪役令息、第二王子、敗北ヒロイン、ラスボス、病弱な弟、死ぬ騎士、裏切る予定の親友など。


・推し活、観察

推しを救うほど重くはなく、推しの近くで働く、眺める、応援する、記録する。同性愛に多く、GL、BLジャンルでは異常執着されがち。


・原作修正、破壊

原作の展開が胸糞、破滅的、理不尽、作者都合だったため、モブ主人公が「この物語は間違っている」と判断して修正する。メリーバッドエンドタイプの原作を救うなど、原作に不満があるパターン。


・原作不干渉

原作に関わると危険だから何もしないと決める。スローライフやコメディにしやすいがモブの理由が薄いので、大体の場合「関わらないつもりだったのに、推しが目の前で死にそうになる」「逃げた先が原作外の重要地点だった」になりがち。


・生存戦略

世界が危険すぎるため、主人公が生き残るために動く。原作は主人公周りは助かるけど大部分が死ぬなど理不尽な運命から逃れるために成長することが多い。


・成り上がり

原作知識や努力を使って上位存在になる。主人公の代わりになることが大半。


・主人公支援

本来の主人公やヒロインを助ける。幼少期の主人公やヒロインは過酷な運命になりやすいので、それに耐えきれず支援する形。あしながおじさん的な役割になって原作主人公がなつく。そして成長後、親離れできず執着されがち。


この目的によって、作品の方向性が決まる。推し救済なら感情重視になる。成り上がりなら能力や経済の話になる。原作不干渉ならスローライフになる。原作破壊なら大きな改変劇になる。



【注意点】

モブ転生は便利な反面、いくつか落とし穴がある。


一つ目は、「モブである必要性」が薄くなることだ。

モブなのに、すぐに主人公の代わりに世界を救い、すべてのヒロインに愛され、原作主人公より目立つ。

それも悪いわけではないが、それなら最初から主人公転生でよかったのでは、という問題が出る。


モブ転生らしさを出すなら、「原作から外れているからこそできること」を用意したほうがいい。

・立場が低いから警戒されない。

・原作主人公と違うルートを選べる。

・悪役に近いから救える。

・無関係だからこそ自由に逃げられる。

こうした必然性があると、モブである意味が出る。モブにしかこの世界を救えない理由を作り出すこと。


二つ目は、行動理由が浅くなりやすいことだ。

推しを救うのは分かりやすいが、命をかけるほどの理由が薄いと、主人公の行動が軽く見える。

・なぜそこまで助けたいのか。

・前世でそのキャラに救われたのか。

・原作の結末に強い後悔があるのか。

・似た境遇に共感しているのか。

ここを少し掘るだけで、主人公の行動に説得力が出る。


三つ目は、原作知識が万能になりすぎることだ。

主人公がすべてを知っていて、すべてが予定通りに進むと、緊張感がなくなる。その場合は、ズレを入れるとよい。

・原作知識が古い

・別ルートに入っている

・ファンディスク後の世界だった

・原作にはないイベントが起きる

・他にも転生者がいる

・原作主人公も何かを隠している

・推しが原作と違う性格をしている

・主人公の介入で未来が変わり、知識が通用しなくなる


このズレがあると、物語にひねりが出る。原作知識を持っているが、完全ではない。だからこそ、主人公はその場で考え、選ばなければならなくなる。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


まとめ


モブ転生の面白さの本質は、「物語の責任を背負わずに、好きな距離から世界を改変できる自由」にある。


主人公ではない。悪役でもない。世界を救う義務もない。それなのに、未来のすべてを知っている。

だから、原作の外側から、ピンポイントで世界に手を入れて展開を変えられる。


この観測者でありながら展開を操れるという立場は、読者自身の願望そのものだ。


物語の中心から外れているからこそ、見えるものがある。中心人物ではないからこそ、変えられる運命がある。それがモブ転生の強さだ。


今回は以上、解散!

【参考】

モブ転生(ピクシブ百科事典)

https://dic.pixiv.net/a/%E3%83%A2%E3%83%96%E8%BB%A2%E7%94%9F

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