ジョルジュ・ポルティの36の劇的局面
やあ(´・ω・`)
ようこそ、物語分類の終着点「ジョルジュ・ポルティの36の劇的局面」へ。
今回のタイトルを見て君はこう思ったかもしれない。
「今度は36個!? いったいどれだけ分類はあるんだよ!!」
その気持ちは痛いほどよくわかる。だが、安心してくれ。過去の分類はこれで最後だ。
これまで俺たちは、様々な角度から物語の分類を学んできた。だが、彼らがそれらの理論を打ち立てるよりずっと前、今から100年以上も昔に分類されていた。それが今回紹介する「ジョルジュ・ポルティの36の劇的局面」だ。
今回は、この約100年前に発表された分類を紹介しよう。
◆ ◇ ◇
1. ジョルジュ・ポルティの36の劇的局面とは
『36の劇的局面』は、フランスの作家ジョルジュ・ポルティが、物語や演劇において「人間の感情が激しくぶつかり合うシチュエーション(劇的状況)」を以下の36個に整理したものだ。
・嘆願(Supplication):迫害者から逃れるため、権力者や助け手にすがる。
・救出(Deliverance):危機に瀕した者を、思いがけない救世主が助け出す。
・復讐(Crime Pursued by Vengeance):犯罪(悪行)に対し、正当な復讐を果たす。
・親族内の復讐(Vengeance taken for kindred upon kindred):親族同士で殺し合う最悪の復讐劇。
・追跡(Pursuit):逃亡者と、それを追う者との息詰まるチェイス。
・災厄(Disaster):大災害や戦争など、強大な力による敗北や悲劇。
・残酷さ・不運の犠牲になる(Falling Prey to Cruelty or Misfortune):無実の者が、理不尽に残酷な運命や悪意の犠牲となる。
・反乱(Revolt):暴君や権力者に対して、弱き者たちが立ち上がる。
・大胆な企て(Daring Enterprise):宝を手に入れるため、あるいは不可能を可能にするための無謀な挑戦。
・誘拐(Abduction):愛する者が無理やり奪い去られる。
・謎(The Enigma):仕掛けられた謎を解明する、あるいは謎めいた人物の正体を探る。
・獲得(Obtaining):力ずく、あるいは策略で、欲しいモノ(権力、財産、地位)を手に入れる。
・親族間の憎悪(Enmity of Kinsmen):思想や立場の違いから、愛する者(家族や親友)と憎み合う。
・親族間の対立(Rivalry of Kinsmen):激しい愛憎の末に、愛する者同士で対立する。
・殺意を伴う不倫(Murderous Adultery):不倫の末に、邪魔者を殺害する愛憎劇。
・狂気(Madness):正気を失い、恐ろしい行為に走る。
・致命的な軽率さ(Fatal Imprudence):ちょっとした油断や過ちが、取り返しのつかない破滅を招く。
・無意識の愛の罪(Involuntary Crimes of Love):知らず知らずのうちに禁忌(近親相姦など)を犯してしまう。
・気づかぬまま親族を殺す(Slaying of a Kinsman Unrecognized):そうとは知らずに、自分の親族を殺してしまう悲劇。
・理想のための自己犠牲(Self-sacrificing Ideal):大義や理想のために、自らの命や幸福を捨てる。
・身内のための自己犠牲(Self-sacrifice for Kindred):家族や愛する者を守るために、自分を犠牲にする。
・情念のためにすべてを捨てる(All Sacrificed for Passion):激しい情欲を満たすためなら、地位も名誉もすべて投げ打つ。
・愛する者を犠牲にせねばならない(Necessity of Sacrificing Loved Ones):大義(世界を救う等)のために、愛する者を自ら犠牲にしなければならない葛藤。
・強者と弱者のライバル(Rivalry of Superior and Inferior):勝ち目のない絶対的強者に、弱者が挑む。
・不倫(Adultery):結婚という契約を破り、密かな愛に溺れる。
・愛ゆえの罪(Crimes of Love):愛を手に入れるために、倫理を越えた罪を犯す。
・愛する者の不名誉(Discovery of the Dishonor of a Loved One):信じていた愛する者の、隠された恐ろしい罪や裏切りを知る。
・叶わぬ愛(Obstacles to Love):身分違いや対立関係など、結ばれることのない者同士の悲恋。
・敵を愛してしまう(An Enemy Loved):絶対に愛してはいけない相手(敵国の王子など)を愛してしまう苦しみ。
・野心(Ambition):野望を叶えるために、手段を選ばずすべてを薙ぎ倒す。
・神との争い(Conflict with a God):神や絶対的な恐怖、人間の力を超えた存在に抗う。
・誤った嫉妬(Mistaken Jealousy):根拠のない嫉妬から、相手を迫害してしまう。
・判断の誤り(Erroneous Judgment):間違った判断によって、取り返しのつかない事態を引き起こす。
・後悔(Remorse):過去に犯した罪の意識に苛まれ、苦しみ続ける。
・失われた者の回復(Recovery of a Lost One):死んだと思っていた者、あるいは生き別れた者との奇跡的な再会。
・ 愛する者の喪失(Loss of Loved Ones):愛する者が死に、どうしようもない絶望を味わう。
このポルティの36分類は、局面(シチュエーション・出来事のパーツ)の分類だ。
たとえば「復讐」「謎」「恋愛障害」みたいなものもあるが、同じ作品の中に複数の局面が同居してかまわない。むしろ長編ではそうなることが多い。だから使い方としては、「自分の話の中盤が弱い」「対立が薄い」と感じたときに、どの局面を足すと劇になるかを見る辞典として使うのが向いている。
◆ ◆ ◇
2. ジョルジュ・ポルティの36の劇的局面の詳細
各局面がどんな意味を持つかと、役割、序盤・中盤・終盤で読者が何を期待するかを解説していく。
■嘆願
理不尽な迫害者から逃れるため、逃亡者が権力者(あるいは力を持つ主人公)に泣きついて救いを求める局面だ。お奉行さま、どうかお助けください。
役割:迫害者、嘆願者、権力者
【お約束】
・序盤:誰が、どれほど残酷に追い詰められているか(被害者の絶望)を見せる。
・中盤:権力者(主人公)が、自分の身を危険に晒してまで助けるべきか迷う「倫理的な緊張感」が効く。
・終盤:最終的に救済の剣を抜くか、非情に見捨てるか。
■救出
脅迫者によって危機に瀕した者を、救世主が助け出す局面だ。もう大丈夫だ! なぜって? 私が来た!!
役割:不幸な人、脅迫者、救助者
【お約束】
・序盤:脱出不可能な危機を立てる。
・中盤:遠くから救助が向かってきている可能性をチラつかせ、ギリギリのサスペンスを作る。
・終盤:間に合うか、間に合わないか。間一髪でのド派手な救助シーンが最大のカタルシスになる。
■復讐
法律や正規の裁きでは悪を裁けないため、被害者側が私的な報復に向かう局面だ。
役割:犯罪者、復讐者
【お約束】
・序盤:読者が「こいつは絶対に殺さなきゃダメだ」と納得する、怒りの根拠(残酷な犯罪)を見せつける。
・中盤:着々と進む復讐の段取り、罠の設置、ターゲットを追い詰める過程が燃料になる。
・終盤:痛快な報いが下るか、復讐の代償として主人公も人間性を失うか。読者は「血の清算」を待っている。
■親族内の復讐
身内の被害を、親族同士で討とうとする、ドロドロした復讐劇だ。この家の血が、全部を狂わせる。
役割:罪を犯した親族、復讐する親族、被害者の追悼、両者の親族
【お約束】
・序盤:敵も味方も同じ血縁圏(家族や一族)にいるという「逃げ場のなさ」を提示する。
・中盤:憎しみと血の繋がり(愛情や思い出)が相反し、主人公の心をズタズタに引き裂く。単なる復讐よりも痛みが深い。
・終盤:血の涙を流しながら討つか、情に負けて刃を収めるかが焦点になる。
■追跡
逃亡者と、それを執拗に追う者との息詰まるチェイスの局面だ。
役割:追跡者(罰)、逃亡者
【お約束】
・序盤:追う側の「絶対に逃がさない理由」と、逃げる側の「絶対に捕まれない理由」を激突させる。
・中盤:距離の詰め合い、隠れ家の発見、罠による足止め、間一髪での脱出。
・終盤:完全に逃げ切るか、ついに追いつかれて捕まるかの明確な決着が約束になる。
■災厄
強大な力(大災害、戦争、圧倒的な強者)によって敗北し、その報せや結果に直面して転落する局面だ。
役割:敗北した勢力、勝利した勢力、または使者
【お約束】
・序盤:災害が起きる前の「輝かしい栄光や平和な地位」を高くそびえ立たせる。
・中盤:圧倒的な暴力によって、それが無惨に崩壊していく過程を容赦なく描く。
・終盤:すべてを失った者が、その失墜の絶望をどう受け止めるか。読者は「何を失ったか」の重みを見に来る。
■残酷さ・不運の犠牲になる
不幸の者が、理不尽に残酷な運命や、他人の悪意の犠牲となる局面だ。
役割:不幸な人、加害者、または不幸
【お約束】
・序盤:犠牲者の無垢さと善良さ(共感性)を丁寧に作る。
・中盤:これでもかと理不尽な苦難や虐待を積み重ね、読者の胸を締め付ける。
・終盤:救済が訪れるか、あるいは救済されないまま痛みだけが残るか。「受難」そのものを描く型だ。
■反乱
暴君や圧政者に対して、力なき弱き者たち(陰謀家)が立ち上がる局面だ。
役割:暴君、陰謀家
【お約束】
・序盤:権力者(暴君)の圧倒的な圧力と、民衆の苦しみを見せつける。
・中盤:秘密裏に進む陰謀、裏切りへの恐怖、そして反抗者たちの熱い結束を育てる。
・終盤:一斉蜂起。打倒して自由を勝ち取るか、無惨に鎮圧されて散るかを決める。
■大胆な企て
勇敢な人物が、不可能を可能にするために(あるいは厳重な警備から宝を奪うために)、無謀な挑戦をする局面だ。
役割:大胆な指導者、物、敵対者
【お約束】
・序盤:目標物(宝や目的)の絶対的な価値と、警備の異常な難易度を示す。
・中盤:天才的な計画、予期せぬトラブル、機転による障害突破が最高のごちそうになる。クエストや潜入ミッションの芯だ。
・終盤:華麗に奪取するか、あと一歩で挫折するか。手に汗握るスリルが期待される。
■誘拐・拉致
愛する者(ヒロインや子ども)が、保護者の目の前から無理やり奪い去られる局面だ。
役割:誘拐犯、誘拐された人、保護者
【お約束】
・序盤:奪われる対象が、主人公にとってどれほどかけがえのない価値があるかを描く。
・中盤:拉致の強行、そして奪われたことによる主人公の絶望と怒りの爆発。
・終盤:敵地へ乗り込んでの奪還か、永遠の喪失か。
■謎
解明すべき問題(謎)があり、探求者がそれに挑む局面だ。真実は、いつもひとつ!
役割:問題、出題者、探求者
【お約束】
・序盤:読者の好奇心を強烈に惹きつける「魅力的な問い(不可能犯罪など)」を立てる。
・中盤:手がかりの提示と、ミスリードによる迷いをミルフィーユのように重ねる。
・終盤:すべての伏線が繋がり、論理的でスッキリとした「答え」が出ることが絶対の期待値だ。ミステリーの最小単位として非常に強い。
■獲得
誰かが欲しいモノ(権力、財産、地位、情報)を得ようとし、相手がそれを全力で拒む局面だ。お前のモノは俺のモノ、俺のモノは俺のモノ。
役割:獲得者と拒否する相手
【お約束】
・序盤:欲しいものの価値と、両者の絶対的な対立構造を置く。
・中盤:力ずくの奪い合い、あるいは高度な頭脳戦、交渉、裏切り、仲裁。
・終盤:最終的にそれを手に入れるか、あるいは諦める(断念する)かが必要になる。
■親族間の憎悪
思想や立場の違いから、愛する者同士(家族や親友)が深く憎しみ合う局面だ。
役割:悪意のある親族、憎まれている親族 、または憎み合っている親族
【お約束】
・序盤:「かつてはこんなに仲が良かった(関係が近かった)」という過去を見せる。だからこそ逃げにくい。
・中盤:ちょっとしたすれ違いが致命的な憎悪へと深化していく、胸が痛くなる過程を描く。
・終盤:和解不可能な断絶、あるいは互いを破滅させる悲劇が来ると非常に強い。
■親族間の対立
身内同士(兄弟など)が、同じ対象(王位やヒロイン)を巡って競い合う局面だ。
役割:好ましい親族、拒絶された親族、競争の対象
【お約束】
・序盤:ライバル同士の因縁と配置を明確にする。
・中盤:才能の比較、親からの愛情の偏り、激しい嫉妬がドロドロと渦巻く。
・終盤:最終的に「選ばれる者」と「退けられる者」が残酷に決着することが期待される。
■殺意を伴う不倫
不倫(不義の関係)の果てに、邪魔者(配偶者)の殺害にまで発展する愛憎劇だ。この泥棒猫!!
役割:不倫をした二人、そして裏切られた配偶者
【お約束】
・序盤:許されない恋と、邪魔な配偶者の存在(裏切りの芽)を植える。
・中盤:密会のスリルと、「あいつさえいなければ」という殺意(共犯関係)が深まっていく。
・終盤:実際に殺害に及んで転落するか、直前で露見して破綻するかが山場になる。
■狂気
正気を失った者が、妄想や病によって誰かを害する(恐ろしい行為に走る)局面だ。
役割:狂人、犠牲者
【お約束】
・序盤:主人公(または関係者)の精神に生じた「小さな異変」を描く。
・中盤:理性が完全に崩壊し、常識が通じない狂気の世界へと落ちていく恐怖。
・終盤:取り返しのつかない凄惨な被害が出るか、あるいは自己破滅を迎えるか。ホラーの定番だ。
■致命的な軽率さ
悪意があったわけではなく、ほんのちょっとした「無知」や「不注意(油断)」ゆえに、大切なものを永遠に失う局面だ。そうか、そうか、つまりきみはそんなやつなんだな。
役割:軽率な者、犠牲者、あるいは失われた物
【お約束】
・序盤:平和な日常の中で、主人公が犯す「些細なミス」を描く。
・中盤:その小さなミスがドミノ倒しのように最悪の事態を引き起こしていく。
・終盤:「なぜあの時、あんなバカな真似をしたんだ」という、激しい自責の念(後悔)が読者の胸を刺す。
■無意識の愛の罪
恋人たちが、知らぬ間に「絶対に許されない禁忌(近親相姦など)」を犯している局面だ。
役割:恋人、愛される人、真実を明らかにする人
【お約束】
・序盤:運命的で美しい、普通の恋に見せかける。
・中盤:二人の関係に潜む「恐ろしい違和感」のヒントを少しずつ積み上げていく。
・終盤:決して結ばれてはいけない血縁だった、などの「禁忌の正体」が暴かれた時の絶望感が強い。
■気づかぬまま親族を殺す
戦場や暗闇で殺した相手が、後になって「実は自分の肉親(愛する者)だった」と判明する局面だ。ギリシャ悲劇(オイディプス王など)の古典的な手法だ。
役割:加害者、犠牲となる親族
【お約束】
・序盤:主人公は相手の正体を知らない(敵だと信じ込んでいる)前提で進む。
・中盤:憎しみを募らせ、悲劇の種(殺意)がすくすくと育っていく。
・終盤:手を下した直後に「真実」が発覚し、主人公の魂が完全に崩壊する。強烈なショック療法だ。
■理想のための自己犠牲
大義(世界を救う、祖国を守る等)や理想のために、自らの命や幸福を捨てる局面だ。心臓を捧げよ!
役割:英雄、理想、債権者、または犠牲になった人/物
【お約束】
・序盤:主人公が命よりも大切にしている「高潔な理想」を立てる。
・中盤:その理想を守るための代償(犠牲)の重さが、時間とともにどんどん増していく。
・終盤:「本当にそれを支払う(死ぬ)のか?」という究極の問いに対する、気高い決断が問われる。
■身内のための自己犠牲
今度は国家などの理想ではなく、家族や身内、愛するたった一人のために自分を犠牲にする局面だ。
役割:英雄、親族、債権者、または犠牲になった人/物
【お約束】
・序盤:守るべき相手との、深く温かい絆を見せる。
・中盤:「死にたくない、生きて一緒にいたい」という犠牲を避けたい人間らしい葛藤を積み上げる。
・終盤:それでも愛する者の未来のために、笑顔で己の命を差し出すか否かが、最大の泣き所になる。
■情欲のためにすべてを捨てる
激しい情欲や恋を満たすためなら、地位も名誉も財産も、すべてを投げ打つ(あるいは破滅する)局面だ。この上は徳さまも死なねばならぬ品なるが、死ぬる覚悟がききたい。
役割:恋人、情欲の対象、犠牲になった人/物
【お約束】
・序盤:理性を吹き飛ばすほどの「狂おしい情熱」の強さを見せつける。
・中盤:その情熱の炎に焼かれ、仕事、家族、社会的地位が次々と捨てられて(燃えて)いく。
・終盤:すべてを失った果てに、その情熱の対象すらも手からすり抜けるという「皮肉」が読者の期待を満たす。
■愛する者を犠牲にせねばならない
大義(世界を救う等)のために、自らの手で「愛する相手」を殺さなければならない(犠牲にしなければならない)局面だ。セカイ系作品の究極の葛藤だ。
役割:英雄、愛された犠牲者、犠牲の必要性
【お約束】
・序盤:二人の間の深く美しい愛情を描く。
・中盤:「この愛する者を殺さなければ、世界が滅ぶ」という、逃げ場のない不可避性を突きつける。
・終盤:泣き叫びながらその手で愛する者を屠る、凄まじい「実行の痛み」が核になる。かなり強力なクライマックス装置だ。
■強者と弱者のライバル
勝ち目のない絶対的強者(王や神レベル)に、最弱の弱者が挑み、同じ対象を争う局面だ。
役割:上位のライバル、下位のライバル、競争の対象
【お約束】
・序盤:両者の間にある「絶望的な格差(戦力差)」をこれでもかと見せつける。
・中盤:弱者が知恵と工夫、泥臭い努力で、血を吐きながら強者に食らいついていく熱い展開。
・終盤:奇跡的に下位者が勝つか、たとえ敗れても「一矢報いて存在を認めさせる」ことが期待される。
■不倫
不倫(不義の関係)そのものが中心の局面だ。あなた……昨日、どこで誰と会ってたの?
役割:不倫者2名、騙された配偶者1名
【お約束】
・序盤:結婚という契約(平穏な日常)と、そこに忍び寄る甘い誘惑を描く。
・中盤:殺意まではいかないが、「いつバレるか」という裏切りと秘密の緊張感が主役になる。
・終盤:露見して修羅場になるか、家庭が破綻するか、冷めきった継続を選ぶかの着地になる。
■愛ゆえの罪
愛を手に入れるために、倫理や法律を越えた罪(横領や裏切りなど)を犯す局面だ。
役割:恋人、愛する者、罪
【お約束】
・序盤:激しく惹かれ合う二人を描く。
・中盤:「これ以上進んではいけない」というブレーキが壊れ、愛のために次々と罪を重ねていく。
・終盤:その愛が罪によって破滅を迎えるか、あるいはすべてから逃避(解放)する結末を迎えるか。
■愛する者の不名誉を知る
信じていた愛する者(親や恋人)の、隠された恐ろしい罪や裏切り(汚点)を発見する局面だ。
役割:発見者、罪人
【お約束】
・序盤:対象への絶対的な信頼と尊敬を描く。
・中盤:ふとした違和感から、見たくなかった過去や秘密に近づいてしまうサスペンス。
・終盤:決定的な証拠による発覚。そして、主人公の心の中にあった「愛と信頼の像」が音を立てて崩壊する。
■叶わぬ愛
愛し合う二人の前に、身分違い、家族の反対、遠距離などの「外部からの障害」が立ち塞がる局面だ。
役割:二人の恋人、障害
【お約束】
・序盤:二人の本物の恋(惹かれ合い)を立てる。
・中盤:恋の成就を阻む障害をどんどん強め、二人を物理的・精神的に引き離す。
・終盤:すべての障害を乗り越えて結ばれるか、障害の前に敗れて涙を飲むかが約束になる。恋愛劇のど真ん中(王道)だ。
■ 敵を愛してしまう
絶対に愛してはいけない相手(親の仇、敵国の王子、対立組織の幹部)を愛してしまう局面だ。
役割:恋人、愛する敵、憎む者
【お約束】
序盤:絶対に相容れない敵対関係を明確にする。
中盤:相手の本当の優しさに触れ、「憎まなければならないのに愛してしまう」という感情の猛烈なねじれ(葛藤)を描く。
終盤:愛を選んで裏切り者になるか、陣営(義務)を選んで愛を切り捨てるかの、究極の二者択一が迫られる。
■野心
欲しい地位や目的物のために、手段を選ばずすべてを薙ぎ倒して突き進む局面だ。
役割:野心的な人、切望されるもの、敵対者
【お約束】
・序盤:主人公が抱く、異常なまでの「野心の対象(玉座など)」を示す。
・中盤:目的達成のために、裏切り、謀略、暗殺など、手段がどんどん過激化していく。
・終盤:すべてを手に入れて達成するか、野心の炎に焼かれて破滅するか。サクセスストーリーと転落劇の両方へ繋がりやすい。
■神との争い
人間が、神や絶対的な恐怖、人間の力を超えた超越的存在(運命)に抗う局面だ。
役割:人間、超越的存在
【お約束】
・序盤:人間が絶対に越えてはいけない線(神の領域)を提示する。
・中盤:人間の知恵と傲慢さをもって、その超越的な力に挑戦(反逆)する。
・終盤:神の怒りによる圧倒的な罰(天罰)が下るか、人間の意志が奇跡を起こすかが待つ。神話的スケールの対立になる。
■誤った嫉妬
根拠のない嫉妬や誤解(思い込み)から、相手を迫害してしまう局面だ。どうして私じゃなくて、あの子ばっかり……!
役割:嫉妬深い人、妬んでいる対象、共犯者と思われる人、過ちの原因または張本人
【お約束】
・序盤:相手に対する深い愛着と執着を描く。
・中盤:些細な誤解や悪人の吹き込みによって、疑心暗鬼(誤認)が狂気レベルに強まっていく。
・終盤:嫉妬に狂って相手を破壊(殺害)してしまうか、ギリギリで誤解が解けるか。自滅を招く強烈な火種だ。
■判断の誤り
本来裁かれるべきでない相手(無実の者)を、情報不足や偏見による誤解で裁いて(処刑して)しまう局面だ。
役割:過ちを犯した者、過ちの犠牲者、過ちの原因者または犯人、有罪者
【お約束】
・序盤:情報が不足した状態で、決定的な事件が起きる。
・中盤:周囲の偏見や状況証拠によって、誤認が「確定的な真実」として固定化されていく恐ろしさ。
・終盤:刑が執行された後に、真犯人や真相が露見する。取り返しのつかない過ちへの絶望が期待される。
■後悔・悔恨
過去に罪を犯した者が、その行為の罪悪感に苛まれ、向き合わされる局面だ。
役割:犯人、罪の犠牲者、尋問者
【お約束】
・序盤:隠し通してきた、消えない「過去の罪」を見せる。
・中盤:良心の呵責(幻覚など)、あるいは他者からの追及によって、激しい自己否認と苦しみに悶える。
・終盤:罪を告白して償い(解放)を得るか、罪の重さに耐えかねて精神が崩壊するかの着地が必要になる。
■失われた者の回復
死んだと思っていた者あるいは幼い頃に生き別れた者や物体を探し出し、奇跡的に取り戻す局面だ。君の、名前は……!
役割:探求者;見出された者
【お約束】
・序盤:深い喪失感と、かすかな「生きているかもしれない」という希望を提示する。
・中盤:僅かな手がかりを頼りに、世界中を探索する過程がメインになる。
・終盤:「救出」とは違い、ついに「見つける(再会する)」こと自体が最大の報酬(感動)になる。
■愛する者の喪失
身近な者(親、恋人、親友)の死や永遠の喪失を目撃し、どうしようもない絶望を味わう局面だ。
役割:殺された身近な者、傍観者となった親族、処刑人
【お約束】
・序盤:その対象への深い愛着と絆(失いたくない理由)を丁寧に描く。
・中盤:不吉な死の予感、あるいは回避不能な別れのカウントダウン。
・終盤:喪失そのものがドラマの重い核になる。この悲しみは、その後の主人公の「復讐」や「成長」へ向かうための強力な起点(着火剤)になりやすい。
◆ ◆ ◆
まとめ
ポルティが100年以上前に古代ギリシャ悲劇などから抽出したこの「36の劇的局面」。
人間の心が激しく揺れ動く人間ドラマの火種は、だいたいこの36個のどこかに集約されている。
「いつも敵が現れて、チート能力で倒して終わるだけの、単調で平坦な展開になってしまう」
そんな悩みを抱えているなら、この36個の中から、今まで使ったことのないジャンルを選んで、君のプロットに使ってみてくれ。
今回は以上だ、解散!
【参考】
36の劇的状況(wiki)
https://en.wikipedia.org/wiki/The_Thirty-Six_Dramatic_Situations




