新井一の23のストーリー分類
やあ(´・ω・`)
ようこそ、日本で生まれた物語分類「新井一の『23のストーリー分類』」へ。
これまで世界基準の強力な分類法を伝授してきた。だが、ハリウッド映画や西洋の神話をベースにした分類を見ていると、合わない人もいるかもしれない。
今回の分類は「どこにカセ(お約束)を置けば面白いの?」そういう、実際に原稿用紙に向かう人間の、手の届く距離で使われ続けてきた「超・現場型」の分類だ。
これを知れば、君の物語の「日本特有のウケるツボ(情緒)」が、さらに一段深く理解できるようになるはずだ。
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1. 23のストーリー分類とは
これは、日本最大のシナリオライター養成機関である「シナリオ・センター」の創設者、新井一氏が提唱した『ストーリー・23の基本形式』だ。
彼は膨大な数の日本の映画、テレビドラマ、時代劇、大衆演劇を分析し、「日本人が好んで見続けてきた物語の型」を以下の23種類に分類した。
・かちかち山型(復讐・報復)
・桃太郎型(集団勧善懲悪・チームミッション)
・太閤記型(立身出世・成り上がり)
・西遊記型(道中・ロードムービー)
・逃亡者型(追跡からの逃走・サバイバル)
・シェーン型(ストレンジャー・流れ者来訪)
・半七捕物帳型(探偵・謎解き)
・水戸黄門型(身分秘匿の開示・変身)
・柔ちゃん型(特技発揮・プロフェッショナル)
・サザエさん型(ホームドラマ・日常群像)
・巨人の星型(スポ根・血の滲む努力)
・ひらり型(性格の揺れ・優柔不断)
・また逢う日まで型(純愛・すれ違い)
・曾根崎心中型(禁忌の恋・破滅)
・母三人型(人間関係の配置と情)
・マリア・テレサ型(難病・貧困・伝記)
・血煙荒神山型(義理と人情の板挟み)
・氷点型(秘密の十字架)
・哀愁型(約束の呪縛)
・夕鶴型(異類の来訪と正体)
・悪い奴ほどよく眠る型(悪の勝利・アンチヒーロー)
・生き方型(信念の貫徹・勧善懲悪)
・その他(災難や運命が出てくるもの)
特徴的なのは、そのネーミングセンスだ。「桃太郎型」「水戸黄門型」「サザエさん型」など、日本人がタイトルを聞いただけで「ああ、あのパターンの話ね」と一瞬で理解できる(映像が脳裏に浮かぶ)ように名付けられている。
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2. 23のストーリー分類の詳細
ここからは、23型を現代のエンタメで使える形に意訳しながら整理していく。
■かちかち山型(復讐・報復)
その名の通り、日本の伝統的な「復讐もの」だ。「ざまぁ系」の原点とも言える。いじめられていたものが以下に復讐するかというお話だ。
【お約束】
・序盤:「タヌキにばあさんを殺された」という、読者が100%同情し、加害者への強烈な怒り(ヘイト)を共有できる根拠が絶対に必要だ。
・中盤:ウサギ(主人公)がタヌキ(悪役)に対して行う、泥舟に乗せるような「報復の準備と痛快な段取り」が燃料になる。
・終盤:確実に報いが下るカタルシスと、復讐を終えたあとの一抹の虚しさをどう描くかが読者の期待になる。
■桃太郎型(集団勧善懲悪・チームミッション)
イヌ、サル、キジという仲間を集め、チームで巨悪(鬼)を討つ型だ。
【お約束】
・序盤:明確な巨悪の存在と、「一人では勝てない」という事実の提示。
・中盤:個性豊かな仲間集めが最初の快感。そして、集まったチームの連携で困難を突破していく過程がごちそうになる。
・終盤:全員の力を合わせて悪を打倒し、宝(平和)を取り戻す大団円が基本だ。
■太閤記型(立身出世・成り上がり)
豊臣秀吉(太閤)のように、最下層・無名からの飛躍を描くサクセスストーリーだ。
【お約束】
・序盤:草履取りからのスタートという「圧倒的に低い出発点と不遇さ」を見せる。
・中盤:生まれや身分ではなく、主人公自身の「実力・機転・人たらしの才能・運」を武器に、階段を一段ずつ駆け上がる痛快さを描く。
・終盤:天下を取る(成功する)こと自体よりも、「上に立つにふさわしい大きな器の人物になったか」が読後感を左右する。
■西遊記型(道中・ロードムービー)
天竺という一つの目的地まで行く途中に、妖怪などの障害が次々と現れる「旅」の型だ。
【お約束】
・序盤:はるか遠くの目的地(天竺)と、なぜそこへ行かなければならないのかという「旅立ちの理由」を明確にする。
・中盤:次々に出現する寄り道、試練、仲間との喧嘩と絆。この型は「目的地への到着」ではなく、「旅の途中のドタバタ(一話完結型の事件)」こそが最大のごちそうになる。
・終盤:長く苦しい旅の果ての到達(成就)による、圧倒的な達成感が必要だ。
■逃亡者型(追跡からの逃走・サバイバル)
無実の罪を着せられた主人公が、追っ手や危機から逃れ続ける「逃避」が主筋になる型だ。
【お約束】
・序盤:「なぜ逃げるのか(冤罪など)」「誰に追われるのか(恐るべき追跡者)」を明示する。
・中盤:包囲網、偽名の使用、協力者との出会い、裏切り、そして「追っ手とのギリギリの距離感」がスリルの源泉になる。
・終盤:完全に逃げ切るか、真犯人を見つけて冤罪を晴らすか。永遠に続くかと思われた追跡劇に、明確な決着が欲しい。
■シェーン型(ストレンジャー・流れ者来訪)
閉鎖的で困っている共同体(村など)の前に、凄腕のよそ者(流れ者)が現れ、事態を収拾してまた去っていく型だ。西部劇『シェーン』や時代劇『木枯し紋次郎』だ。
【お約束】
・序盤:悪党に苦しめられている共同体の悲状と、そこにふらりと現れる主人公(異邦人)の凄みを描く。
・中盤:主人公が深く関わるほど、共同体との間に摩擦や情が生まれ、事態がこじれていく過程を描く。「来訪者が停滞していた場(空気)を変える」のがこの型の芯だ。
・終盤:悪を倒して村を救うが、主人公はそこに定住せず、「自分はここにいるべき人間ではない」と背中を向けて去っていく余韻が最大の魅力だ。
■半七捕物帳型(探偵・謎解き)
事件の真相究明が物語のエンジンとなる「ミステリー・推理もの」だ。
【お約束】
・序盤:誰かが殺される、不可解な事態が起きるなど、「何が起きたのか(謎)」の提示からすべてが始まる。
・中盤:手がかりの発見、推理、そして罠による誤認の往復が読者の知的好奇心を刺激する。
・終盤:探偵による鮮やかな真相の解明と、すべての伏線回収が絶対の約束事だ。
■水戸黄門型(身分秘匿の開示・変身)
正体隠し、身分反転、変装、そして「最後の印籠(正体開示)の快感」を含む型だ。汚い格好をしている者が、実は……というのはみんなが好きなテンプレだ。
【お約束】
・序盤:主人公が「実は凄い力(高い身分)を持っている」という本体を、読者と主人公だけが知っている優越感を作る。
・中盤:仮の姿のまま事件に関わり、周囲からバカにされたりピンチに陥ったりする姿を描く。
・終盤:「控えおろう!」と正体や本来の力がド派手に明かされ、悪党が平伏する(あるいは周囲が驚愕する)瞬間が、読者への最高のご褒美になる。
■柔ちゃん型(特技発揮・プロフェッショナル)
柔道、料理、医療、音楽、あるいは特殊な異能など、「卓越した一つの技能」で道を拓く型だ。
【お約束】
・序盤:「この主人公には、これだけは誰にも負けない特技がある」という一点突破の魅力を強烈に見せる。
・中盤:その特技が痛快に通じる場面(無双)と、特技だけでは解決できない人間関係の壁(挫折)の両方を作り、技と心を磨く。
・終盤:磨き上げた特技が、最終的に「主人公の人間としての価値」や「誰かを救う結果」に結びつくと非常に強い物語になる。
■サザエさん型(ホームドラマ・日常群像)
血縁や擬似家族、あるいは特定のコミュニティ(ギルドや学校)の日常と小さな出来事を描く型だ。
【お約束】
・序盤:世界を救うような派手な事件ではなく、家庭や共同体の温かくも面倒くさい空気を読者に提示する。
・中盤:お小遣いの値上げや、ちょっとした勘違いから生まれる「小さな衝突やすれ違い(日常のさざ波)」が連続する。
・終盤:最終的には家族の絆は大きく壊れず、またいつものドタバタな日常へ戻っていく安心感が期待される。
■巨人の星型(スポ根・血の滲む努力)
才能と努力、そして過酷な特訓を描く「スポーツ根性もの」だ。
【お約束】
・序盤:主人公の隠れた才能、あるいは狂気的なまでの「憧れ・執念」を提示する。
・中盤:血を吐くような特訓、挫折、強力なライバルの登場。この型では、読者は主人公の「苦しみ」を共有できなければならない。
・終盤:勝利のカタルシスか、たとえ負けても「限界を超えた成長の証明」がいる。読者は、主人公が苦しんだ分だけの見返りを絶対に欲しがる。
■ひらり型(性格の揺れ・優柔不断)
不決断や優柔不断を中心にした性格ものだ。NHKの朝ドラ『ひらり』のように、二人の男性の間で揺れるような物語だ。
【お約束】
・序盤:「どちらも選べない(決めきれない)」という主人公の性格的な弱さ(揺れ)を見せる。
・中盤:その不決断が、周囲の人間関係や状況を振り回し、事態をこじらせていく(これがドラマを作る)。
・終盤:最終的に何かを「選ぶ」か、それとも選べないまま「すべてを失う」か。行動力の話というより、内面の揺れそのものを味わう型だ。
■また逢う日まで型(純愛・すれ違い)
出会い、愛し合い、そして引き裂かれる「純愛もの」だ。
【お約束】
・序盤:二人が出会い、惹かれ合うことの「圧倒的な必然(運命)」を描く。
・中盤:戦争、身分差、病気などの「外部からの障害」によって引き裂かれ、すれ違いの連続が読者の胸を締め付ける。
・終盤:最後に結ばれるか、あるいは死別などで届かないままでも「二人の愛は永遠に本物だった」と感じさせる強い余韻が必要だ。恋の純度そのものが商品となる。
■曾根崎心中型(禁忌の恋・破滅)
不倫や三角関係、心中など、社会的・道徳的に「絶対に許されない危うい恋」の型だ。
【お約束】
・序盤:「なぜこの恋がいけないのか(禁忌の理由)」を重く提示する。
・中盤:愛が深まれば深まるほど、社会からの制裁や破滅の危険が反比例して増していくスリルが最高のごちそうになる。
・終盤:社会を敵に回して結ばれるか、引き裂かれるか、二人で破滅(心中)するか。禁忌の重さに見合う、激しく痛ましい結末が要る。
■母三人型(人間関係の配置と情)
母もの、父もの、師弟ものなど、血縁や義理といった「人間関係そのもの」が核になる型だ。
【お約束】
・序盤:複雑に絡み合った人間関係の配置(誰が誰の育ての親か、誰が誰に恩があるか等)を明示する。
・中盤:義理、情、それぞれの立場の役割のズレから生じる「本当は愛しているのに傷つけ合う板挟み」の苦しさを描く。外的事件より、誰と誰の間に何があるかが主役だ。
・終盤:関係が修復されて涙の抱擁を迎えるか、断ち切られて永遠の別れとなるかがポイントになる。
■マリア・テレサ型(難病・貧困・伝記)
個人の努力だけでは抗いにくい「巨大な苦境(難病、極度の貧困、過酷な運命)」に立ち向かう型だ。
【お約束】
・序盤:主人公に背負わされた「カセ(宿命)」の圧倒的な重さと理不尽さを見せる。
・中盤:その過酷な状況下での耐え方、周囲との支え合い、そして蜘蛛の糸のように細い「希望」へのすがりつきを描く。
・終盤:奇跡的に克服するか、たとえ克服しきれずに命を落としても、その「生き方の輝き」が読者の胸を打つことが求められる。
■血煙荒神山型(義理と人情の板挟み)
講談や浪曲の世界のように、「切るに切れない人間関係のカセ」がドラマを動かす型だ。
【お約束】
・序盤:兄弟分、夫婦、親子、ヤクザの親分と子分など、その「縁の重さ(掟)」を提示する。
・中盤:自分の「本当の感情」と、社会や組織の「義理」との間で身動きが取れなくなる強烈な板挟み(葛藤)を描く。
・終盤:義理を重んじて感情を殺すか、感情を爆発させて義理(社会)を捨て去るか。関係を守るか断つかの「痛み」が期待される。
■氷点型(秘密の十字架)
重大な「秘密」を抱え込む型だ。三浦綾子の小説『氷点』(自分の娘を殺した犯人の娘を引き取って、妻に内緒で育てる)が典型だ。
【お約束】
・序盤:物語の核となる「絶対にバレてはいけない強烈な秘密」を設定し、読者と主人公だけが共有する。
・中盤:秘密を抱えたまま、対象との関係が深まっていく(愛してしまう)ことの、胃がキリキリするような苦しさを描く。
・終盤:秘密が暴露された瞬間の崩壊、そこからの赦し、あるいは完全な破綻。秘密が弾けるその瞬間が最大の山場になる。
■哀愁型(約束の呪縛)
主人公が何らかの「重大な約束」をしており、その約束が物語全体を引っ張る型だ。『走れメロス』がこれだ。
【お約束】
・序盤:命を懸けるほどの「絶対の約束(契約)」を立てる。
・中盤:約束を守ろうとするが、守れない事情、外部からの邪魔、時間差によるすれ違いが感情を極限まで深める。
・終盤:約束が果たされるかどうか。あるいは「約束は果たせなかったが、心は通じ合った」という結末で読者を泣かせに来る。
■夕鶴型(異類の来訪と正体)
『鶴の恩返し(夕鶴)』のように、どこか不思議な人物(未知の存在、異物)が日常に現れる型だ。
【お約束】
・序盤:謎めいた人物の来訪と、その「正体のわからなさ」という異様さを見せる。
・中盤:その人物と交流し、理解を深めていく過程と、同時に膨らむ「こいつは一体何者なんだ?」という疑念を描く。
・終盤:「決して見てはいけない」と言われた正体の開示、ルールを破ったことによる別れの哀切が期待される。
■悪い奴ほどよく眠る型(悪の勝利・アンチヒーロー)
善が勝つというエンタメの王道を裏切る、「悪者が勝利する」型だ。かなりいやらしいが、刺さると強い。
【お約束】
・序盤:悪役である主人公(あるいは中心人物)の、冷酷だが抗いがたい「危うい魅力」を提示する。
・中盤:善人たちが束になっても敵わない、悪の「システムや知恵」で勝ち上がっていく不快な快感を描く。
・終盤:悪が裁かれずにそのまま勝つ(あるいはさらに巨大な悪に飲み込まれる)からこその、強烈な皮肉や虚無感が読者の心にドス黒く残る。
■生き方型(信念の貫徹・勧善懲悪)
善人が最後に勝利する、あるいは勝利しなくても「己の信念を貫く」型だ。
【お約束】
・序盤:明確な「善悪の軸(主人公の絶対的な正義)」を立てる。
・中盤:善人であるがゆえに悪党から理不尽に苦しめられるが、決して筋を曲げない姿を描く。
・終盤:その生き方が最終的に報われる。単なる物理的な勝敗というより、「どんな困難の中でも、人間としてどう気高く生きたか」が結論になる。
■その他(災難や運命が出てくるもの)
上記22分類の外側に残る、「巨大な天災」や「抗えない宿命」をメインに据えた受け皿だ。
新井一自身も、世の中の物語のすべてを完全な箱に閉じ込められるとは思っていなかった。ここは厳密な棚というより、「人間の思惑を超えた、災厄や運命性の強い話」の置き場だと考えると使いやすい。
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まとめ
今回のポイントをまとめよう。
この分類の最大の強みは、「この話、結局何がドラマ(人間関係の摩擦)の芯なんだ?」ということを、日本の読者や視聴者に一番馴染みやすい記号で考えられることにある。
君がいま書こうとしている話は、仲間を集めて巨悪を討つ「桃太郎型」か。
絶対にバレてはいけない「氷点型(秘密)」か。
それとも、無能扱いされた主人公が大逆転する「かちかち山(復讐)」と「水戸黄門(身分開示)」のハイブリッドか。
そこが見えると、序盤で読者に何を約束し、中盤でどんな人間関係のすれ違いをこじらせ、終盤で何を回収すればいいのかが、かなりはっきりするはずだ。
今回は以上、解散!
【参考】
新井一 ,シナリオ作法入門




