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読まれるエンタメ物語のテンプレ集 ~テンプレは悪じゃない!読者の期待を外さない物語の組み立て方~  作者: 夕月 悠里
第2章前半:ジャンルのテンプレ

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20のマスター・プロット

やあ(´・ω・`)


ようこそ、主人公の行動、動機の分類「20のマスター・プロット(20 Master Plots)」へ。


君はプロットを練っている時、ふとこんなことを思ったことはないか?


「主人公に目的はある。敵もいる。世界観も決まった。……でも、これをどういう話として進めれば一番面白くなるのか、いまいちピンとこない」


そんなときに便利なのが、今回の「20のマスター・プロット」だ。これは、ファンタジーやSFといった外見のジャンルではなく、登場人物の具体的な行動アクションと動機(感情)による分類だ。


これを学べば、「あ、俺がいま書こうとしている展開、モロにこれじゃん!」というドンピシャの型が見つかる。執筆中に「今、俺の話にはどんなお約束があるんだっけ?」と迷子になった時の処方箋として頼りになるだろう。


◆ ◇ ◇


1. 20のマスター・プロットとは


『20 Master Plots: And How to Build Them(20のマスター・プロット)』は、アメリカの作家であるロナルド・B・トビアスが1993年に刊行した実践的な創作技法書だ。


この本は、神話から現代エンタメに至るまでのあらゆるフィクションを解剖し、「物語には、人間の行動と動機に基づいた20の基本プロットが繰り返し現れる」と定義した。そして、それぞれのプロットをどう組み立て、読者にどんな感情を提供すべきかを示した。


この本で挙げられている20の型は、以下のようになっている。

・探求(Quest):価値ある何かを探し求める。

・冒険(Adventure):未知の体験そのものを楽しむ。

・追跡(Pursuit):逃げる者を追う、または追っ手から逃げる。

・救出(Rescue):囚われた者を助け出す。

・脱出(Escape):囚われている場所から自ら抜け出す。

・復讐(Revenge):ひどい目にあわされた相手に報復する。

・謎解き(The Riddle):知的好奇心を刺激して真実を暴く。

・ライバル(Rivalry):互角の敵と同じ目的を巡って争う。

・弱者(Underdog):不利な状況で弱者が強者に立ち向かう。

・誘惑(Temptation):甘い罠や悪の誘いと戦う。

・変身(Metamorphosis):物理的に別の姿に変えられ、元に戻ろうとする。

・変容(Transformation):内面が変化し、本当の自分を見つける。

・成熟(Maturation):子供から大人への通過儀礼。

・愛(Love):障害を乗り越えて結ばれる。

・禁じられた愛(Forbidden Love):社会的に許されない愛に落ちる。

・犠牲(Sacrifice):善や愛する者のために自らを犠牲にする。

・発見(Discovery):世界や自分の本当の姿(重大な真実)を知る。

・破滅的行為(Wretched Excess):狂気へと突き進む堕落。

・上昇(Ascension):社会の階段を底辺から登っていく。

・下降( Descension):社会の階段を絶頂から転げ落ちる。


◆ ◆ ◇


2. 20のマスター・プロットの詳細


トビアスの分類は、物語の駆動原理(キャラクターが何をしたいか)で分けている。ここからは、それぞれの型が読者に何を約束し、序盤・中盤・終盤でどんな展開を用意すべきかを具体的に解説していく。



■探求

何か価値あるものを目指して、ひたすら進む話だ。宝、不治の病を治す薬、王位、世界の秘密。何を探すかは自由だが、目的物マクガフィンがはっきり分かっていることが条件だ。この旅を経て主人公がどのような変化をしたかが大事である。


【お約束】

・序盤:何を探すのか、そしてそれが主人公にとってどれほどの価値があるかを見せつける。

・中盤:ライバルとの奪い合い、罠、寄り道、裏切りといった障害がごちそうになる。

・終盤:到達して手に入れるか、届かないか。あるいは「本当に必要だったのはこの宝ではなかった」という気づき(反転)が期待される。



■冒険

探求に似ているが、こちらはゴール(宝)よりも体験(旅そのもの)の比重が高い。未知の世界に入り、次々と降りかかるイベントやアクションを楽しむ型だ。探求は旅をする人に焦点が当てられ、冒険は旅そのものに焦点が当たる。


【お約束】

・序盤:退屈な日常から、ワクワクする非日常へと踏み出す瞬間(境界線)を描く。

・中盤:息をつかせぬ連続した事件、珍しい風景、奇妙な出会いが最大の燃料になる。

・終盤:冒険の果てに無事に生還するか、経験を持ち帰ることが求められる。ただ冒険の目的は旅なので、主人公が大きく変わることは重要ではない。



■追跡

追うか、追われるか。その運動自体が中心になる、極めて本能的でスリリングな話だ。かくれんぼと鬼ごっこを想像してくれ、刑事と連続殺人鬼、ターミネーターと逃亡者など狩るか狩られる側の関係だ。


【お約束】

・序盤:誰が誰を、どんな理由で追っているのか/追われているのかのルールを即座に明確にする。またその妥当性と危機的な状況であることをを説明する。

・中盤:包囲網、ギリギリでの取り逃がし、知略の逆転劇、再追跡が燃料になる。絶対に簡単には捕まえない/捕まるな。

・終盤:最終的に捕まえるか、完全に逃げ切るかの白黒ハッキリした決着が求められる。



■救出

誰かが理不尽に囚われており、主人公がそれを命がけで助けに行く話だ。さらわれた姫、人質になった子ども、敵に捕まった相棒。このタイプには主人公、敵役、被害者の3つの関係が必須であり主人公は敵役と対峙する。


【お約束】

・序盤:誰が助けを必要としているか、そして「なぜ他の誰でもない、主人公が行かなければならないのか」という強い動機を立てる。また敵の拠点、力関係を提示する。

・中盤:敵の拠点への侵入、タイムリミット、敵との命がけの駆け引きが見どころになる。

・終盤:「救えるのか、救えないのか」。その一点に読者の最大の緊張感が集約される。



■ 脱出

救出の反転だ。今度は主人公自身が閉じ込められ、そこから自力で抜け出さなければならない。牢獄、孤島、事故現場、あるいは「毒親に支配された家庭」という精神的な閉じ込めもこれに該当する。救出では誰かが助けに来てくれたが、脱出は主人公の力で逃げ出す必要がある。


【お約束】

・序盤:その閉鎖環境がいかに理不尽で、不自由で、絶望的かを見せつける。

・中盤:最初の脱出の失敗、偽の出口、看守(支配者)の監視、追跡劇が効く。敵の正体が徐々に明らかになってくる。

・終盤:外の世界へ出られるか、それとも脱出を諦めて「その中で別の自由の形」を選ぶかが期待される。



■復讐

深く傷つけられた者が、相手に相応の報いを与えようとする話。ここで一番重要なのは、読者が主人公の怒りを理解できることだ。明らかな逆恨みなどは共感できない要因となる。


【お約束】

・序盤:主人公が何をされ、何を奪われたのか。なぜそれが絶対に許せないのかを、徹底的に残酷に見せる。ヘイトの蓄積だ。復讐を正当化する理由を持っていなければならない。

・中盤:復讐のための準備、潜入、力の逆転、そして「本当にこれをやっていいのか?」という主人公の葛藤を描く。

・終盤:完全なる復讐の達成か、あるいは復讐の空しさに気づいて刃を収めるか。復讐の結末がどうなるのかが問われる。



■謎解き

答えのわからない強烈な問いがあり、知的好奇心でそれを解く話だ。犯人当てのミステリーに限らない。消えたヒロインの正体でも、世界を覆う奇妙な現象の原因でもいい。


【お約束】

・序盤:読者が「どうしても答えを知りたい!」と思うような、強烈で魅力的な問い(謎)を立てる。

・中盤:手がかりとミスリード(偽のヒント)を交互に積み上げ、読者の脳みそをフル回転させる。

・終盤:答えが論理的に示され、バラバラだったパズルのピースが「カチッ」と繋がるアハ体験(知的な快感)が必要だ。ただし明確な答えもないオープンエンドになることもある。



■ライバル

ほぼ互角の力を持つ相手同士が、同じ目的(優勝、ヒロイン、玉座)を巡って競い合う話だ。スポーツ、商売、恋愛、政治など多くの舞台で繰り広げられる。


【お約束】

・序盤:「この二人は絶対にぶつかる運命にある」とわかる因縁や配置を明確にする。また二人は同等の強さを持つことが要求される(弱点は異なっていてもよい)。ただ序盤はライバルが主人公よりも優位になる。序盤は枷などにより主人公の力が十全に発揮できないことが多い。

・中盤:一進一退の攻防。ここでは単なる実力差よりも、「どうしても勝ちたい執念」や「美学・価値観の差」のぶつかり合いが効く。

・終盤:勝敗がつくのは当然として、「どう勝つか」「どう負けるか(敗者の美学)」に深い意味が求められる。



■弱者

スポーツ、選挙、ビジネスなどで勝ち目のない、または劣勢に立たされている人やチームが戦う話。下剋上もの。ストーリーの内容はライバルに似ているが、こちらは「最初から圧倒的な力の差がある」のが特徴だ。主人公は底辺の格下で、圧倒的に不利で、普通にやれば100%勝てない。


【お約束】

・序盤:主人公がいかに不利で、敵がいかに強大で理不尽かを見せつける。

・中盤:知恵、工夫、泥臭い粘り、そして偶然ではなく折れない意志で食らいつく姿が読者の胸を打つ。

・終盤:奇跡の勝利を収めるか、あるいは試合に負けても「精神的な尊厳」を勝ち取る形が期待される。



■誘惑

主人公が、道徳的・精神的に堕ちていく「甘い誘い」にさらされる話だ。権力、金、快楽、裏切り。この型は、敵がモンスターではなく内側(己の欲望)にいる。


【お約束】

・序盤:主人公の持つ「人間的な弱点」や「隠された欲望」を読者に見せる。

・中盤:「やってはいけない」と頭ではわかっているのに、少しずつ一線を越えていくスリリングな過程が最高に面白い。

・終盤:最後に誘惑を断ち切って正気に戻るか、完全に欲望に屈して破滅するか。主人公の選択が問われる。



■変身

主人公が「別の存在」に変わってしまう話だ。カフカの『毒虫』、狼男、あるいは「醜い姿の怪物に変えられる呪い」など、物理的・目に見える変化が中心になる。変身対象は主人公の願望や欲求によって変わる。


【お約束】

・序盤:変化する前の平穏な日常と、変化を引き起こす発端(呪いなど)を描く。主人公の願望や欲求を明らかにしておく。

・中盤:新しい姿による圧倒的な不自由さ、周囲からの迫害、そして元に戻るための苦闘が見どころになる。

・終盤:呪いを解いて元の姿に戻るか、その異形の姿のまま生きることを受け入れるか。主人公の願望や欲求がどう変化したかが問われる。



■変容

変身とは違い、こちらは身体ではなく人間としての中身(内面)が変わる話だ。傲慢な貴族が思いやりを学ぶ、臆病者が責任を引き受ける、人間不信の暗殺者が他者を信じる。


【お約束】

・序盤:変わる前の致命的な人格の欠陥を見せる。

・中盤:手痛い失敗や、他者からの無償の愛を通じて、その凝り固まった心が激しく揺さぶられる。

・終盤:「以前の自分なら絶対に選ばなかった、思いやりのある選択」ができるようになることが、読者への最大の報酬だ。



■成熟

変容の中でも、とくに子どもから大人への成長(通過儀礼)に特化した型だ。未熟な若者が世界の厳しさや残酷さを知り、責任を見つける話だ。


【お約束】

・序盤:主人公の未熟さ、世間知らずさ、幼い万能感を見せる。

・中盤:初めての喪失、親友との決別、大きな失敗、社会の理不尽との衝突が、成長のための強烈な燃料になる。

・終盤:地位や宝を手に入れることよりも、「もう、物語が始まった時のあの無邪気な子どもではないんだ」という、少しほろ苦い成熟を感じさせることが大事だ。



■愛

ふたりが出会い、惹かれ合い、障害を越えて結びつく話。王道中の王道の恋愛型だ。異性に限らず同性または人外なども含まれる。


【お約束】

・序盤:運命(あるいは最悪)の出会いと、「なぜこの二人は惹かれ合うのか」という引力を描く。

・中盤:誤解、物理的な距離、恋敵の出現、外部からの障害が二人の絆を試す。

・終盤:障害を乗り越えて完全に結ばれるか、少なくとも互いの本心が確認され、愛が証明されることが期待される。



■禁じられた愛

愛の型の変種だが、こちらは「社会的・道徳的な壁が絶望的に厚い」のが特徴だ。『ロミオとジュリエット』のように、身分差、敵対する国家同士、既婚者など、絶対に愛してはいけないというタブーが中心になる。


【お約束】

・序盤:なぜこの二人の愛が「禁忌」なのか、その壁の分厚さを明確にする。

・中盤:関係を深めれば深めるほど、社会からの制裁や命の危険が増していくスリリングな構造が面白い。

・終盤:すべてを捨てて駆け落ちするか、社会の掟に従って永遠の別れを選ぶか、二人で破滅するか。壁の重さに見合う、激しい決着が必要だ。



■犠牲

誰かが自分の利益や、最悪の場合は命を差し出して、より大きな価値を守る話だ。愛する者、祖国、共同体、あるいは己の信念のために身を削る。


【お約束】

・序盤:主人公が「何を最も大切にしているか(自分の命よりも大事なもの)」を示す。

・中盤:犠牲を避けたいという人間らしい葛藤と、それでも身を差し出さざるを得ない残酷な状況を緻密に作る。

・終盤:主人公が何を失い、その代償として誰の未来を残したのかが、読者の涙腺を崩壊させる中心点になる。



■ 発見

主人公が重大な何かを知ってしまう話だ。秘密、真実、自分の正体、他人の本心、世界の構造。


【お約束】

・序盤:この世界(あるいは自分の記憶)には、何かまだ知らない隠された真実がある、と読者に感じさせる。

・中盤:少しずつ情報が集まり、それまで信じていた世界の意味がガラガラと崩れ去っていく。

・終盤:「自分は一体何者なのか」「この狂った世界でどう生きるのか」という、真実を知ってしまったがゆえの究極の選択が迫られる。



■破滅的行為

人間の欲望や感情が限界を超え、理性という薄皮が剥がれ落ちていく話だ。激しい嫉妬、狂気、アルコールやギャンブルへの依存、暴走。読者は「こいつ、一体どこまで堕ちていくんだ」という恐ろしいもの見たさでページをめくる。


【お約束】

・序盤:すでに精神的に危うい傾向、狂気の萌芽を見せる。

・中盤:理性の歯止めが一切利かなくなり、周囲を巻き込んで暴走していく過程が肝だ。

・終盤:完全なる破滅、精神の崩壊、あるいは取り返しのつかない致命的な傷跡を残して物語が閉じる。



■上昇

社会の最底辺から、高いところへ駆け上がっていく話だ。不遇な者、罪を抱えた者、スラムの無名の若者が、試練を経て価値ある存在になる。


【お約束】

・序盤:誰も見向きもしない、圧倒的に低く泥臭い出発点を見せる。

・中盤:血の滲むような努力、強敵との試練、周囲との関係構築を通じて、階段を一段ずつ登っていく。

・終盤:単に「地位や金を手に入れた」というだけでなく、人間としても気高い「高い場所」に到達したカタルシスが期待される。



■下降

上昇の完全な反対だ。社会的に高い場所(絶頂)にいた者が、道徳的・社会的に底辺へと転落していく。


【お約束】

・序盤:最初の地位の高さ、恵まれた環境、そしてその裏にある危うい傲慢さを見せる。

・中盤:小さな判断ミス、隠しきれない欲望、周囲からの圧力によって、少しずつ、だが確実に落ちていく。

・終盤:最終的にどこまで地の底へ落ちたのか。そして「なぜ途中で止まれなかったのか(人間の業)」が、読者の心に重く残る。


◆ ◆ ◆ 


まとめ


今回のポイントをまとめよう。


トビアスの20のマスター・プロットの利点は、似ている話の決定的な違いを超明確に言語化していることにある。


・ゴールが大事な「探求」と、体験が大事な「冒険」。

・誰かを助けに行く「救出」と、自分が逃げる「脱出」。

・身体が変わる「変身」と、内面が変わる「変容」と、大人になる「成熟」。

・王道の「愛」と、壁を楽しむ「禁じられた愛」。

・底辺から這い上がる「上昇」と、絶頂から転げ落ちる「下降」。


主軸やりたいことがわかれば、序盤で読者に立てるべき「お約束」も、中盤で膨らませるべき「見どころ(試練)」も、終盤で回収すべき「感情の着地点」も、自動的に見えてくる。


世界観の細部や、キャラクターの奇抜な設定を盛る前に、まず主人公の行動の型を見よう。


今回は以上だ、解散!

【参考】

Ronald B. B. Tobias, 20 Master Plots

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