おまけーエッセイの構成(3部構成/起承転結/5段落エッセイ/IMRAD)
やあ(´・ω・`)
ようこそ、番外編「エッセイの構成」へ。
これまで俺たちは、ひたすらフィクション(物語)の構造を解剖してきた。英雄の旅だの、15ビートだの、プロップの機能だのとな。
だが、Web小説サイト(なろうやカクヨム、note等)を見渡すと、意外と人気のあるジャンルがあることに気づくはずだ。
そう、「エッセイ」だ。この連載自体もエッセイ(創作論)のジャンルに属している。
「小説の書き方はわかったけど、活動報告やブログ、あるいは日常のちょっとした愚痴を書くとき、いつも話がとっ散らかってしまう」
「レビューや考察記事を書いても、誰にも最後まで読まれない。いいねがつかない」
そんな悩みはないか?
どんなジャンルであろうと構成は必要だ。骨格のない文章は、主張がとっ散らかってふにゃふにゃになってしまう。
ということで今回は、エッセイの構成について語ろう。
実は、エッセイの型を知ることは、日本と海外の物語構造の違いや民族性の違いを深く理解することにも繋がる。論理で殴るか、情緒で包むか。君の「伝えたいこと」に合わせて、最強の武器(型)を選べるようになろうぜ。
◆ ◇ ◇ ◇
1. エッセイとは何か?
エッセイ(随筆)とは、筆者の体験や知識をもとに、そこから得た感情や思想を自由な形式で書いた散文のことだ。
自由な形式と言っても、本当に思いつくままに垂れ流していいのは、君がすでに熱狂的なファンを抱えるアイドルか、歴史に名を残す文豪だけだ。無名の人間が書く文章を赤の他人に読ませるためには、読者を迷わせないための論理の道筋が必要になる。
エッセイの構成には、大きく分けて「欧米型(直線的・課題解決型)」と「日本型(曲線的・感覚型)」がある。何を書きたいか、読者にどう感じてほしいかによって、以下の4つの型を使い分けろ。
- 3部構成(シンプルに伝えたい時)
- 起承転結(情緒で包みたい時)
- 5段落エッセイ(論理でぶん殴りたい時)
- IMRAD(知的好奇心を満たしたい時)
一つずつ、その機能と使いどころを見ていこう。
◆ ◆ ◇ ◇
2. エッセイの構成と使い分け
■課題解決型:3部構成(序論、本論、結論)
まずは基本中の基本だ。欧米の文章構成の王道であり、アリストテレスの時代から続く「始め・中・終わり」の論理展開だ。
三幕構成は課題解決型の構成といったな。それをエッセイに使うことも可能だ。
1.序論(Introduction):「これから何について話すか」「私の主張は何か」を最初に叩きつける。
2.本論(Body):序論で述べた主張の「理由」や「具体例」を並べて説得する。
3.結論(Conclusion):本論をまとめ、「だから私の主張は正しい」と再度強調し、読者に何らかの行動や気づきを促す。
物語調にするときは、プロットポイント(主張の切り替わり)やミッドポイント(視点の逆転)、ピンチポイント(反論への対応)を意識して構成を考えると、読んでいて劇的に楽しいエッセイができる。
【いつ使うべきか】
何かを「主張したい」「説得したい」「解決したい」時に使う。
例えば、「なぜ『三幕構成』が最強なのか」を語るエッセイなら、この型が一番伝わりやすい。読者が迷子にならない、「何の話か」「結局どうすればいいか」が明確だから。
■感覚型:起承転結
日本の国語教育の親玉にして、世界的に見ると極めて特異な構成、起承転結だ。
これは元々、中国の漢詩(絶句)の構成法だ。論理的な説得よりも、情緒と余韻を生み出すことに特化している。
1.起:話題の提示。(例:最近、猫を飼い始めた。)
2.承:話題の展開。(例:猫は可愛いが、夜中に走り回って困る。)
3.転:視点や場面の飛躍。(例:そういえば、昔の恋人も夜中に突然電話してくるタイプだったな。)
4.結:全体の収束、余韻。(例:振り回されるのは疲れるが、案外そういう存在が愛おしいのかもしれない。)
強みは、「結論を急がない」ことが価値になる点だ。役に立つより沁みるを狙える。日本語圏の読者が好む行間や余白と最高に相性がいい。
欧米の論理学から見ると、この「転」は「は? なんでいきなり恋人の話になったの? 論理が破綻してるぞ!」と大ブーイングを食らう。欧米の論文やビジネス文書で起承転結を使うと評価されにくいのはこのためだ。
だが、エッセイ(読み物)としては、この「転」こそが最高のエンタメになる。
直線的に結論に向かうのではなく、途中で寄り道をして、全く違う視点から物事を捉え直し、ふんわりと着地する。明確なオチが必要な場合や、特に白黒つける結論を出す必要がない日常の出来事に最適だ。
【いつ使うべきか】
読者に「共感してほしい」「ほっこりさせたい」「エモい気分にさせたい」時に使う。
日常のちょっとした気づきや、思い出話などを語る時、日本人はこの構成に圧倒的な心地よさを感じるんだ。
■欧米型:5段落エッセイ(Five-paragraph essay)
これは「3幕構成(序論・本論・結論)」をさらに強力に、そして実戦的に拡張した型だ。
アメリカやイギリスの学生が、学校の授業でそれこそ血反吐を吐くほど徹底的に叩き込まれる英語圏の最強フォーマットだ。TOEFLなどの英語エッセイ試験は、この型が練習用の定番で試験でも通りやすい。
構造は極めて機械的で美しい。
・第1段落:序論(Introduction)
フック(読者の興味を惹く文)から入り、最後に「主題文=私の主張はこれだ!」をバシッと置く。
・第2段落:本論1(Body 1)
主張を裏付ける「1つ目の根拠(一番強い理由)」と具体例。
・第3段落:本論2(Body 2)
主張を裏付ける「2つ目の根拠」と具体例。
・第4段落:本論3(Body 3)
主張を裏付ける「3つ目の根拠(あるいは反論への反論)」と具体例。
・第5段落:結論(Conclusion)
序論の主題文を別の言葉で言い換え、3つの根拠を要約し、強いメッセージを残して締める。
例えば、「なぜ『きのこの山』は『たけのこの里』より優れているか」というエッセイを書くとする。
【序論】「きのこの山こそが至高のお菓子である」と宣言する。
【本論1】チョコとクラッカーの分離という食感のギミックの秀逸さ。
【本論2】チョコが手につかないという機能的で衛生的な構造。
【本論3】たけのこ派の「クッキー生地の甘さ」への反論(あれは甘すぎる)。
【結論】「ゆえに、機能と味覚の両面において、きのこの山こそが覇権を握るべきである」と締める。
【いつ使うべきか】
「論破したい」「レビューで作品の魅力を論理的に語りたい」「自分の考察の正しさを証明したい」時に使う。
圧倒的な「説得力」を生み出す装甲車のようなフォーマットだ。これを使えば、どんなトンデモ理論でも、一見「それっぽく」聞こえさせる魔力がある。
■論文型:IMRAD
最後は、科学論文や医学論文の世界で絶対的なスタンダードとなっている「IMRAD」だ。目的は再現可能性と検証可能性。だから順番がはっきりと固定されている。
IMRADとは、以下の頭文字をとったものだ。
・I(Introduction:導入)
何を疑問に思い、なぜそれを調べよう(やろう)と思ったか。「研究の動機」だ。
・M(Materials and methods:方法)
どのような材料を使い、どんな方法で検証・実験したか。
・R(Results:結果)
実験の結果、何が起きたか。事実だけを客観的に述べる。
・A(And)
ただの接続詞だ。(おそらくIMRDだとゴロが悪かったのだろう)
・D(Discussion:考察)
その結果から何が言えるか。自分の解釈や、次に繋がる課題は何か。
この型の最大の強みは、信用が作れることだ。
あなたが調査日記、統計、分析をエッセイ化するとき、IMRADは最強の武器になる。特にM(方法)が明記されていると、読者は「なるほど、ちゃんと調べたんだな」と信じる理由を持てる。
【いつ使うべきか】
検証系エッセイ、実験・挑戦のレポート、ハウツー記事を書く時に使う。
例:タイトル「1ヶ月間、毎日なろうのテンプレを書き続けたらPVはどうなるのか検証してみた
I(導入):なろうのテンプレって本当に効果あるの? 疑問に思ったから試すわ。
M(方法):1ヶ月間、毎日違うテンプレで第1話を投稿する。テンプレ抜きの話も比較のため投稿する。
R(結果):PVの推移データはこれだ。テンプレが読まれている。テンプレ抜きの話はあまり読まれなかった。
D(考察):やっぱり「追放ざまぁ」の初速は異常だった。ただ、長期的な読者定着には〇〇が必要かもしれない。
このIMRADの型に乗せるだけで、ただのやってみた日記が、知的好奇心を満たす有益なコンテンツへと劇的に進化する。
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3. 欧米型と日本型の構成の使い分け
【欧米型(3部構成・5段落エッセイ)】
欧米のフォーマットは、常に「直線的」だ。
序論(目的)→本論(闘争)→結論(獲得)。
これは、獲物を見つけ、最短距離で槍を投げ、仕留めて持ち帰るという「狩猟民族」のロジックだ。この世界では、自ら主張し、獲物を狩らなければ生きられない。
だからハリウッド映画の「英雄の旅」も、トゥルービーの「22段階」も、常に「明確な目的(Want)」と「障害(敵)」の闘争で構成されている。彼らのエッセイに「転(無関係な寄り道)」は許されない。獲物を見失うからだ。
【日本型(起承転結)】
一方、日本のフォーマットは「曲線的・円環的」だ。
春に種をまき(起)、夏に育て(承)、秋に台風が来て状況が変わり(転)、冬に収穫を受け入れる(結)。
大自然の移り変わりは、人間の意志(目的)ではどうにもならない。だから「葛藤して敵を倒す」ことよりも、「変化を受け入れ、調和し、情緒を味わう」ことが読み手の期待として根付きやすい。
だから日本の日常系エッセイや、スローライフ系のWeb小説は、強烈な目的がなくても「起承転結」のリズムだけで心地よく読めてしまうのだ。
君が「バチバチのバトルや論理的なエッセイ」を書きたいなら欧米の型を使え。
「エモい日常や、心温まるエッセイ」を書きたいなら起承転結の型を使え。
構成とは、単なる枠じゃない。何千年と培われてきた人間の癖なんだ。
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まとめ
エッセイにも、物語と同じように「読者の脳をハッキングするための型」が存在する。目的によって武器を持ち替えろ。
・3部構成:シンプルに主張を届けたい時。
・起承転結:寄り道の面白さと余韻で共感させたい時。
・5段落エッセイ:圧倒的な論理で説得・論破したい時。
・IMRAD:検証・やってみた系で知的好奇心を満たしたい時。
君が次に活動報告やレビュー、あるいはエッセイを書くとき、書き出す前に「これはどの型で書くか?」を1秒だけ考えてくれ。
「今回は自分の考察をぶつけたいから、5段落エッセイでいこう。まずは主題文を決めなきゃな」
そう意識した瞬間、君の文章はただの独り言から読まれるエンタメへと進化する。
今回は以上だ。解散!




