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8 追手か味方かわからないので逃げます

少し前、

ティナ達より先に下山途中のジェド、リリカ、ファニー達。

目の前には思いもかけない騎士達がいた。


「フェルド!」

近衛騎士団の副団長のフェルドが、かなりの精鋭を連れ跪いた。


「殿下、お迎えにあがりました」

「なぜ、ここが」

「大公殿下のご命令で、一刻も早くお連れせよと」

「まさか」

「いえ、小康状態を保っておられますが、ヴァレリアで少々問題が」

「伯父上の?」

フェルドが頷く。


「それで、帰国を早めていただきたいと」

「そうか、父上が、ありがたい」


公国から迎えの近衛騎士団が来ていた。


「して殿下、途中で黒装束の一団を見かけたのですが、鉢合わせされてないのですな」

「誰にも会わなかったが、その集団はどっちへ行った」

「転移魔法が使えるようで、我々より先に別ルートで登っていったかと」

「……」

「殿下?」

「まさか、フェルド、ファニーとリリカを頼む」

「殿下、どちらへ」

「上にブリタ達がいる」

「では同行を」

「いや、このままファニー達を連れて先に麓へ」

「しかし」

「もし危なくなったら魔法弾を打ちあげる、その時は来てくれ」

「では、二人おつけしますので」


フェルドが部下に指示をしているのを視界端に入れながら、ジェドは、また上へと急いだ。



山の中腹では、睨み合いが続いている。

私は護身用の短剣を自分の首に突きつけていた。


「セレスティーナ様、剣をおろしてくだされ、とにかくご無事でお連れせよと、我々は命を受けております」


「こっちに来ないで!近寄ったら死にます!もう失うものはないのですから」

「ですから、帰国なさって陛下と」

恰幅ある堂々とした副騎士団長のベンが宥めてくるけれど、なんで雁首並べて、私を追ってくるの?


「黙りなさい、ベン!副騎士団長に副魔法師団長、あなた達が揃って来ている事自体が、おかしいのです。わたくしごときにっ」


「お怒りはごもっとも」

「何も怒ってはおりません」


「セレスティーナ様、ここでは埒があきませんので、ご帰国後に」

副魔法師団長のラベルまで。

「ラベルももう何も言わないで!あの阿呆のいる国なんて、同じ空気を吸うなんて、もう無理ですのよ」


私が叫んだ時だった。

「ティナ、無事かっ」

ジェド様が私達の間に割って入る。必死で駆けつけたのがわかる。息が荒い。


「ジェド様、なぜ。先に行ってたはずなのに」

「ティナ達を置いていけるわけがないだろう!」

ジェド様の深緑の瞳が、揺れている。


「貴様ら、何者だ」

ジェド様が、ベン達に向けて剣を抜く。


「知りません!こんな人達知りません」

追手か迎えかわからないから、知らんぷりを決め込む。

ブリタが変な顔をしているけど、今は説明できない。


「引かぬなら、剣を抜け!」

あ、どうしよう。咄嗟に知らないって言ってしまったけれど。

ベンやラベルは悪くない。悪いのはあのアホ王太子。


ベンは剣を抜いてないし、ラベルも魔法を出そうとはしてない。

どうしよう。

ああ、どうしよう。


「セレステ………」

ベンが私の名前を呼ぶ前に、私は詠唱を始める。


「この世の理を示せ!あなた達、近づいたら巻き込まれますわよ、だから下がりなさい!」


ベン達が少し下がる。

私の魔力量を知っているから本気で後退している。私の全力魔法なら、ラベルより私の方が強い。

だからラベルも手が出せない、はず?


「ジェド様、転移魔法を使います。ヴェルディアへ飛べるけれど、今の魔力では二人が限界なの、どうしたら」

小声でジェド様に説明する。


「わかった」

ジェド様は私に頷き、パックに指示している。


「パック、下にフェルド達が来ている。ファニーとリリカを任せて下山し始めている。私はティナと先にヴェルディアへ転移する、ブリタを頼めるか。ティナが魔法を使う前に、ここを抜け出せ」


「わかった。ブリタ行こう」

パックとブリタがこちらを見て片手をあげて、ベン達から離れて下山していく。これで大丈夫。


「ジェド様、私が新しき扉と言ったら、行き先を言ってください。わかりやすい場所がいいのですが、公園とか、修道院とか。それと、魔法陣が起動したら」

「この前のように魔力を足せばいいか」

「ええ、ジェド様の行き先を感知するために」

「行き先は案ずるな」


ジェド様は理解が早い。一瞬で言いたい事をわかってくれる。

こんな人がこの世の中にはたくさんいるのね。

ただちょっと物言いが横柄になってる?

そんなことより。


《この世の理を示せ、森羅万象の世界より新しき扉を開け》

七色の光が舞い魔法陣が起動する。

私がジェド様を見ると、ジェド様が私の手を優しく包んで言った。


《ヴェルディア公国、辺境ヴェルド城、公子執務室へ!》


「セレスティーナ様っ、ヴァレリアにお戻りをっ」

ベンとラベルの声が聞こえるけど、それより。


今ジェド様、何って言ったの?ヴェルドジョーって、ヴェルド城?


魔法陣が竜巻のように周り七色に粉が辺り一面に飛んでいる。



——ジェドは、転移する寸前に、聞こえた名前に首を傾げたまま転移した。

セレスティーナ、セレスティーナ、ヴァレリア?

確か、どこかで聞いた名前だったか。——



あっという間に二人の姿は消え、七色の煌めく粉も霧散した。


「セレスティーナ様」

ラベルの声だけが聞こえた気がした。



不定期更新ですが、完結まで更新していきます。

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