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婚約破棄されたコツコツ令嬢の顛末記〜もうどうでもいいですけど  作者: カンテラ澪


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7 追手に囲まれたので逃げます

◇

少し前、

ティナ達より先に下山途中のジェド、リリカ、ファニー達。

目の前には思いもかけない騎士達がいた。


「フェルド!」

近衛騎士団の副団長のフェルドが、かなりの精鋭を連れ跪いた。


「殿下、お迎えにあがりました」

「なぜ、ここが」

「大公殿下のご命令で、一刻も早くお連れせよと」

「まさか」

「いえ、小康状態を保っておられますが、ヴァレリアで少々問題が」

「伯父上の?」

フェルドが頷く。


「それで、帰国を早めていただきたいと」

「そうか、父上が、ありがたい」


公国から迎えの近衛騎士団が来ていた。


「して殿下、途中で黒装束の一団を見かけたのですが、鉢合わせされてないのですな」

「誰にも会わなかったが、その集団はどっちへ行った」

「転移魔法が使えるようで、我々より先に別ルートで登っていったかと」

「……」

「殿下?」

「まさか、フェルド、ファニーとリリカを頼む」

「殿下、どちらへ」

「上にブリタ達がいる」

「では同行を」

「いや、このままファニー達を連れて先に麓へ」

「しかし」

「もし危なくなったら魔法弾を打ちあげる、その時は来てくれ」

「では、二人おつけしますので」


フェルドが部下に指示をしているのを視界端に入れながら、ジェドは、また上へと急いだ。



◇

山の中腹では、睨み合いが続いている。

私は護身用の短剣を自分の首に突きつけていた。


「セレスティーナ様、剣をおろしてくだされ、とにかくご無事でお連れせよと、我々は命を受けております」


「こっちに来ないで!近寄ったら死にます!もう失うものはないのですから」

「ですから、帰国なさって陛下と」

恰幅ある堂々とした副騎士団長のベンが宥めてくるけれど、なんで雁首並べて、私を追ってくるの?


「黙りなさい、ベン!副騎士団長に副魔法師団長、あなた達が揃って来ている事自体が、おかしいのです。わたくしごときにっ」


「お怒りはごもっとも」

「何も怒ってはおりません」


「セレスティーナ様、ここでは埒があきませんので、ご帰国後に」

副魔法師団長のラベルまで。

「ラベルももう何も言わないで!あの阿呆のいる国なんて、同じ空気を吸うなんて、もう無理ですのよ」


私が叫んだ時だった。

「ティナ、無事かっ」

ジェド様が私達の間に割って入る。必死で駆けつけたのがわかる。息が荒い。


「ジェド様、なぜ。先に行ってたはずなのに」

「ティナ達を置いていけるわけがないだろう!」

ジェド様の深緑の瞳が、揺れている。


「貴様ら、何者だ」

ジェド様が、ベン達に向けて剣を抜く。


「知りません!こんな人達知りません」

追手か迎えかわからないから、知らんぷりを決め込む。

ブリタが変な顔をしているけど、今は説明できない。


「引かぬなら、剣を抜け!」

あ、どうしよう。咄嗟に知らないって言ってしまったけれど。

ベンやラベルは悪くない。悪いのはあのアホ王太子。


ベンは剣を抜いてないし、ラベルも魔法を出そうとはしてない。

どうしよう。

ああ、どうしよう。


「セレステ………」

ベンが私の名前を呼ぶ前に、私は詠唱を始める。


「この世の理を示せ!あなた達、近づいたら巻き込まれますわよ、だから下がりなさい!」


ベン達が少し下がる。

私の魔力量を知っているから本気で後退している。私の全力魔法なら、ラベルより私の方が強い。

だからラベルも手が出せない、はず?


「ジェド様、転移魔法を使います。ヴェルディアへ飛べるけれど、今の魔力では二人が限界なの、どうしたら」

小声でジェド様に説明する。


「わかった」

ジェド様は私に頷き、パックに指示している。


「パック、下にフェルド達が来ている。ファニーとリリカを任せて下山し始めている。私はティナと先にヴェルディアへ転移する、ブリタを頼めるか。ティナが魔法を使う前に、ここを抜け出せ」


「わかった。ブリタ行こう」

パックとブリタがこちらを見て片手をあげて、ベン達から離れて下山していく。これで大丈夫。


「ジェド様、私が新しき扉と言ったら、行き先を言ってください。わかりやすい場所がいいのですが、公園とか、修道院とか。それと、魔法陣が起動したら」

「この前のように魔力を足せばいいか」

「ええ、ジェド様の行き先を感知するために」

「行き先は案ずるな」


ジェド様は理解が早い。一瞬で言いたい事をわかってくれる。

こんな人がこの世の中にはたくさんいるのね。

ただちょっと物言いが横柄になってる?

そんなことより。


《この世の理を示せ、森羅万象の世界より新しき扉を開け》

七色の光が舞い魔法陣が起動する。

私がジェド様を見ると、ジェド様が私の手を優しく包んで言った。


《ヴェルディア公国、辺境ヴェルド城、公子執務室へ!》


「セレスティーナ様っ、ヴァレリアにお戻りをっ」

ベンとラベルの声が聞こえるけど、それより。


今ジェド様、何って言ったの?ヴェルドジョーって、ヴェルド城?


魔法陣が竜巻のように周り七色に粉が辺り一面に飛んでいる。



◇

——ジェドは、転移する寸前に、聞こえた名前に首を傾げたまま転移した。

セレスティーナ、セレスティーナ、ヴァレリア?

確か、どこかで聞いた名前だったか。——



あっという間に二人の姿は消え、七色の煌めく粉も霧散した。


「セレスティーナ様」

ラベルの声だけが聞こえた気がした。



不定期更新ですが、完結まで更新していきます。

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