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婚約破棄されたコツコツ令嬢の顛末記〜もうどうでもいいですけど  作者: カンテラ澪


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10/12

10 逃げ切った?

ドスンッ!

痛っ、また落っこちたわ。

転移魔法を使うと、どうして尻もちをついちゃうのかしらね。


そんなことはどうでもいいわ、で、ここどこ?

周りに人がいない。誰も歩いていない。山と麓の間に来たみたい。


もう一度まわりをゆっくりと見回してみる。


あ、あの小屋から煙が上がってるから、尋ねてみるしかない。

ヒムシャムへの旅で、かなりこういう景色には慣れてきた。


ふと思う、今日は一人なのね。あの時は皆がいた、ジェド様も。

ティナ、感慨にふけってはダメ。

これから一人で生きていくのだから。



近くに来ると煙が細くなってきている。

意を決して扉を叩いて声をかけた。


「あの、ちょっとよろしいでしょうか」

「何だい、押し売りお断りだよ」

「あのー」


前掛けで手を拭きながら出てきたのは、ぽっちゃりおばさんだ。


「あれまあ、えらい別嬪さんだね、まさかお貴族様、まさかねぇ」

「お貴族様ではないですよ。冒険者をしていて」

「そうかい、で、迷ったか、仲間とはぐれたのかい」

上手く話ができそうね。


「そうなんです、で、街に冒険者ギルドはありますか」

「ああ、あるよ」

良かった。ギルドがある。ついでに服を替えたいし。


「あの、ついでに街に古着屋はありますか」

「古着屋はあるけど、何か買うのかい」

「いえ、ちょっと事情があって、この格好では」


ちらっとローブを捲って見せたら、おばさんが目を丸くした。


「あんた、やっぱりお貴族様かい」

「違うんです、影武者の依頼を受けたら、変な人たちに追いかけられちゃって」

おばさん、ごめんなさい、嘘ばっかり。心の中で手を合わせながら謝っておく。


「そりゃ大変だね」

「お代は払うので、おばさんの服と取り替えてもらえませんか」

「いやいや、そんな立派なドレスなんてさ、私のお古で良ければあげるよ」


そこで私は、親切なぽっちゃりおばさんの古い服をもらって、着替えさせてもらった。

結い上げた髪も下ろして、一つに束ねるのを手伝ってくれた。

王城を飛び出してから、親切な人ばかりに出会ってる気がする。


おばさんは、ドレスもお金もいらない。娘の年頃に似ている私が、ただ心配だから、落ち着いたら必ず会いに来ておくれと言ってくれた。

リムという街のフルテと言えばわかると。


そしてフルテおばさんが、街まで果物の甘露煮を納品に行くというので、ついでにロバの荷車に乗せてもらって、街まで送ってもらえた。

何回も「きっとまたおいでよ」と言われ、果物の甘露煮の瓶詰めを二つもらって別れた。


街はヴァレリアの王都ほどの規模ではないけれど、人の往来もあって賑わいもあり、教えてもらった冒険者ギルドはすぐにわかった。


ギルドに一歩入ると、一斉に冒険者たちに見られる。

目立ってる?毅然として周りを見ない。


「こんにちは」

女性の受付さんが笑顔で迎えてくれてホッとする。

ギルドカードを見せる。


「ティナさんね」

「はい、実は、黒装束の集団に追われているような気がするので、何とか見つからずに逃げたいんです。助けてもらえますか?」

「それは大変だわ!ティナさんはパーティに所属しているの?」


「今は一人です。先に落ち着く場所を決めたいと思っているのですが、その、追われてるような気がして」

「この街でいいなら、紹介できるわよ」

実はこの街が、どの国のどの街かわからない。

でも聞くに聞けない。

もうどうでもいい、行き当たりばったりでいいわ。


「ここは女性一人でも大丈夫かしら」

「もちろん、ヴェルディア自体が防衛の国だし、ここリムは魔導師に乱暴する者はいないわ。何かあったらすぐここに来てくれたらいいから」

「ありがとうございます」


良かったわ、ここはヴェルディア国内ね。

そして紹介されたのは、女性冒険者専用の安全な宿と修道院。

魔導師で治癒ができるのならと、修道院を勧められ、紹介状をもらって、地図も買って向かう。

ジェド様と初めて行った緩衝地帯のギルドで、ギルドカードを作ってもらって良かった。身分証明に困らないし、安心して修道院の門を叩いた。


大きな修道院だった。これだけの規模なら、ヴェルディア公国は修道院の保護にも力を入れているとよくわかる。

ヴァレリアの修道院は……私ったら駄目ね、もう帰らない場所のことを考えたりして。侯爵令嬢だったのはもう過去になったのよ。


修道院で、リムの冒険者ギルドから紹介されたと伝えると、院長室に通された。

「魔導師をしておりますティナと申します」


修道院長は、ギルドからの紹介書を見て微笑む。

「ここには色々な事情のある女性が集まって暮らしています。深くはお聞きしないので、安心なさって」


「ありがとうございます。何かお手伝いをしたいのですが」

「何か得意なことはあって?」

「はい、治癒魔法が少し使えます。それと読み書きができます」

「あら、それはありがたいわ。これからのことはまた明日から、ゆっくり考えましょう」


そして私は、しばらく修道院で過ごすことになった。


婚約破棄から、目まぐるしい日々だったけれど、ここまで来たわ。


ヴァレリアでのあの辛く大変だった日々が終わったのね。

小さなお部屋に、狭く固い寝台。

でも、私は自由。


「エヴァ、おやすみ」



完結まで頑張ります。

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