7.報われない
リーデックは私とお茶をした後、再び王宮へと戻って行った。
それから数日、深夜に帰宅はしているようだが、夜明け前には出立する為、私とは顔を合わせることはない。
(寂しい……。)
ついそう思ってしまうけれど、いつかこの侯爵家を離れる日がくれば、もうリーデックには会うことはなくなる。社交界に留まれば偶然会うこともあるかもしれないが、私はそのつもりはない。
(……社交界にいれば、リーデック様と誰かとの幸せを目にすることになってしまうもの。)
さすがに私は、そこまで強くいられる自信はない。
離婚して、その上再婚もしないつもりなんて、わがままだとわかっているが、両親に頼んで実家の領地で色々と手伝いをさせて貰いながら、静かに暮らしたいと思っている。
(だから、今のうちから慣れていかなきゃね。リーデック様に会えない毎日に……。)
そんな気持ちですれ違いの日々を過ごしていたある日、仕事をしていると、急いだ様子で執事のエドガーが部屋へ入ってきた。
「シャルルローズ様、リーデック様からのお手紙が王宮より届いております。」
「ありがとう。」
手紙を受け取るとすぐにペーパーナイフで開封して、便箋の文字に目を走らせる。
読みながら、「あぁ……っ。」と口元を手で抑えた。涙が滲む。
「…………お姉様が、無事に王宮に到着されたみたい。」
安堵の声を溢すと、エドガーと部屋の隅に控えていたナディアが「良かったですね!シャルルローズ様!!」と歓喜の声を上げた。
「ええ、ありがとう。ホッとしたわ。」
ナディアがハンカチを手渡してくれながら、問いかけてきた。
「面会は、すぐに出来るのですか?」
「そのことについては何も書かれてなかったわ。私が心配していると思って、取り急ぎ無事に到着したことだけを連絡くださったみたい。」
ハンカチで涙を拭いながら答えた。
忙しい中気遣ってくれたリーデックには、本当に感謝だ。
ナディアも目にいっぱい涙を溜めながら、嬉しそうに微笑んだ。
「早く、お会いできるといいですね。」
「そうね。お姉様のお元気な顔を見たいわ。」
その言葉は、心からの本心だ。
けれど……安堵と喜びと同時に、別の感情も込み上げてきてしまう。
(…………リーデック様は、もうお姉様と会われたのよね。)
久しぶりの姉との再会に、リーデックは何を思っただろうか……。
考えたくないのにその場面を想像してしまって、胸が苦しくなる。
(私もリーデック様も……本当に報われないわね。)
便箋に目を落として、リーデックが書いた文字をそっと指で撫でた。




