5.募る不安
公爵家のお茶会の日から、もう6日もリーデックは帰宅していない。
"しばらく仕事で帰れない。心配しないでくれ。"との短い手紙は届いていたが、これまではどんなに忙しくても毎日帰宅していたのに……。何か大変な事態が起きたのではないかとさすがに心配になってきた。
(……お父様は、きっとご存知よね。)
宰相をしている父に聞いてみようかと、実家に戻ってみたものの、父もこの数日帰宅していないとのことだった。
「お父様にもリーデック様にも危険はないわ。だから心配しなくて大丈夫よ。」
母が優しく、微笑む。
けれどどことなく元気がない様子で、気になった。
「お母様は事情をご存知なのね?一体何があったの?」
「ごめんね、ルル。今はまだ、何も言えないの。」
("今は"って何?一体何があったの?)
ますます不安が募る。
夜も眠れなくなって、食事も喉を通らなくなっていく。
そんな日が続いて12日目に、ようやくリーデックが帰宅した。
疲れを滲ませながらも、「ただいま。」と優しい笑顔を向けてくれる。そのことに、ホッとする。
「お帰りなさいませ!リーデック様。ご無事で何よりです。」
「心配かけてしまい、すまなかった。急を要することで、そして極秘のことであったから、君に説明する時間を取ることができなかったんだ。」
「いいえ、謝らないで下さいませ。仕方がないことです。そんな中でしたのに、お手紙をくださったこと、ありがとうございました。」
「いや……、あれも素っ気ないものだった。本当にすまない。それで……ちゃんと話がしたいと思うのだが、これから時間をとれるだろうか?」
そう言って、なぜか目を逸らすリーデックに、胸がざわざわし始める。
(……やっぱり何かあるのね。とても嫌な…………予感。)
襲いかかってくる不安に、心が押し潰されてしまいそうだ。
けれどもそれをリーデックに決して悟られないように、「ええ。勿論です。」と、必死に笑顔を作った。




