10.通じ合う
リーデックから、やはりお茶に毒が混ぜられていたと報告を受けたのは、お茶会から三日後のことだった。
あれから王宮に泊まり込みで対応をしていたリーデックは、さすがに疲労が色濃く滲む。
「銀食器にも、反応しない毒だった。君が匂いのおかしさに気がつけなければ、取り返しがつかないことになっていたかもしれない。」
広く知られている一般的な毒は、銀食器を黒く変色させてしまうので、貴族家では多くが銀食器を使用している。王家も勿論だ。
今回も、ミューゼットは銀スプーンでお茶を混ぜていたが、確かに変色していなかった。
「そんな毒が……あるのですね。」
「あぁ。遠い外国では流通しているので存在は知っていたが、我が国に持ち込まれたのは初めてだ。」
「それで……一体誰が?」
「ミューゼット妃が連れてきた侍女のひとりを捕縛したよ。」
「そう……ですか。」
思った以上にミューゼットが危険な状況にあることを実感して、身体が震える。
リーデックは表情に怒りを滲ませる。
「………………どうやら君が持参したお茶に毒を混ぜることで、君に罪を擦りつけるつもりだったようだ。本当に腹立たしいっ。」
私に罪を被せようとしたのだろうということは、何となく予想していたことだったので、驚きはしなかった。
だが、リーデックが珍しくこんなに感情を露わに怒ってくれている。
(…………私の為に。)
嬉しくて、胸がじんわりと暖かくなる。
「……リーデック様に信じてもらえて、良かったです。」
「当たり前だろう!」
リーデック様の剣幕に、思わず目をぱちぱちとさせる。
そんな私の目を、リーデックはじっと見つめた。
「俺は君の夫だ。君がそんなことをする人ではないことはよくわかっているし、君とミューゼット妃の仲の良さもわかっている。」
「リーデック様……。」
リーデックが少し表情を和らげた。
「すまない。熱くなってしまったな。…………俺は君のことを心から信じてる。だから君も俺のことを信じて、また何か気がつくことがあればすぐに知らせて欲しい。」
「はい、わかりました。」
リーデックの役に立てるのなら。
ミューゼットを救うことになるのなら。
(私は、何だってするわ。)
強い覚悟をもってリーデックの目を見ると、「ありがとう。」とリーデックは優しく微笑んだ。
初めて夫婦として、心が通じ合えた気がした。




