第八話:朱に染まる手
静まり返った夕暮れの廃校。
その体育館跡に、ひとりの少女が座り込んでいた。
浅間 紫音。
細い指先は震え、膝の上の手には、過去の“記憶”がしがみついていた。
「……赦されない、私なんて……。」
その囁きに答えるように、足元の影が蠢く。
「赦されたいのか。ならば証明しろ。お前にふさわしい、贖いの方法を」
悪鬼がニヤリと微笑む。
夕焼けが校舎を真紅に染める。廃墟の中で紫音の影がうごめく。
悪鬼の気配が濃く、空気にざらついた瘴気が混じる。
「“ここ”だな。」
満流が先に体育館の扉を開けた。朽ちた木材のきしむ音と同時に、異様な気配が肌を刺す。
「少女……だな。だが、ただの憑依じゃない。」
後から来た輝夜が静かに目を細める。
「心の奥底に、赦されたいという“願い”がある。だからこそ、悪鬼はここまで深く……。」
体育館の中央。紫音は床に座り込み、両腕を抱いていた。足元には血のように濃い影─────!!
「どうして、あの時止められなかったの……!」
怒号のような自責。
悪鬼は紫音の記憶を呼び起こす。少女の叫び、男の倒れる音、冷たい刃の感触………。
「お前の罪は永遠だ。世界が忘れても、お前は忘れるな」
影が触手のように伸び、彼女を締め上げる。
満流が飛び込んだ。
「やめろッ!」
影の一部を斬り飛ばし、紫音の身体を引き戻し叫ぶ満流。
「十分だ、あんたはもう、誰よりも自分を罰してきた!」
紫音は涙をこぼしながら、満流に縋りついた。
「でも……私……また誰かを傷つけるかもしれない……。」
その言葉に、影がさらに暴走を始める。
「紫音さん………。」
輝夜が一歩踏み出す。
「あなたの“赦されたい”は、誰かを思っている証。だからこそ悪鬼はそれを食い物にしたの。」
その声に、紫音の目がはっきりと輝く。
影の中心に悪鬼が姿を現す。
「綺麗ごとを……! 人間など、ただ繰り返すだけの存在だ!」
「それでも私は、何度でも信じる!」
輝夜の影喰い刀が閃く。
悪鬼を貫いた一閃は、紫音の心の檻を砕いた。
全てが終わったあと、紫音は静かに立ち上がる。手のひらに残る震えを、満流がそっと包み込む。
「ありがとう……私、少しだけ、救われた気がする。」
「それで充分さ。」
輝夜は夕暮れの空を見上げながら、微笑んだ。
─────赦しとは、他者からでなく、自分の中に芽吹くもの─────
今夜もまた、一人の心が闇を超えた。
ご覧下さりありがとうございました。AIノベルです。いつもの作品と読み比べて頂くと面白いかもしれません。




