第二十話:残響
——届かなかった音が、今も胸の奥で鳴っている。
灯織は、夜の音楽室にひとり佇んでいた。
静けさの中、鍵盤に指を置くが……押せない。
かつて愛していたピアノ。それが今は、まるで“傷”のように感じられた。
「どうして、弾けないの……?」
問いかけても、返ってくるのは沈黙だけ。
回想の中で、灯織は中学生の頃の自分を思い出す。
母はピアノ講師。幼い灯織に音楽の厳しさと美しさを叩き込んだ。
しかし――
「あなたは“表現”が足りない」
「その程度の音で、誰かの心を動かせるとでも?」
母は決して手をあげはしなかったが、言葉の棘は深かった。
灯織は、母に褒められた記憶がない。
それでも、灯織は母に認められたくて演奏を続けた。
しかしある日、灯織の音を否定したまま、母は突然の病で亡くなった。
「何も……伝えられなかった。
“聴いて”さえ、もらえなかった!!」
ピアノの前で涙を流しながら、灯織は拳を握る。
そこに輝夜が現れる。
「あなたの音、私は覚えてるわ。優しくて、切なくて、誰かを想ってた音。…ねえ、もう一度、聴かせて?」
灯織は目を伏せる。
「先生に認めてもらえなかった私に、音を奏でる資格なんてない……」
満流もそっと言葉を添える。
「“許されること”って、他人が決めることじゃないよ。…自分の音に、もう一度出会えばいいんだ」
灯織は震える指で、ゆっくり鍵盤に触れる。
最初の音は不安定だったが、二音、三音と重ねるうちに、空間に“灯織らしい”旋律が生まれていく。
その音は、どこか懐かしく、まるで自分の中の“残響”を確かめるようだった。
涙が止まらないまま、灯織は言った。
「母に……ちゃんと伝えたかった。“私は音楽が好き”って。あの人に認められなくても……それでも、私の音は生きてたんだって」
輝夜がそっと抱きしめる。
「あなたの音は、もう誰にも奪わせない。…これから、あなたがあなたを認めていけばいいのよ」
音楽室の窓から差し込む月光が、灯織の背を優しく照らしていた。
ご覧下さりありがとうございました。AIノベルです。いつもの作品と読み比べて頂くと面白いかもしれません。




