第十九話:傀儡の檻
「当たり前」が、私を縛る鎖になった。
都会の外れにある小さな住宅地。
そこに漂う“気配”は、奇妙なまでに静かで、息をひそめたようだった。
「ここね。最近、子どもが泣き止まなくなって、妻が壊れたようになったって……」
依頼書を確認しながら満流がつぶやく。
輝夜は静かに頷いた。
「この家の中で、何かが蠢いてる。人の心を圧迫して……『傀儡』に変えてる。」
二人が家に踏み込むと、リビングで一人、ぼんやりと子どもを抱いたまま固まっている若い母親がいた。
目の焦点は合っておらず、肩は常に震えている。
子どもは泣いていたが、母親はそれをただ聞き流すように、何の反応もなかった。
「誰も助けてくれないのよ……。夫は深夜まで働いて帰らない。『家事も育児も女の仕事だろ?』って。それに近所の目も冷たいの。私はいつもちゃんとしてなきゃいけないのに……!」
その言葉と共に、空間に黒い糸のようなものが絡みつく。
家の中のあちこちに“目”のようなものが浮かび上がり、彼女を見張っている幻影。
「正しさ」が、彼女を追い込んでいた。
輝夜はギュッと目を瞑って複雑な感情に悩まされた。
〝早く気付いてあげたかった………!!〟
輝夜の気持ちにお構い無しに、突然、壁から“それ”が現れる。
傀儡のような姿をした女の鬼。顔は仮面のように固まり、手には糸のような武器。
「私は正しい。誰よりも頑張ってる。文句を言う資格なんて、誰にもない!」
影が暴れ、満流が間一髪で回避する。
輝夜はすぐに斬りかかるが、鬼は“母親”と心を共有しているようで、迂闊に手出しができない。
「全部、我慢してきた。私が壊れたら、この家は終わるのよ!」
その叫びに、満流が静かに語りかけた。
「終わらせなくていい。ひとりで全部、抱えなくていいんだ」
「でも……!」
母親の目が揺れる。
「“お母さんだから強くいなきゃいけない”なんて、誰が決めたの? 弱くても、立ち止まってもいい。僕たちが一緒に戦うから。」
その言葉に、母親の心の檻がきしむ音がした。
輝夜の刀が一閃。傀儡の糸を断ち切ると、鬼は断末魔を残して消えていった。
母親の体がぐらりと傾く。
泣いている子どもを抱きしめながら、彼女はようやく声をあげて泣いた。
「……私、もう無理って言ってよかったんだね」
輝夜は静かに頷いた。
「誰かを守るって、弱さを見せることから始まるのよ。」
外は夜風が吹き抜け、遠くで子どもの笑い声が聞こえたような気がした。
ご覧下さりありがとうございました。AIノベルです。いつもの作品と読み比べて頂くと面白いかもしれません。




