第十四話:封じられた旋律
その夜、音楽室には誰もいないはずだった。だが、風もないのに譜面がめくれる。
──ギィ……ギィィ……。
古びたバイオリンが勝手に軋む音を立てる。窓の外には満月。だがその光は、音楽室の中では異様に青白く揺らめいていた。
「また……始まったか。」
天井裏から音楽室を覗く影があった。それは、長らく封じられていたものだった。
翌朝。輝夜と満流が校舎裏に立っていた。先日の戦いから数日、しばしの静けさがあったものの、学校周辺で異変が続いていた。
「この感覚……懐かしいというか、歪んでる。」
輝夜が感じ取ったのは、過去に強い情念を残した気配。
「音楽室だな。行くぞ。」
中に入ると、薄暗い室内の空気は冷たく湿っていた。壁に飾られた写真。そこには、少女と指導教員らしき男の笑顔があった。
「……この子。」
満流が写真を見つめる。名前のプレートには“結音”とあった。
ふいに、ピアノの鍵盤が鳴る。
──ポロロン……ポロン……。
誰も触れていないはずのグランドピアノ。その上に現れたのは、透けるような少女の影。
「……やっぱり、ここにいたのか。」
輝夜が歩み出る。だが少女の影は振り向かない。
「私の音は、誰にも届かなかった。先生に……裏切られた。全部、壊れてしまえばよかったのに。」
怨念が波のように広がり、影が部屋を覆う。
その瞬間、床の下から巨大な影が立ち上がる。バイオリンと少女の身体が融合した異形の悪鬼だった。
「うわ……っ!」
影の弓が音速で振るわれ、床が砕ける。満流が素早く符を投げ、破裂音が室内に鳴り響く。
「演奏なんて、もうしたくないのに……!」
少女の声は、悪鬼のうなりと交錯しながら輝夜の胸を貫く。
「それでも、あなたは——聞かせたかったんでしょ?」
輝夜が踏み込む。刀を抜き、一閃。
「その旋律が誰かに届くって、信じてたからこそ、悲しいんだよね……!」
悪鬼の体がゆっくりと崩れていく。
そこに残ったのは、小さな手紙と、演奏会のチケット。
「先生に渡す前に、事故に遭ったのか……。」
満流がそっと拾い上げる。
「この子、ちゃんと伝えたかったんだ。音楽を、想いを。」
輝夜は静かに頷いた。
窓の外、朝の光が音楽室を照らしていた。
ご覧下さりありがとうございました。AIノベルです。いつもの作品と読み比べて頂くと面白いかもしれません。




