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吸血鬼ですが、何か? 第7部 紛争編  作者: とみなが けい
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俺達は狂った奴らを………制圧した…奴らは狂っていた…。

目の前に残っているアレクニドたちは明らかに勢いが無くなった。

俺達は残ったサブマシンガンで狙いを点けながら撃ち倒し、日本刀やサーベル、ピストルで殺しながら広場を制圧した。

床の下から広場に上がって来る侵入口は中心に1つ、それを取り囲むように4つあり、跳ね上げられた床の下はスロープが続いていた。

中心にあった侵入口は4体の蜘蛛の化け物の死骸から垂れ流す酸でスロープが解け落ちていた。


「倒れていても油断するな!

 止めを刺せ!

 奴らはこの下に本陣があるぞ!

 第4班、これ以上敵を上がってこさせるな!侵入口を押さえろ!」


リリーは矢継ぎ早に命令を出し、比較的残弾を持っている第4班に近くの侵入口を押さえさせた。


「まだ降りるなよ!

 上がってくる奴がいたら撃ち殺せ!

 支援班、処理班は負傷者の後送と弾薬の補充を急げ!」


慌ただしく支援班と処理班が負傷者の処置と後送、弾薬の補充に駆け回っている。

弾薬袋を抱えた支援班員が駆け回り、サブマシンガンを持つ者に誰彼問わず予備のマガジンを渡していた。


俺の前にも支援班員が走って来た。


「渡せるのはこれが限度だ!」


彼は2本の予備マガジンを俺の手に押し付けて別の者の方に走って行った。

俺はサブマシンガンのマガジンを抜いた。

3発しか残っていなかった。

新しいマガジンをサブマシンガンに叩き込み予備のマガジンをポウチに入れた。

広場はほぼ制圧された。

重傷を負い倒れている敵に降伏を呼び掛けても抵抗をしてくるので即座に射殺をした

倒れて動かなくなった後も頭か胸を完全に粉砕するまで射撃を続けた。

その時、侵入口から突撃銃の射撃音が響き渡った。

俺達のUMPサブマシンガンやFALバトルライフルとは明らかに違う音だった。

侵入口を押さえていた第4班のメンバーの1人が銃撃を受けて倒れた。


「地下にいる奴らはアサルトライフルを持っているぞ!」

「手榴弾!

 一斉に投げ込め!

 爆破と同時に侵入しろ!」


エレファントガンを死体の中から拾い上げたリリーが命令を下した。

今まで乱戦の接近戦で使い道が無かった手榴弾をスコルピオのメンバーが『グレネード!』と警告の声をあげながら地下に投げ込んだ。

爆発音が轟き、まだ硝煙が薄れていない中をクラがサブマシンガンを構えて真っ先に飛び込んだ。


「クラ!死に急ぐなよ!」


リリーが叫びながら後を追い、俺達もすぐに続いて床の下に突入した。

やはり上の広場と同じくらい広い空間が広がっていた。

まだ敵はいたが、先ほどの戦闘でほとんどを失ったようであまり数はいなかった。

蜘蛛の化け物も数匹残っていて厄介ではあった。

地下にいる奴らは戦闘服では無く、どこかで見たような裾が長い白い上下の服を着ていた。

上の広場と違って壁沿いにドアが無い出入口が並んでいた。

ベッドが並んでいる部屋やトイレ、キッチンなど生活に必要な部屋が並んでいる。

俺達はスロープを降り切って敵の残党と撃ち合いになった。

今までの敵と違い、銃火器をある程度持っていた。

狩猟用のライフルやショットガンと違い、AK47に見えるアサルトライフルを撃ってきている。


「はなちゃん!

 奴は!あの5人組はどこにいる!」

「あそこじゃの!

 左前方!あそこにいるじゃの!

 蜘蛛の化け物が入り口を塞ごうとしているじゃの!」


はなちゃんが手を伸ばした方角に2匹の蜘蛛の化け物がでっぷりとした尻をせわしなく動かしながら尻の先端から黄色い粘液を出して部屋の入り口を塞ごうとしていた。


「あそこだ!

 あそこに親玉がいるぞ!」


俺は叫んでサブマシンガンを撃った。


「彩斗!どいて!

 私が吹き飛ばす!」


加奈が俺の横に出て蜘蛛の化け物に『加奈・アゼネトレシュ』を撃った。

蜘蛛の化け物の体に大きな穴が開き、内部から爆発した。


「特殊弾を食らいな!化け物!」


加奈がもう一発撃つと隣にいた蜘蛛の化け物も生きた防弾チョッキにしていた中年の男とともに吹き飛んだ。


「凄いな加奈!

 あの特殊弾か!」

「親玉用に後2発残してあるよ!

 あ!チキショウ!だけど化け物の体の残骸が入り口を塞いでる!」

「俺に任せろ!」


喜朗おじがヘルメットと防弾チョッキを脱ぎ捨てると雄叫びを上げて見る見るハルクと化した。

来ていた上着がばらばらに引き裂かれた。

まだあちこちで銃撃戦が行われている中をハルクと化した喜朗おじが時折命中する敵の銃弾にも怯まずにのしのしと入り口に近寄り、蜘蛛の化け物の足を掴んで引きずりどかして道を開けた。

その途端にクラが雄叫びを上げて部屋の中に突入した。

俺と真鈴、ジンコ、加奈も急いで後を追った。

しかし、中からクラの銃撃の音が聞こえず不審に思いながら中に入ると、部屋の中はちょっとした小振りなホールのようになっていて、部屋の奥に演壇があり、はなちゃんが見たであろう5人組の者が黒いカーテンに背を付け、やはり白い服を着て間を詰めて並んで立っていた。

そして、演壇の前には何十人もの、やはり白い服を着た年端も行かない子供達や赤ん坊を抱えた母親達、足腰が不自由そうな老人達までもが、俺達を完全に無視して立ったり座ったり地にひれ伏したりしながら何か一心に祈りを捧げていた。


俺達の後ろでは下火になったとはいえ、まだ散発的に銃声が轟いている。

しかし俺達は祈りを捧げる『信者』たちに阻まれて演壇の5人組を撃てないでいた。

俺達は薄笑いを浮かべる5人組に一心に祈りを捧げる『信者』たちの異様な光景にサブマシンガンを構えたまま固まったしまった。


「ここに親玉が!」


リリーと四郎、明石と喜朗おじが飛び込んできたがやはりこの異常な光景を見て固まってしまった。

信者を巻き添えに銃撃戦をする訳にも行かず、足の踏み場もないほどいる信者を突切って

接近戦に持ち込むのも無理がある。

敵方とは言え非武装の女子供老人を戦いに巻き込む訳には行かなかった。


「くそ、狂ってる…。」


真鈴が呟いた。

5人組の真ん中の中年の太った髭を生やした男が口を開いた。


「お前達勝ったと思うなよ。

 これで終わりでは無いぞ。

 この者達は狂ってなどいない、真理に目覚めかけた者達なのだ。」


リリーが後ろから部屋に入ってきたメンバーに小声で何か指図した。

指図された者は部屋の中を見て頷くと又出て行った。


「ほっほっほっ、お前らには糸を付けた者もいるぞ。

 逃げる事は出来んぞ!

 これで終わりだと思うな。

 後悔させてやる。

 まだまだ終わらんのだ!」

「この野郎!

 おとなしく降伏しろ!」


リリーが叫んだ。

その横を他のメンバーが部屋に入って来た。

その後ろにずらりとメンバーや支援班、処理班が並んでいる。


「降伏?

 降伏だと?

 ほっほっほっふざけたことを!われらは負けておらん。

 偉大な創始者は負ける事など無い!」


リリーが加奈に耳打ちをした。

加奈がリリーと共にエレファントガンを持ち上げて5人組に狙いを定めたが、どうしても射線を『信者』が邪魔をしている。


「お前ら掛かれ!」


リリーが叫ぶと同時に入ってきたメンバーが信者に飛びつき次々と部屋から外に引きずり出した。


「小癪な真似を!」


5人組の真ん中の男が叫ぶと頭の中で非常に不愉快な金属音が響き渡り苦痛のあまり武器を落として耳を押さえそうになった。

真鈴達も『信者』も外に引きずり出そうとしていたメンバー達一様に顔を苦痛に歪ませて動けなくなってしまった。


「この小癪な変節者がぁ!

 むきぃいいいいいい!」


はなちゃんが叫び、頭の中の金切り音が遠のいていった。


「奴の小癪な念動を押さえているじゃの!

 この隙にこの者達を連れだすじゃの!」


呆れた事に『信者』は祈りを再開し、メンバー達がわれに返り、じたばたと抵抗する『信者』を次々と部屋から連れ出して行く。



「おのれ!

 俗悪ども!

 わしの貴重な、創始者の特別な体液を受けよ!

 幸運に預かれ!」


5人組の真ん中の男以外の者達の口から液体がほとばしり出た。

液体が掛かった『信者』や俺達のメンバーが悲鳴と白煙を上げて転がった。

酸だ、あの蜘蛛の化け物の酸を消防ホースの様に辺り構わず吐き出し始めた。

呆れた事にすぐ隣の子供が酸を浴びて悲鳴を上げて転がり周っているのに酸を浴びていない子供達が祈りを続けている。


「くそ!早く!助けられるだけ運び出せ!」


リリーが5人組に狙いを定めながら叫んだ。

俺達も手近にいる子供たちの腕を引っ張り外に連れ出そうとした。


「おっほっほっ!

 わしは終わらぬ!

 創始者はまだ終わらぬ!

 お前たち!

 後悔するぞ!」


加奈が慎重にエレファントガンを構えて狙っている。

酸を吐きだす者達の口も溶け出して体も溶けつつあった。


「加奈、後ろに本体がいるよ。」


加奈と共にエレファントガンを構えたリリーが呟いた。


「見えるよリリー、目が光ってる。」

「奴を止めるには撃つしか無いね、これ以上殺させないよ、準備良いかい?」

「加奈、コピー。

 終わらせてやるよ。」


酸を浴びて人垣が崩れた隙間からリリーと加奈がエレファントガンをほぼ同時に撃った。

エレファントガンから放たれた特殊弾が真ん中の男の顔の両側すぐ横を飛んで行き、後ろに控えた本体に命中した。

真ん中の男の顔が衝撃波で引き千切れた。

男の背後から物凄い呻き声が聞こえて黒いカーテンと思っていたものが激しく動き出した。

それはカーテンなどではなく、今までの蜘蛛の化け物の数倍は大きい、恐らくこの部屋から出る事さえ難しいと思える巨大な化け物だった。

あの五人組はこの化け物と合体した『生きた防弾チョッキ』だった。


加奈とリリーがシンクロして奇妙な舞いをして反動を逃がし、再度射撃姿勢をとると又発砲して、化け物の頭と思われる部分を粉々に吹き飛ばした。

化け物は断末魔の声を上げて動かなくなったが、その腹から夥しい酸があふれ出して演壇を溶かしながら床に流れ出て前の方にいた信者を溶かし焼きながらこちらに広がって来た。


「救出!

 助けられるだけ助けろ!

 死なせるな!」


リリーが叫んで手近にいた赤ん坊を抱えた母親の腕を掴んで外に連れ出した。

俺達も必死に暴れたり逃げようとする『信者』を捕まえて外に連れ出そうとするが、演壇から流れ出す酸がどんどん『信者』を飲み込み、焼き、溶かしていった。


「ジンコ!あぶない!

 もう無理だよ!」


真鈴の声を振り切ってジンコがまだ両手を上げて祈る6歳くらいの男の子の手を掴んだ。

掴んだ手を振り切ろうとする男の子を引きずってジンコがこちらに走って来た。

すぐ後ろを酸の海が迫って来ていた。

ジンコが死体に躓いた

俺達は手を伸ばして倒れたジンコの服を掴んで引きづりながら部屋から逃げ出した。

何とか酸の海から逃げだした俺達はジンコを見た。


ジンコは無事だったが手を握っていた男の子は…下半身が溶けて消え去り絶命していた。

上半身だけになった男の子の遺体は至福の表情を浮かべながらもうつろな目でジンコを見上げていた。

ジンコはじっと男の子の顔を見つめ、男の子の手を離せずにいた。

明石がゆっくりとジンコの手を握り、一本一本指を男の子の手から引き剥がした。

ジンコがしばらく無表情で男の子の遺体を見つめていた。

そして、泣きながら激しく嘔吐した。


あの強大な化け物を倒した俺達だが心が冷たく張りつめたままだった。

泣きながら嘔吐するジンコをただ見つめる事しか出来なかった。

周りでは敵の掃討がほぼ済んでいて、メンバーが倒れている者の生死を確かめていた。

敵や、まだ回収されない味方の体があちこちに転がっていた。

はなちゃんは白目を剥いて気絶していた。







続く


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