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吸血鬼ですが、何か? 第7部 紛争編  作者: とみなが けい
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戦いは終わったがまだまだやる事が有った…ノリッピーの凄さを改めて実感する…小次郎、さようなら、ありがとう。

戦闘、いや、戦争は終わったが俺達はまだまだやる事が沢山あった。

俺達はリリーに頼まれて生き残った信者の見張りをした。

あの創始者と名乗る化け物を始末してからは信者たちは放心状態になり、これと言った抵抗もせずに広場の片隅に集められてうつろな目をして座っていた。

新たに無傷の作業着姿の処理班が大勢入って来て敵味方の戦死者の収容や負傷者の後送、そして壁の部屋を隅々まで調べていた。

ベッドが並んでいる部屋から細い通路が伸びているのを見つけ、戦闘メンバー2人が先頭で後を処理班が続き探索に入って行った。

その他にもいくつかの通路が見つかり、次々と探索をしている。

あの創始者がいたホールの演壇の裏にも出入口がある事を視認したが、酸の海に阻まれて探索が出来なかった。

この地下の全貌はまだ掴めなかった。

スコルピオの戦闘メンバーがやって来て改めて信者たちが武器等隠し持っていないかを調べ、支援班が酸でやけどした者などの傷の処置をした。

あの時ホールには100人近くの信者たちがいたが無事に身柄を確保した信者は30人に満たなかった。

残りはあの酸の海に溶けて沈んでいた。

リリーがやって来た。


「ワイバーンは全員無事?」

「ああ、リリー、でもジンコは…いや、俺達もかなり精神的なショックを受けているよ。

 戦闘の激しさと違う意味でね。」


俺が答えるとリリーも顔を曇らせた。


「そうね、まさかこういう人達が…子供達までいるとは…それとね、やはりまだ把握していない出入口があってそこから湧いてきたアレクニドの奴らが警察を蹴散らしたわ。」

「え…。」

「待機してたタランテラが急行して戦ったけど、かなり手強い奴らでね、制圧には成功したけど強い奴を何匹か取り逃がしてしまったわ。

 どうやら、奴らが1軍だったようだわ。

 他にも警察の監視線の外にも出入口があった事が見つかってね、何匹が逃れ出たか判らないのよ。」

「…。」

「横田の無人機が奴らが出てくるのを見つけたんだけど、そう多くは無いようだわ。

 もっとも追跡をしようとした途端に無人機が堕とされたからその後の足取りは判らないけど。

 警察でもかなりの被害が出たようね、大虐殺と言って良いほど死人が出たそうよ、すぐに私達に連絡しなきゃいけないのに何とか自分達でけりを付けようとして待機してる警察の特殊部隊を先に送って余計に被害が増えたわ、彼らは別物、悪鬼相手の戦闘なんか未経験なのに…馬鹿な奴らが変な縄張り意識を持つとこうなるのよ。

 馬鹿な上官がいると兵隊は無駄死にしてしまうわ…。

 私達にすぐ連絡をすれば早くタランテラを送ったのに…。

 今警察は、自衛隊まで狩り出して国会議事堂や首相官邸などを固めてるわね。

 自分自身の身を守る事に関してはとても熱心な奴らだから。

 今の政治家連中なんて大元はあの女子供老人を盾にした創始者と名乗るあほ野郎と大差ないわよ、全く…。」

「自己保身は奴らの本能だからな、自分が安全なら国民なんて畑でとれるかそこいら辺りから勝手に涌いて来るとでも思っているのだろうな。

 しかし、なるほど、強い奴らはそっちにいたのか…。」

「そうね景行、ここは数こそ大勢だったけど、それほど…と思ったわよ。

 …もっとも私達も苦戦して被害も多かったけど…私の直感的にはやっぱり最強の奴らじゃ無かったわ。

 あの創始者とか言うバカも勝ち目は無い事を知っていてここを固めるより、一矢報いようと最強の奴らを別に置いていたのかもね。

 何を狙っていたかわまだ判らない、調査中よ。

 しかし、負けいくさの巻き添えにされる方はたまったものじゃ無いわ。」

「戦争の醜い側面を見せつけられたな…この信者たちと言い…。」

「そうね、四郎。

 あなたは実際の戦争を間近に見た事無いもんね。

 胸糞悪い事がてんこ盛りよ。

 こんな人たちを盾にするなんて…奴の死骸にもっと弾をぶち込みたい気分よ。

 もうすぐ処理班がやって来てこの人達を連れ出すからしっかり監視していてね。

 じゃ。

 …今回の戦いは…まさに戦争だった。」


リリーはそう言い残すとあれやこれや周りの者に指示を出しながら歩いて行った。

四郎だけでなく俺や真鈴やジンコ、加奈やはなちゃんでさえ実際の戦争に身を置いた事は無いだろう。

戦争…まさに何もかもを巻き込み破壊して何十年も消えない傷跡を残す最悪の災害だ。

俺達は今日、戦争をした。


「ジンコ、大丈夫?」


真鈴が信者達を見張りながらジンコに声を掛けた。


「真鈴、かなり落ち着いたわ。

 でも、下半身が無くなったあの男の子の目は忘れる事が出来ない。

 あの子に何の罪が…真鈴こそ頭の傷は大丈夫?」

「うん、さっき支援班の人が包帯を換えてくれたし、抗生物質や鎮痛剤ももらったしね。

 あと、私達の家から近い所の病院も教えてくれたわ。

 そこなら変な詮索無しで無料で後の治療をしてくれるってさ。」


やがて処理班が来て信者たちを連れて行った。

とても政府や警察に任せられないと言う事で岩井テレサの方で預かると言う事だ。

確かに国の機関であの者達の面倒など見る事は不可能だろう。

犯罪を犯したごく普通の奴でも社会復帰をろくにさせる事ができないのだから。


突入口に作った急造のヘリポートは大型のヘリコプターが降りる事が出来ないので少し小型のヘリコプターがピストン輸送で飛んでいると言う事で俺達はもう少し待たされた。

喜朗が足元に落ちているAK47に似た銃を拾い上げた。

喜朗おじはハルク状態になって上着が引き千切れ、その上に先ほど脱ぎ捨てた防弾チョッキを着ていてかなりワイルドな姿になっていた。


「なんだ?

 かなり雑な作りだな刻印も無いぞ。

 奴らの手製かもしれないな。

 正規の武器工場なら不良品と弾かれてもおかしくない出来だぞ。」


そう言いながら喜朗おじがマガジンを抜いて薬室に弾が無い事を確認して俺達に銃を渡した。

確かに表面の仕上げもろくにしていないし、遊底を動かすとろくに研磨されていない鉄が擦れ合うような嫌な音を立てて動きも滑らかでは無かった。

きちんと弾が発射されて次の弾を薬室に送り込めたら御の字という代物だった。


「AKベースに作ったから何とか動くようだな。

 弾はロシア製のようだが…北朝鮮の物だ。」


明石も銃を手に取り、落ちていた銃弾を拾い上げて呆れた声を上げた。

どうやらこいつらは岩井テレサほどの資金力も組織力も国に対するコネも持ち合わせていない様だった。

だが、どうしてこんなある意味で無謀な戦いを仕掛けて来たのだろうか?


「なんでこいつらはこんな不利な戦いを仕掛けたんだろうね。」


俺が言うと喜朗おじが顔をしかめて答えた。


「狂った奴が組織を持つと誇大妄想と被害妄想が膨らむからな、無謀な戦いだと止める者など組織から追い出されるか処刑される。

 そして後世から見たらとんでもないバカな戦争を起こすと言う事だな…又は別の誰か組織にそそのかされたか…。

 まぁ、今はなんとか俺たち全員生き残った。

 まずはそれを喜ぶことにしよう。

 クラも死ななかったしな。」


クラはリリーの後をついてあれこれ忙しそうにしていた。

私の横から離れるなと言うリリーの命令はまだ生きているようだ。


「加奈、クラがお礼を伝えてくれと言っていたぞ。」


喜朗おじが加奈に言った。


「え?喜朗父、なんて?」

「親の仇を、ヤクルスの仇をとってくれてありがとうとな。

 俺たち全員にも優しく受け入れてくれてありがとうと伝えてくれと言ってたぞ。」

「水臭いわね~、直接言えば良いのに…でも、クラがワイバーンに来てくれたら良いのにね。」


全く加奈が言う通り、俺達は頷いた。


「ワイバーンの諸君、そろそろ迎えのヘリが来るようだ、少し待たされるかもしれないが、ここより外の空気の方がうまいと思うよ。」


処理班の男に声を掛けられて俺達はスコルピオの戦闘メンバー達と共にぞろぞろと突入口に向かった。

途中、壁の中からの奇襲を受けた場所に辿り着いた時に俺はぎょっとした。

殺したアレクニドの死霊が壁際に並んで俺達を睨み付け、中には掴みかかってこようとする奴までいた。


「うわ…確かにはなちゃんが言う通りウザいよ…。」


俺が呻き声を上げると四郎と明石と喜朗おじが苦笑いを浮かべ、真鈴達がやっぱりいるの?と顔をしかめた。


「彩斗、安心しろじゃの。

 確かにこいつらはウザいけど、色々もろもろの物に縛り付けられてここから離れる事は出来んじゃの、家まで付いて来る事は無いじゃの。

 自業自得とは言え、哀れな者達じゃの。」


はなちゃんの言葉に俺は少し安心したが、果たして本当に自業自得なんだろうか?

この者達の中には真面目に生きて来ていて多少疲れたところに上手い事あの創始者と言う奴らに勧誘され、洗脳されて人生を踏み外した者もいるのかも知れない。

そう考えたら彼らも被害者か…踊らされた人達なのだろうか…。

只でさえ色々な想いが頭をぐるぐる回っていた俺はとりあえず考えるのを止める事にした。

出口に近づくにつれて地下のひんやりした空気と樹海の湿気がある熱気と入り混じって来た。

突入口を抜けて洞窟を出るとノリッピーが出てくる1人1人に名前を呼び声を掛けて苦労をねぎらっていた。

さすがに四郎が言っていたようにアインシュタインより知能指数が高いのだろう、ノリッピーは全員の名前や愛称を覚えていて肩を叩きよくやった!とねぎらっていた。

成る程隊員に人気がある訳だ。

頭が良く、兵隊の苦労を知るこの指揮官になら命を投げ出しても良いと思う。

更に俺が驚いたのはノリッピーの上着は半分ほどが酸で焼けてボロボロになり片側の肩の部分などが消失していた事だ。

そして、ノリッピーの髪の毛の半分が抜け落ちて地肌が見えていた。

ノリッピーの足元に置かれたヘルメットと防弾チョッキも破れ傷つき酸で溶かされ、使い物にならない状態だった。

ノリッピーの横にいる指揮班の者達も防弾チョッキやヘルメット、戦闘服やブーツ等がズタボロの状態だった。

ヲタ地雷を使って敵を吹き飛ばしたとはいえ、あの大軍をたった6人で制圧して悪鬼の捕虜さえ取ったと言う指揮班はどれほど強いのか…。

俺は今更ながらに岩井テレサの直属部隊の凄味を感じた。


「やあ!彩斗君!

 ワイバーンが全員生き残って何よりだ!

 あのネオアームストロングヲタ地雷はとても助かったよ!

 おかげで敵の半分は減らせたからな!

 君達も頑張ってくれてありがとう!」

「ノリッピー、どうも…その髪の毛はどうしたんですか?」

「ああ、これか!

 蜘蛛の化け物の酸を浴びちゃってねぇ。

 髪の毛は血が通ってないから再生には無縁だからね、髪の毛が新しく生えてくるまではこんな感じで我慢しなきゃね!

 ちょっとパンクだろ?

 今ヘリコプターが大混雑してるんだ。

 ちょっとその辺りで休憩しながら待っててくれるかい?

 おお!加奈ちゃん!『加奈・アゼネトレシュ』を使って大活躍したそうだね!

おかげで助かったよ!大健闘だよ!

 真鈴ちゃん!頭怪我したそうだけど大丈夫かい?

 傷が残るとか聞いたから少し心配したけど君ほど器量良しだったら傷など気にしない良い男が見つかるよ!

 気を落とさないでね!よく頑張った!

 喜朗おじ!あのネオアームストロングヲタ地雷は凄い出来だよね!

 普通のクレイモアよりもベアリングの弾の直径が大きいんだって聞いたよ!

 別物相手じゃ凄く有効だよ!

 マグナムクレイモアと言う感じかな!

 おお!明石君!君がワイバーンを引っ張って戦ったのは承知してるよ!

 流石に423年も戦い続けた男だね!」


この調子でノリッピーは俺たち一人一人に声を掛け、奮闘のお礼を言ってねぎらってくれた。

俺たちの名前だけじゃなく、その他の事も全部頭に入っているのはびっくりした。

自分も物凄い戦闘をしたのに疲れも見せず汗をかきながら俺たち一人一人をねぎらうノリッピーは偉大だった。

四郎はポケットから煙草を取り出し火を点けながら言った。


「やれやれ、ノリッピー、やはりあの男は只物じゃ無いな。

 男が男に惚れてしまいそうになるぞ…お…彩斗、あれを見ろ。」


四郎が火を点けたばかりのタバコを消して指差した。

戦死者の死体袋が並べて置いてあり、小三郎がその一つに膝まずいて手を当てて泣いていた。

そして、泣く小三郎の肩に手を当てて優しくさすりながら困ったような表情でいる、頭部を粉砕されて死んでしまった小次郎がいた。

その姿は生前のものだった。


「おお…。」


死霊が見える俺と四郎、明石と喜朗おじが声を漏らした。


「みんなどうしたの?」


真鈴達が俺を見上げた。


「小三郎の後ろに小次郎がいて慰めているじゃの。

 小三郎は死霊が見えないから小次郎に気が付かない様じゃの。」


はなちゃんが真鈴達に答えると真鈴達がえ?と声を上げて立ち上がり、泣いている小三郎を見つめた。

小三郎の肩をさすって慰めていた小次郎が俺達に気付いた。


「いやぁ、響兄いが早く来いって言うけど、こいつが泣き止まなくて困りましたぁ!

 後でこいつに説明してくれますか?

 お前は良い弟だったと俺が言っていたと伝えてください。」

「…うん、小次郎、伝えておくよ…さようなら。」


俺が言うと小次郎が笑顔になり、俺達に敬礼をしてから手を振った。


「さようなら、今までありがとうございました!

 真鈴さん達と飲みたかったけど、響兄いが上にはもっと美人が沢山いると言っていたので…それでは!

 さようなら!

 ワイバーンに幸運を!」


小次郎がまた笑顔で敬礼をして天に昇って行った。

俺達も小次郎に敬礼をして手を振った。

死霊が見えない真鈴達も俺や四郎達に習って敬礼をして手を振りながら小次郎を見送った。


「やれやれ、寂しくなるな。

 彩斗、落ち着いたら小三郎に今のやり取りを伝えてやれ。」


四郎がまたタバコに火を点けて座った。

小次郎が死んでしまった事は凄く悲しいが俺は少しだけ救われた気分だった。

もし俺が死んだ時も仲間達に笑って別れを告げたいと、そしてスムーズに天にのぼりたいと思った。

激しく残忍な光景を見た後の俺はほんの少しだけ救われた気分になった。


またヘリコプターが強力なライトで照らされたヘリポートに着陸して順番待ちの戦闘メンバーを乗せて飛び立って行く。


午前1時20分。

 

腕時計を見た俺はため息をついた。

何十時間も…何日も経ったような気分だったが、まだ突入してから数時間しか経っていなかった。









続く




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