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吸血鬼ですが、何か? 第7部 紛争編  作者: とみなが けい
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地下広場に到達した俺達は大乱戦に持ち込まれた。

四郎が俺の体をつついた。

振り向くと四郎は支援班から貰って来た戦死者のヘルメットを持っている。

そして自分のヘルメットを脱いで俺に差し出すと自分は戦死者のヘルメットを被った。


「彩斗、かなり返り血を浴びているが戦死した者のヘルメットより良いだろう。

 われのを被れ。

 われも頭を撃ち抜かれたらどうなるか判らんからこれを使わせてもらう事にするぞ。」

「…ありがとう四郎。」


はなちゃんが手をあげた。


「彩斗、頭を守る事は大事じゃの。

 そろそろここもウザい状況になりそうじゃから奥に進め。」

「はなちゃん、ウザい状況って?」

「なに、気が早いものはそろそろ自分の遺骸から抜け出し始めるじゃの。

 実害は無いと思うが、見える者にははなはだウザい事になるじゃの。」


俺は慌てて四郎のヘルメットを被り、暗視装置の場所を調整した。


リリーと俺達は周囲を警戒しながら進み、次の分岐点に達した。

地下地図を確認したリリーは右側の通路を進むことにして、一番被害が多かった第1班を支援班や処理班の後方に置き、殿にして後方を警戒しながら進んだ。

最初に7人いた第1班は5人に減っていた。


俺達は壁や天井、木の板の床を注意しながら進むと、前から微かに空気の流れを感じた。

やや右に曲がる所の手前でリリー達は止まった。


「広い所に近くなった。

 一人偵察に先行させる。

 罠や待ち伏せが無いか確認したら一斉に突入して散開するぞ。

 第2班は左に、ワイバーンは右に散開しろ、第3班は私と共に前方に展開、第4班は入り口を固めながらそれぞれの援護、いいかい、奇麗に広がれよ。

 もたつくな。」


インカムからリリーの指示が聞こえた。


そしてリリーはカスカベルに声を掛けた。


「こちらスコルピオ、広場に到達する。

 カスカベルはどこか?」

「こちらカスカベル、こちらも広場に到達しそうだ。

 斥候を出す。」

「スコルピオ、コピー。

 こちらも斥候を出す。

 同士討ちに注意。」

「カスカベル、コピー。」


ヘルメットや防弾チョッキに酸の穴がぽつりぽつり空いているヤマッチがするすると前に出て通路を進んでいった。

どうやら岩井テレサの化学班が開発した中和スプレーは効果があったようで、俺達はホッとした。


ヤマッチが広い所に辿り着くまでも俺達は壁に色が変わった場所が無いか見回していた。


「広い場所に出た、

 かなり広い…わな、待ち伏せは確認できない。

 …カスカベルの斥候を確認。」


インカムからヤマッチの声が聞こえた。


「良いぞヤマッチ、気を抜くなよ。

 よし!いくぞ!」


インカムからリリーの押し殺した声が聞こえ、俺達は広場に突入して綺麗に散開した。

丸く広い広場。

何もなく壁が周囲を囲んでいた。


俺達は壁に注意しながら警戒した。

広場の反対側からもカスカベルのメンバーが湧いて来て左右に展開している。

がらんとして何もない。


「各自周囲を警戒。

 …おかしいな、奴らでもトイレや炊事場は有るはずだが…他のどこかか…はなちゃん、あの5人組がいた場所と違う?」


「リリー、あの五人組はもっと狭い場所にいたじゃの。

 ここでは無いじゃの。」

「そう、だとしたら上か下か…。」


はなちゃんが突然叫んだ。


「下だ!

 奴らは下にいるじゃの!」


その瞬間、木の床のいくつかが跳ね上げられてアレクニドの大群が湧いてきた。


「くそ!下だ!

 奴らは下にいる!

 撃て!

 どれか侵入口を確保しろ!」


広場の向かいにいるカスカベルも大集団が湧いて来て取り囲まれ、たちまち大乱戦になった。


「くそ!ラインを作れ!

 前線を作って奴らを押しとどめろ!」


リリーの声が聞こえ、続いてエレファントガンの轟音が轟いた。

俺達も目の前に出てきたアレクニドの大群に向かって撃ちまくった。


何とか前線を作って奴らと入り混じるのは防がなくてはならない。

俺達は迫りくるアレクニドにサブマシンガンを連射しながら隣の者と連携して何とか敵味方を分ける前線を作り出した。

戦っている俺の視界の端では白目を剥いて奇妙に痙攣する『生きた防弾チョッキ』を貼り付けた蜘蛛の化け物が跳ね上げた床から何匹も這い出してきていた。


「くそ!きりが無いぞ!」

「踏みとどまれ!奴らが回り込んだら最悪だ!」


四郎と明石が撃ちまくりながら叫んでいる、ジンコの切迫した声が聞こえた。


「四郎!景行!弾が無くなりそう!」


真鈴も叫んだ。


「私もだよ!残りのマガジンが2つ切ったよ!」


加奈もエレファントガンを連射して叫んだ。

可奈のエレファントガンには既にあの銃剣が着剣してある。


「加奈もアゼネトレシュの弾が後4発!

 特殊弾しか残ってないわ!」


俺も最後のマガジンをサブマシンガンに装填した所だった。

これを撃ち尽くすとあとは腿にある40口径のSIGピストルと小雀ナイフと背にしょったルージュの槍で戦うしかない。


「はなちゃん!壁を!見えない壁を!」

「だめじゃの!敵味方が入り乱れてとても作れんじゃの!」

「くそ!俺がワンクッション稼ぐぞ!

 君らは少し後退してラインを作り直せ!」


明石が撃ち尽くしたサブマシンガンを捨てて江雪左文字を抜くと怒号を上げながら奴らの前衛に飛び込み斬りまくり始めた。

四郎もサブマシンガンを捨て、サーベルを抜いて切り込んだ。


明石と四郎が死体の山を築いたおかげで前衛を切り崩し、敵との間に少し距離が出来たが、まだまだ跳ね上げた床から敵が湧いてきた。


「彩斗!

 ヲタ地雷を!」


リリーの声が聞こえた。

その声に反応して俺と喜朗おじが後方に走りながらポウチからヲタ地雷を取り出して放射状に向きを調整して床に食い込ませた。

喜朗おじが言っていた安全距離を稼げないのでヲタ地雷のすぐ後ろに伏せるしか無かった。

ヲタ地雷の後ろに伏せた俺は1つ、喜朗おじが2つのヲタ地雷を設置して起爆スイッチを握りしめた。


「良いか彩斗!

 緊急爆破手順で行くぞ!

 合図で一気に3回握れ!

 リリー!

 準備はいいぞ!」


喜朗がインカムで叫んだ。


「こちらリリー!

 ヲタ地雷を視認した!

 良いか皆!

 敵の前衛を粉砕して距離を稼ぐ!

 全力射撃をしながら前に出ろ!

 前衛を突き崩せ!

 そして私の合図で後方に走れ!

 ワイバーンの線まで全力で走れ!

 カスカベル!

 こちらでクレイモアを爆破する!

 そっちでも前衛を崩して距離をとれ!

 カウント3で爆破するぞ!

 伏せろよ!」

「えええ!そんなすげぇ物を持ってるのか!

 カスカベル!コピー!

 お前ら突撃しろ!

 前衛を崩せ!」


カスカベル指揮官から切迫しながらも呆れた声が聞こえた。


俺は喜朗おじを見た。

喜朗おじは両手に起爆スイッチを握りしめて俺を見て頷いた。


「よし!スコルピオ突撃!

 敵を蹴散らせ!

 ぶち殺せぇええええ!」


リリーの合図で全員が雄叫びを上げて撃ちまくりながら敵の前衛に突っ込んだ。

敵は自分達よりも少数の敵がいきなり突っ込んできて混乱して足が止まった。


「よし!

 下がれ!

 走れ!

 全力で走れ!

 ワイバーンの線まで走れぇ!」


リリーの号令で全員が踵を返してこちらに走って来た。

追いすがる敵にリリーがエレファントガンを至近距離で連射した。

リリーのすぐそばに迫っていた敵が数人、ばらばらに吹き飛んだ。


「彩斗!喜朗!

 行くわよ!

 カスカベル!爆破する!

 カウントするぞ!」


リリーは左右を見回して弾を撃ち尽くしたエレファントガンを捨て、全員の最後尾をこちらに向かって走って来た。

カスカベルの方でも一斉に伏せている。

一時混乱した敵は、また雄叫びを上げながら押し寄せて来た。

散々に殺したのにまだ敵は大勢が壁となって迫って来た。


「みんな伏せろ!

 3!

 2!

 1!

 爆破!」


そう叫びながらリリーが俺のすぐ横を走り抜け、床に身を投げ出した。

俺と喜朗おじが床に頭を擦り付けて起爆スイッチを3回握りしめた。


この世の終わりの様な轟音と振動が来た。

振動で俺の体が浮いた。

少し耳が聞こえなくなった。


顔を上げた。


3つのヲタ地雷はアレクニドの大軍を粉砕していた。

敵の怒号が消え、敵の前衛も、その後ろにいた蜘蛛の化け物も、こちらに背を向けてカスカベルに殺到していた敵も多くが床に倒れていて死ぬか力無くもがくか呻き声を上げていた。

辛うじて立っている敵も体にヲタ地雷の撃ち出したベアリングを浴びて動きが鈍くなっている。

4匹ほど固まっていた蜘蛛の化け物もその体が引き裂かれて弱々しく足を動かしていた。

そして、体の中の酸袋が破れたのか周囲に漏れ出した酸が床を溶かし、その薄気味悪い体が一塊になって床に沈み込んでいった。


まだ耳なりがする俺のインカムからリリーの声が聞こえた。


「みんな立ち上がれ!

 奴らに止めを刺せ!!

 まだ下から上がって来てるぞ!

 奴らを始末して下に降りるぞ!

 親玉を探し出すんだ!」


返り血を頭から浴びて血まみれリリー、ルージュリリーになったリリーが立ち上がり、サーベルとピストルを抜いて叫んだ。






続く





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