静まり返った地下…いきなり敵の奇襲を受けた。
「罠に気を付けろ…クラ、私の横にいなよ。」
「コピー。」
エレファントガンを構えて周囲に目を配りながらリリーが前に進み。横を進むクラも前に顔を向いて目を凝らしている。
俺達は慎重に進んだ。
ガスマスクを外していて正解だと思う。
ガスマスク越しの限られた視界では周囲の空気を読みずらい。
俺達は慎重に進み、分岐点に差し掛かった。
前方を進む数機のドローンが分かれてそれぞれの通路を進んでいった。
「ノリッピー。
分岐点に辿り着いた。」
「ノリッピー、コピー。
本陣をそこまで進める。
警戒して待て。」
「コピー。」
俺達はそれぞれの通路を警戒しながら止まった。
「はなちゃん、どうかな?
敵はいそう?」
「彩斗、見事に気配を消しているじゃの。
なにかわらわが気が付かない物で覆い隠しているか、わらわの思念さえ遮る物の陰にいるのか…。
殺気さえ感じないじゃの。
静かすぎるじゃの。」
リリーがすぐ横で囁いた。
「そうね、静かすぎるわ。
私も殺気の欠片さえ感じないわ…。」
後方からノリッピーの指揮班がやって来た。
「ここでどちらに進むかだね。」
ノリッピーが両方の通路を見つめ、そして支援班のタブレットを覗き込んだ。
タブレットにはリアルタイムで作られる地下地図線が伸びて行く。
まだ広い場所に辿り着かず、狭い通路をうねうねと進んでいる。
ドローンモニタには通路が延々と続いている。
「こちらカスカベル、狭い通路が延々と続いてる。
今の所敵は確認できない。
インカムからカスカベルの報告が入った。
カスカベルでも似たような状況だった。
「はなちゃん、女王アリの様な5人組は広い部屋にいるんだよね?」
リリーが尋ねた。
「そうじゃの、どこかこの中に広い所があるじゃの。
奴はそこにいるじゃの。」
ノリッピーが結論を出した。
「ここで分散していたらきりが無いな。
ルージュリリーはクラたちが進んだ方向に行け。
俺達はここに構えて不測の事態に備える。」
「コピー。
喜朗おじ、ヲタ地雷を一つ置いて行ける?」
「ああ、ネオアームストロングヲタ地雷を一つ置いて行こう。
もう一つの通路に睨みを利かせるんだな?」
「その通りよ。
もしもこっちから奴らが大挙して来ても先陣を崩せるからね。」
「判った、彩斗、お前のリュックの奴を出せ。」
俺のリュックに入っているヲタ地雷の一つを取り出して、もう一つの通路の方に向けて設置した。
「操作は米軍のクレイモア地雷と同じだ。
一回クリックで青いランプが点く、もう一度クリックすると赤いランプ。
これで爆破準備完了だ。
もう一度クリックすると前方の敵を根こそぎ吹き飛ばすからな。」
喜朗が指揮班の戦闘メンバーにヲタ地雷の使い方を教えた。
そして俺達は再び、周囲を警戒しながらクラが進んだ通路の方角に進んだ。
やがて緩やかな下り坂に差し掛かった。
先行するドローンはもう見えないところまで進んで行っている。
リリーと同行している支援班の持つドローンモニタで通路が緩やかに右にカーブしている所までの映像が見えた。
相変わらずドローンは広い場所に出ていない。
「広い所はもっと先だね…進むよ。
周囲に気を付けて。」
俺達が進もうとした時にクラが声を上げた。
「待って!
ちょっと待ってください!」
「みんな止まれ!」
リリーが言い、俺達は止まった。
「クラ、どうした?」
リリーが尋ねるとクラが通路の先を見つめて目を凝らした。
「うまく言えません、うまく言えないけれど…壁に違和感があります。
所々材質が違うような…前に来た時はあんな所は有りませんでした。」
俺達は目を凝らして通路の壁を見た。
判り辛いが、確かに通路の所々に微妙に光沢が違うような場所があった。
リリーが黙って頷き、インカムで俺達の後ろにいる戦闘メンバーを呼んだ。
40代くらいの男のメンバーがやって来た。
リリーが男の肩に手を乗せた。
「いいかい、ヤマッチ、この中でお前が一番敏捷で勘が鋭い。
先行して通路のあの色が違う所を探ってくれ。
他の者はヤマッチを援護しろ。
怪しいと思ったら撃て。」
ヤマッチがニヤリとして親指を立てると周囲を警戒しながら進んでゆき、色が違う所に手を当て、そしてマチェットを抜いてから、もう片方の手でサブマシンガンを構えながらマチェットを壁に叩きつけた。
木の壁を切り裂いたように壁にマチェットが深く突き刺さった。
ヤマッチがマチェットを抜こうと引っ張ったが、マチェットは壁に吸い込まれた。
ヤマッチがマチェットから手を放して壁に向けてサブマシンガンを撃ち始めた。
「壁の中に何かいるぞ!」
ヤマッチがサブマシンガンを撃ちながら叫ぶと同時にはなちゃんが叫んだ。
「いる!
いるぞ!壁の向こうに奴らが充満してるじゃの!」
戦闘はいきなり起きた。
途端に壁の向こうから酸が壁を溶かしながらヤマッチに激しくかけられた。
咄嗟に敏捷な身のこなしで避けたヤマッチだったが酸がヘルメットや防弾チョッキ、腕や顔に降りかかり白煙を上げて溶かし犯してヤマッチが悲鳴を上げて転がった。
同時にさらに奥の壁を突き破って夥しい数の悪鬼や人間達が飛び出してきて怒号を上げ、手に持った刃物などで襲い掛かって来た。
「ヤマッチを援護しろ!
撃て!撃て!」
リリーの言葉が終わらないうちに俺達は射撃を開始した。
襲い掛かってくる最前列の敵がバタバタと倒れたがその体を乗り越えてつぎつぎと前進してきた。
いったい何人いるのか、通路に敵が充満して目をつぶって撃っても当たるくらいだった。
2人の支援班員が激しい銃撃の下を匍匐前進してヤマッチの方に進み、呻きもがくヤマッチの体を掴んで奴らの寸前から引きずって戻って来た。
そして苦しむヤマッチを押さえつけながら、酸を中和する中和スプレーを吹きかけた。
辺りに凄いアルカリ臭が満ちた。
支援班員を見てロクな武器も持たずにすごい勇気だと思いながら俺達は迫りくるアレクニドの奴らを撃ち続けた。
「カスカベル!こちらスコルピオ!
襲撃を受けている!
壁に注意!
奴らは壁から湧いて来るぞ!」
「こちらカスカベル。コピー。
壁に注意!壁に注意しろ!
うわぁ!撃て!撃て!」
インカムのカスカベルの声が怒号と銃声に掻き消えた。
カスカベルも同様に襲撃を受けたのだろう。
リリーがエレファントガンを撃った。
撃たれた悪鬼の上半身が吹き飛び、更にその後ろの数人が手や胸を吹き飛ばされて倒れたが、奴らの前進が止まらなかった。
更にバトルライフルを持った戦闘メンバーが毒を塗ったフレシェット弾が詰まったグレネードを発射した。
敵の前衛がバタバタと倒れて一瞬勢いが止まったが後ろの敵は倒れた味方の体を掴んで盾にして再び襲ってきた。
「ノリッピー!襲撃を受けている!」
「リリー!こちらも通路の先の壁から奴らが湧いてきた!
後詰めは送れん!何とか押し返せ!」
「はなちゃん!壁を!見えない壁を!」
俺が叫ぶと加奈がかぶりを振った。
「はなちゃん!それより奴らを操る奴を探して!
私が始末する!」
「任せとけ!」
加奈がエレファントガンを前方に向けて構えている。
加奈はまだ撃っていない。
恐らく攻めてくる奴らを操る奴を仕留めるチャンスを窺っているのだろう。
後方、分岐点の方で凄い爆発音が聞こえた。
ヲタ地雷を爆発させたのだろう。
「加奈!右側!右側の壁の中に潜んでいるじゃの!
壁に身を隠しながら酸が噴き出た穴からもう少しこちらに近づいているじゃの!
わらわ達の後ろに出るつもりじゃの!」
はなちゃんが叫んだ。
なるほど、奴らは俺達を挟み撃ちにするつもりだ。
リリーは一番前で敵に向かって射撃を続けている。
「第2班前へ出ろ!
第1班は2班の後ろに!
グレネードを再装填しろ!」
俺たちのすぐ後ろの第2班の戦闘メンバーが前に出て入れ替わりに最前列の第1班が後退しながらグレネードに再装填をしていた。
幸いにもアレクニドの奴らはあまり銃や弓矢などの飛び道具を持ってなく、飛んで来る銃弾は少なかったが何人かのメンバーが銃弾や槍を受けて倒れた。
敵は俺たちの銃撃でバタバタと倒れるが次々と押し寄せる奴らとの距離は段々詰まって来た。
リリーが下がるのとすれ違うように加奈がエレファントガンを構えて前に出て、すぐ後ろを俺も付いていった。
「加奈!彩斗!危険だよ!
下がれ!」
リリーが加奈に叫んだ瞬間、加奈のエレファントガンが火を噴き、壁に大穴が開いた。
奇妙な舞いで反動を逃した加奈が再び壁の穴に向けて射撃姿勢をとった。
「見えた!」
壁の穴の奥の空間を睨み、加奈が叫び、そして撃った。
壁の穴から発情期の猫の様な赤ん坊の様な何とも言えない悲鳴が聞こえて、押し寄せてくる敵が一瞬立ち止まり、戸惑うように顔を左右に振っている。
敵の勢いが弱まった。
「今だ!押し返せ!」
リリーが叫び、戦闘メンバー達が怒号を上げて前に進み撃ちまくった。
「奴の止めを刺すぞ!
四郎!来い!」
明石と四郎が日本刀とサーベルを抜き、加奈が撃った壁の穴に飛び込んだ。
やがて壁の穴から断末魔の悲鳴が聞こえ、壁から湧いてきた敵は総崩れになって通路の奥に逃げ始めた。
俺達は通路に倒れている敵に止めを刺しながら、逃げる敵に射撃しながら進んだ。
「ノリッピー!カスカベル!攻撃してくる奴らを操る者が壁の中に居るぞ!
探し出して始末しろ!
そうすれば奴らはもろい!」
リリーがインカムに叫びながら再装填したエレファントガンを撃った。
サブマシンガンを撃ちながら進む俺がちらりと後ろを見ると、5人以上のメンバーが倒れていて処理班の者達が倒れた者達に慌ただしく処置をしていた。
何人がやられたのだろう。
俺達は撃ちまくりながら進んだ。
続く




