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吸血鬼ですが、何か? 第7部 紛争編  作者: とみなが けい
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とてつもなく強烈な思念攻撃を受けた…俺のケツ花火が全員に共有されてしまった…はなちゃんありがとう。

俺の頭の中のまともに残っている部分がこれは攻撃だ!アレクニドの精神攻撃だ!と警報が鳴り響いているが、全く抵抗が出来なかった。

ぎゅっと目をつぶっても両手で耳を塞いでも周りの者の見せられているイメージが途切れなく流れ込んできていた。

俺は全く動けなかった。

つぎつぎと仲間のイメージが頭に流れ込んできて大混乱に陥っている。


真鈴が叫んでいる。


真鈴の目の前に品が良いが真鈴似の切れ長の目で鋭い顔つきの中年女性が粋な着物を着て長ドスを脇に持って頬をぴくぴくさせながら真鈴を睨みつけていた。

その女性の背後に『咲』と言う字を丸で囲んだ紋が入った法被を着たごつい男達が並んでいて口々に6代目!6代目!と呼びかけていた。


「かか様!違うのよ!

 この者達は愚連隊や暴力団とは違うの!

 素人衆を泣かせたりはしていないわ!

 立派な侠客の集まりよ!

 真鈴は!咲田組6代目として!

 真鈴は決して任侠道を踏み外していない!

 いや!連れ戻さないで!かか様ぁ!」


四郎が血まみれで馬に乗っている金髪青い目の上品な男に向かって必死に弁明していた。


「ああああ!怖かったのです!

 ポール様ぁ!われはとても怖かったのですぅ!

 怖くてうんこ漏らしてしまいましたぁ!

 おしっこもちびりましたぁ!

 逃げてしまいましたぁ!

 ポール様ぁ!お許しを!

 どうかお許しを!」


大混乱だ。


加奈がアゼネトレシュに銃剣を付けて叫んでいた。

加奈の前にはハルク状態の喜朗おじ以上にガタイが大きい悪鬼とやせ型だが身震いするほど冷血な顔をした悪鬼が立っていた。


「見つけたぁ!

 とうとう見つけたぁ!

 殺してやる殺してやる殺してやるぅ!」


喜朗おじが頭を両手で抱えながら叫んでいた。

江戸時代や明治時代、大正時代のハイカラな服、戦後すぐの服などの女性たちが喜朗おじを睨みながら握りこぶしをプルプル震わせていた。


「皆!皆愛しているんだよぉ!

 みんなみんな俺は愛していたんだよぉ!

 でも君達は年取ってしわくちゃになって行くじゃないかぁ!

 それで仕方なく!

 でもでもでもみんなを俺は愛していたんだよぉ!」


大混乱だ。


明石がサブマシンガンを捨て、江雪左文字を抜き放って叫んでいた。


でっぷり太った武将がいやらしい目つきで圭子さんや司や忍のからだを撫でまわしていた。 


「おのれこの狸爺い!

 くそ家康めが俺の妻と娘から離れろ!

 圭子!司と忍を連れてこっちに来い!

 ああああ!何をにやにやしてるんだぁ!

 早くこっちに!こっちに来い!」


ジンコが叫んでいた。

スーツを着た厳格そうな男が脇に抱えた大量のエロ本をどさりと投げ出してジンコを睨みつけた。


「パパ!違うの!違うのよ!

 これはわいせつ事件の研究のために手を入れたの! 

 研究材料なの!

 私は未成年だから裏の家の西田おばちゃんに頼んで手に入れたのよ!

 決して個人的な興味はないのよ!

 ああああ!鼻血が!鼻血が止まらない!

 決して!決して私はぁ!」


とても手に負えない大混乱だった。

真鈴達以外にもスコルピオメンバーや支援班や処理班、そして樹海の死霊達が自殺を思い立ち実行するまでのつらい記憶のイメージまでがとめどもなく流れ込んで来た。

静かだった樹海が阿鼻叫喚の地獄と化した。

リアルに頭が破裂してしまうのかもと言う恐怖に襲われた。


大昔の野盗か野武士の様なむさくるしく汚らしい男達がはなちゃんの前に並んでいた。


「おのれおのれおのれ!

 こんな汚らしい奴らを見せおってぇえええええ!」


はなちゃんがリュックから体を出して樹海に落ちた。

そしてむきぃいいいい!と叫んで露出している岩に自らのおでこを何度も叩きつけている。

後ろの方角から銃声が聞こえて来た。


「殺してやる!

 殺してやるぅ!」


加奈がぶるぶる震える手でアゼネトレシュを構えた。


「よせ!加奈!あれはポール様だ!撃っちゃいかん!」


四郎が叫びながら加奈の前に両手を広げて立ち塞がった。


「四郎!どけ!加奈の邪魔するなぁあああああ!」


加奈の凶悪な破壊力を持つエレファントガンである『加奈・アゼネトレシュ』が火を噴いてとんでもない轟音が樹海に響き渡った。

四郎が見えない強い力で頭を掴まれ、思い切り捻ったように首をのけぞらせて後ろに吹っ飛んだ。

加奈が奇妙な舞いをして反動を受け流してまた射撃姿勢に戻りもう1発撃った。

600ニトロマグナム弾が樹海の木を吹き飛ばしながら飛んで行き、樹海に大きな丸い空間が出来た。

加奈は血走った目で『加奈・アゼネトレシュ』を二つに折って空薬きょうを弾き飛ばして再装填した。


「どこだ!どこに消えやがったぁ!」


加奈が『加奈・アゼネトレシュ』の銃口を周り中に向けて叫んだ。


はなちゃんがまだ岩におでこを叩きつけている。


「見えた!見えたぞ!

 こしゃくなぁあああああ!

 むきぃいいいいいいい!」


はなちゃんが雄叫びを上げた。

その瞬間に俺の頭を破裂させそうな勢いで流れ込んできたイメージが消えた。

俺の前で情けない姿でお尻から花火の火花を吹き出しながら泣き叫び飛び跳ねていた小学生の俺も消え失せた。

俺は立っていられなくなり膝をつき樹海に手をついて大きく荒く息をついた。


「みんな大丈夫か!

 奴らの思念を封じ込めたじゃの!」


はなちゃんが叫んでいる。

その額には岩に思い切り叩きつけたひびが入っていた。


周りを見回すと皆が膝と両手をついて荒い息を吐いていた。

俺は震える手で額の汗をぬぐった。

暫く動けなかった。


「皆大丈夫か!

 被害の報告をせよ!

 動けるものは周囲を警戒!

 油断するな!」


リリーがよろよろと立ち上がり周りを見回しながら叫んだ。

俺は苦労してインカムを付け直した。

インカムからは別方向から突入口に向かっているカスカベル指揮官からの声が聞こえた。


「こちらカスカベル、思念攻撃を受けた!

 今は落ち着いている!

 損害、2名戦死、重傷3名。

 作戦続行可能。」


俺は立ち上がり倒れている四郎に近よった。

大の字になって仰向けに倒れている四郎に近寄りヘルメットを外してバラクラバを脱がした俺は息を呑んだ。

四郎の顔の左側が酷い内出血で赤黒く変色していた。

加奈はアゼネトレシュを抱えたままへたり込んで無表情で四郎を見つめていた。


「四郎!大丈夫か!四郎!」


固く目をつぶった四郎の顔が歪みゆっくりと目を開けた。


「おお…彩斗…われは大丈夫だ。

 加奈の600ニトロマグナム弾が頭の横10センチほどを通り過ぎただけだ。」


四郎の痣が見る見ると薄くなってゆくが頭痛が残っているようで四郎の顔が歪んだ。


「あああ!ごめんね!ごめんね四郎!」


われに返った加奈が駆け寄って四郎の体に抱き着いた。


「加奈、腕が震えていたからな。

 外れて幸運だったぞ。

 もう泣くな。

 しかし次は外すなよ。」


四郎が答えて俺はほっとした。

そしてインカムに言った。


「ワイバーン、被害状況を知らせろ。

 みんな大丈夫か?」


「真鈴、大丈夫よ。」

「ジンコ、オッケー。」

「明石、問題無い。」

「喜朗、なんとか大丈夫だ。」

「みんな大丈夫だな。

 こちらは四郎が軽傷、顔の痣が出来たがすぐ直る。

 周囲を警戒。

 気を抜くな。」


続いて俺はリリーにワイバーンには被害が無い事を伝えて、茫然とたたずむはなちゃんを抱き上げた。


「はなちゃん、助けてくれたんだね。

 ありがとう。」

「なんのじゃの。」


リリーがやって来た。


「彩斗、後方で処理班の一人が銃で頭を撃ちぬいたわ。

 一人戦死よ…その他の被害は幸いなかったけど。」


そこまで言ってリリーが唇を噛んだ。

仲間を失ったリリーの気持ちが良く判った。

しかし、予期していたとは言え、ここまで物凄い思念だとは思わなかった。


リリーがはなちゃんの顔を撫でた。


「はなちゃんが助けてくれたのね、ありがとう。

 突入する前に壊滅状態になる所だったわ。」

「なんのこれしきじゃの!

 この中でわらわが一番年長じゃから踏ん張らねばの!」

「うふふ、そうね、もうこの手の攻撃は来ない?」

「わらわは思念を発する奴の顔を見たじゃの!

 5人が体をくっつけて並んでいたじゃの!

 この思念は敵味方関係なく無差別に心を痛めつけるから他の奴らはどこかの部屋に避難していたじゃの!

 奴が思念を放射する時は周りの味方も被害を受けて動けなくなるからもう仕掛けて来ないとは思うじゃの。

 あの思念を発した奴が親玉だと思うじゃの。

 地下のどこか広い部屋にいたのをちらりと見たじゃの。」

「なるほど、だから奴らはこの位置で攻撃を掛けて来たのね。

 突入間近で攻撃されたら致命的になると思ったけど、そういう事か…とにかくはなちゃん助かったわ。

 女王アリは地下の広い部屋にいるのね?

 ありがとうはなちゃん!」


リリーが立ち上がりインカムに命令を出した。


「ここで小休止をする。

 各自コンディションを整えろ。

 周囲の警戒は怠るな。

 喫煙と飲食を許可する。

 携帯灰皿を持つ者と一緒に吸えよ。

 ポイ捨てしたり火事を起したら厳罰だぞ。」


リリーが煙草を取り出して火を点け、深く吸い込んだ。

俺も煙草を出して咥えると咥え煙草のリリーが火を点けてくれた。


「彩斗…ひどい目に遭ったんだね…おでこやちんぽこやケツに落書き、尻穴に花火…金玉焼かれて…あれはとても笑えないよ。

 強く生きてね。」


リリーが俺の肩を叩き、歩き去った。


…そうか、俺の頭にイメージが流れ込んだと言う事は皆の頭にもイメージが…。


ふと見ると落ち込んでいる四郎を明石と喜朗が慰めていた。


「四郎、戦場でくそを漏らすなど当たり前の事だ。

 俺だって何回かあるぞ、気にするな。」

「そうだぞ四郎、俺などはゲロを吐いてくそを漏らし小便をちびったら敵が憐れんで逃がしてくれた事も有るくらいだ。」


真鈴が横に立っていた。


「彩斗、ひどい目に遭ったんだね花火で金玉やちんぽこ焼かれるなんてしかもおでこやお尻や…おちんちんに落書きされて…酷過ぎてとても笑えないよ。

 気を落とさないでね。」

「いや、金玉とおちんちんは無事だったんだけど…ありがとう…真鈴…。」


俺はろくに真鈴の事を知りもせず、歴史ある任侠団体の6代目の娘を拉致して眠らせて吸血鬼の生贄にしようとしていた事を思い出してぞっとしながらも、体に落書きされてパンツ降ろされてお尻に花火どころじゃないとんでもない恥ずかしい経験があと3つと2分の1あるのだが、それが発覚しなくて助かったと思いながら携帯灰皿を手に持って煙草を吸った。


真鈴とジンコと加奈がはなちゃんのおでこを覗き込んであれやこれや言いながら応急処置としてはなちゃんのおでこにバンドエイドを貼り付けていた。

ジンコは実際に鼻血が出たようでティシュを鼻の穴に詰めていた。


戦死が3名。重傷者3名。

俺達は突入前に犠牲者を出してしまった。





続く





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