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吸血鬼ですが、何か? 第7部 紛争編  作者: とみなが けい
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リリーの作戦進行と戦術の説明…いよいよ俺達は樹海に乗り込む。

ノリッピーに代わってリリーが登壇すると、会場内でまた歓声が沸いた。


「ふぅ、ノリッピー前座をありがとう。」


演壇の端からどういたしまして―!とノリッピーの声が聞こえ、笑い声が起きた。


「さて、戦士諸君、気分はほぐれたかな?

 リリー姉さんが作戦手順を伝えるよ。

 しっかり頭に入れてね。

 まず、突入口と3つの出入り口までは樹海の中を進むよ。

 敵は、アレクニドは既に我々が攻撃する意図を察していると判断します。

 先ほど米軍のキーホール衛星群、低軌道偵察衛星が攻撃を受けて2つが機能停止そのうちの1つは大気圏に突入して燃え尽きたわ。

 残りの衛星は軌道変更して探査を中止。

 そしてカスカベルの戦闘要員を運ぶ自衛隊のチヌークヘリのうち1機が外部からの干渉を受けてエンジン不調になり不時着した。

 幸い戦闘メンバーに犠牲者は無く戦列に参加しているわ。

 米軍は沖縄から戦略偵察機を、横田から滞空時間が長い無人偵察機を飛ばしたけれど撃墜される恐れもあるしリアルタイムで詳細に地上の状況を知る事は難しくなったわ。

 幸いな事に岩井テレサが要請した応援の部隊が先ほど日本に到着して、警備の第2騎兵タランテラも全部展開できるけど、まだ見つからない入り口がもっと離れた所にあるかも知れないから私達の外周の警察の線まで監視体制を広げる事にしたわ。

 もしも見落とした出入り口から出て来たアレクニドが警察を襲ったら、恐らく目も当てられない騒ぎになるかも知れないからね。

 私達は警察も守らなければならないのよ。

 そういう訳で私達の人員は変わらないけどがっかりしないでね。

 そして、衛星やヘリの件もあってアレクニドの中には強力な思念放射を使う者がいる様子だわ。

 突入した時に思念放射で私達を混乱させる場合があるかも知れないけど己を強く持って幻覚などに惑わされないように注意するように。」


リリーの言葉で会場は静まり返った。


「私達は本来奇襲が得意なんだけど今回だけは敵も充分用意して待ち構えている所に飛び込まざるを得ないの。

 その辺りの覚悟はしてね。

 樹海を通って突入口に向かう時も戦闘隊形を維持して援護人員を守りながら進むわよ。

 本当はアレクニドの連中が撃って出て来て遭遇戦になれば少しは敵の数を減らせると思うけど、そうそう簡単に出て来ないと思う。

 奴等もそこまでバカじゃないと思うわ。

 突入口に辿り着いたら入り口ドアは爆薬で吹き飛ばし、突破口にドローンを飛ばして偵察しながら私達も飛び込むわよ。

 支援班は突入口を爆破したと同時に付近の樹木を伐採してスペースを作り、第1便のヘリが運んできた鉄板を敷き詰めて応急のヘリポートを作るわ、負傷した兵員は速やかに後方の医療施設に運ぶわよ。

 今回あの地下にどれだけの敵がいるか想像もつかないけど特に人間メンバーは怪我をしてもまだ戦えるなんて…。」


リリーが耳に手を当てて会場を見回した。


「わがまま言わずに収容される事!」


会場の者達が唱和してリリーが微笑んだ。


「そういう事よ。

 戦う人数が減るとか余計な気を使わないでよ!

 私達には強力な火力が有るんだし後で説明するけど戦術も練ってあるからね!

 死ぬ事を急いじゃ駄目よ!

 私達は誰も見捨てないからね!」


明石が俺に耳打ちした。


「勝てるぞ彩斗。

 不思議に思うかも知れないが兵隊の命を大切にする軍は強いんだ。

 軍勢の多さ少なさよりも士気の高さやこういう事の方が戦いに影響を与えるんだよ。」


数々の戦に参加して何百年も戦ってきた明石が太鼓判を押した。

立場を変えてもしも四郎や明石や喜朗おじが俺や真鈴、ジンコ、加奈を使い捨ての兵隊として先鋒にしたら俺たちはどう思うだろうか?

奴らの先鋒の兵隊は操られているとはいえその呪縛が解けた時、変わらずに戦い続ける事など出来ないだろう。

全員が決死の思いで必死にお互いを守り合いながら戦う俺達とは雲泥の差だろう。


そしてリリーがスプレー缶を取り出した。


「私達もいくつか対策を練ったわよ。

 まずはこれ。

 あの厄介な酸を吐きだす蜘蛛の化け物を見たわよね?

 岩井テレサの化学班があの酸を中和する液を開発したわ。

 もっとも実験が出来ないからぶっつけ本番になるけど酸に掛かったらすぐに支援班がこれをスプレーするわよ。

 かなり強いアルカリ性の液体だから取り扱いに注意する事。

 そして次に…あれ持って来て!」


演壇の袖から戦闘メンバーがFALバトルライフルを持って来た。

ショートバレルで銃身の下には40ミリのグレネード発射機が付いていた。


「急な事だったからあまり沢山用意が出来なかったけどね。

 皆も知っているようにこれは7・62ミリNATO弾を発射するわ。

 ストッピングパワーもかなり期待できる。

 そしてこのグレネードランチャーは弾がミソでね。

 75本のフレシェット弾が詰まっているわ、小さな矢ね。

 この矢には毒が塗られていて体に刺されば人間ならほぼ即死、別物でも昏倒するか少なくともかなり動きが鈍くなるわ。

 ソウドオフのショットガンより弾が広がるからこれの前に出ないでね。

 急ぎだけど何丁かは調達できた。

 さて、何故これを用意したかと言うとね。」


リリーが合図をすると大スクリーンにカスカベルとヤクルスが襲撃された時の赤外線映像が流れた。


「これはね、襲撃を受けたヤクルスの蔵前君の証言とワイバーンリーダーの吉岡君の推理を聞いて奴らの戦い方を詳しく分析してみたの。」


映像では突然湧き出たアレクニドが一斉にカスカベルのメンバーに襲い掛かっていた。


「これを見ると判るかどうか…つまり奴らはね一匹の強い別物が人間や小物の別物を操っているのよ。

 被害を恐れずに、兵隊を使い捨てにして大軍で敵に襲い掛かり混乱させている間に後ろに控えている強い別物がこれと言ったメンバーを攻撃するのよ。

 こういう人海戦術は厄介だけどね。」


また別の映像が流れ、恐れしらずに大軍で襲い掛かる兵隊の少し後ろにいた悪鬼が倒れると途端に兵隊たちは戸惑い動きが鈍くなり反撃を食らいつぎつぎと倒されていた。


「何らかの思念か洗脳か何かで前衛の兵隊を操っているのよ。

 つまり、この兵隊たちを操っている別物を探し出して早いうちに殺す事が私達が勝利する鍵なの。

 後ろで操っている別物を倒せば奴らはもろいわよ。

 その為に破壊力があるライフルを用意したわ。

 そしてこのグレネードランチャーで前衛の兵隊をある程度突き崩して親玉を探し出して大口径弾を撃ち込む事ね。

 上手く行けば毒を塗ったフレシェット弾が親玉の別物にも当たるかもしれないわ。

 勿論このライフルだけで敵の前衛を崩せるとは思わないから必ず援護のメンバーも撃ちまくってよ。

 このバトルライフルを持つ者の最優先事項は後ろで操っている奴を見つけ出して倒す事よ。

 強力な武器を持った、あの蜘蛛の化け物を一撃で動きを止められるような武器を持った者を中心にフォーメーションを組んで進むわよ。

 このフォーメーションを突破されたら、戦闘班の私達の後ろには戦闘のプロとは言えない支援要員や処理班がいるの、奴らに大量虐殺させないように体を張ってね。

 あいにくと地下はどれくらい枝分かれしているか判らないけれど、なるべく分散せずに固まって進むわよ。

 こちらもどれほどいるか判らない敵に合わせて戦力を分散する戦法はとらないわよ。

 私達もドローンを先行させてリアルタイムで地下の地図を作成してなるべく固まって進む予定だけど、迷子と同士討ちには十分気を付けてよ。

 奴らは私達と似たような戦闘服を着ているのが多いわ。

 明らかに敵だと判らなければ必ず誰何して、そして誰何されたら自分が所属しているチームの名前を必ず2回言う事を徹底して。

 勿論返事をしないと弾が飛んで来るわよ。」


ここまで話してリリーがバトルライフルを置いた。


「そして研究の結果、あの地下には恐らく女王アリや女王バチの様な存在が居ると判断したの。

 私達が最優先に始末するべきはその女王アリよ。

 アレクニドの体制から考えるとそいつを倒せば残りの奴らが相当混乱すると思われるわ。

 何とか親玉のそいつを探し出して始末すれば、どんなに大勢の敵がいても勝つチャンスは充分にあるわよ!

 よい?、みんな!

 ノリッピーも言ってたけど、この戦いに負ける訳には行かないよ!

 この星の、人類と私達の未来を決める大事な戦いなんだと肝に銘じて!

 皆に大きな幸運を!

 簡単に死ぬな!

 仲間を見捨てるな!

 敵を撃滅しろ!

 10分後に出撃!準備に掛かれ!」


会場に気合が入った掛け声が溢れ、全員が立ち上がり、走り、出撃準備に取り掛かった。



10分後。

午後8時20分、俺達ワイバーンはリリー、ナナツー達と埼玉県警のバスに乗り込んで他の警察バスと、資材を積んだトラックと共にパトカーの先導で校庭を出た。

いよいよ樹海に乗り込む。

雲の切れ目から上弦の月が見えた。


リリーが俺の横にやってきた。


「彩斗、あなた見えるようになっているわよね。

 ひとつ樹海では厄介な事があるわ。

 雑音に気を取られないようにね。

 トリガーを引く時は気を付けなさいよ。」



リリーがにやりと薄笑いを浮かべた。



続く

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