↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
吸血鬼ですが、何か? 第7部 紛争編  作者: とみなが けい
PR
16/32

喜朗おじと加奈は親子になった…俺達は絶対全員生き残る!…そして貴重な地下の情報が手に入った。

「…なぁ…ヲタ地雷の件なんだがさ…せめてもう少しかっこ良い名前に…」


喜朗おじがぶつぶつ言っていた。

少し気の毒に思ったがズラを被って偽の長髪を振り乱してヲタ芸をする爺いではしょうがないなと俺達は苦笑いを浮かべて黙殺した。


「せめてさぁ、ネオアームストロングヲタ地雷とか…」

「あ~もう却下却下!

 呼び名が長くなるじゃん。

 皆あの地雷の効果はじっくり理解しているし感謝しているから我慢しなよ…喜朗父。」


加奈が言い、喜朗おじの足が止まった。


「加奈……今…喜朗…父と…」


加奈が喜朗おじを振り返り、少し恥ずかしそうに言った。


「うん。もう本当のパパより長い間面倒見て来てくれたしね…喜朗父は…今更喜朗パパと言うとなんか変な誤解する奴が出るかも知れないからさ…だから…これから加奈はね…喜朗父と呼ぶよ。

 …喜朗父…今まで苦労かけてごめんね…そして…ありがとう。」


喜朗おじは持っていた爆発済みのヲタ地雷を落とし、両膝をついて身を屈め両手で顔を覆ってプルプルと震えていた。


「…加奈!…加奈!…こんな俺を父と呼んでくれるのかぁ!…ぐぐぐぐぅ!…うぐぐぐぐぅ!」


加奈が慌てて喜朗おじに駆け寄り肩に手を当てた。


「ちょっとやだぁ!

 泣いたりしないでよぉ!

 喜朗父らしくないよぉ!

 今まで授業参観の時も喜朗おじの事あれは私のおじいさんとか言っててごめんなさい!

 私はずっと喜朗父を…大事な父と思っていたよ!

 だから…泣かないでよ!

 もう…加奈まで…加奈までぇ!」


加奈が喜朗おじの体を抱きしめた。


「加奈!父と呼んでくれるのかぁ!

 ぐうううぅ!」

「喜朗父~!」


喜朗おじが加奈に抱き着き号泣をはじめ、加奈も喜朗おじの体を抱きしめて泣き始めた。


俺達は抱き合って泣く喜朗と加奈『親子』を、言つめていた。


「うう!遂に加奈は言ったのね!」


真鈴がボロボロと涙を流しながら言った。


「この前加奈とアニメを見ていた時に、加奈が私も喜朗おじの事パパって呼んでみようかな?でもそれだと本当のパパに申し訳ないんだよね、と言ってたのよ。

 それで私、見ているアニメで主人公の女の子が父と呼んでいるシーンが有るから『喜朗父』と呼んでみたら?と答えたのよ。

 加奈はじっとテレビを見ながら、いつかそう呼べる時が来たらねって呟いていたのよ…。

 ついに…ついに言ったのね!

 うぐぅ!うぐぐぐぐぅ!」


真鈴の言葉を聞いたジンコも圭子さんも、司も忍も涙を流しながら加奈と喜朗親子を見つめ何度も頷いていた。

はなちゃんも白目を剥いて感動じゃの!と叫んでいた。

俺や四郎、明石も目に涙を浮かべていた。


いつかそう呼べる時。

そう、これから近いうちに俺達は第1騎兵カスカベルに奇襲をかけて壊滅状態に追いやった、今まで戦った事が無い高い戦闘力と高度な統率力を持つ組織と戦うのだ。

余程の奇襲でない限り向こうも体制を整えて迎撃の準備をする地下の迷宮の中に飛び込む事になる。

これは最早、質の悪い悪鬼の討伐と言う次元よりも遥かに厳しい戦い、いや、紛争、いや『戦争』なのだ。

どんなに頑張っていてもワイバーンのうち1人、いやもしかしたら何人かは富士の樹海の地下から帰れなくなるかもしれない。

加奈が今のうちに喜朗おじを喜朗父と呼んだ気持ちが痛いほど判る。

明石は思いを伝えたい人に遺書を書いておけと言った。

加奈が喜朗おじを喜朗父と呼んだのは遺書よりもずっとずっと重い、ずっとずっと伝えたかった気持ちなんだろう。


死亡フラグ?

加奈か喜朗おじのどちらか?

それとも二人とも?


俺は泣きながらも頭を振り、その不吉な考えを振り払った。

四郎が俺の肩に手を掛けた。


「彩斗、われ達は全員生き残るぞ。

 ワイバーンは全員戦って生き残り、またここに戻って来るんだ。

 誰も死ぬ事は許さん。」


俺は黙って俺の肩の四郎の手を握りしめて深く頷いた。

俺たち全員生き残ってこの死霊屋敷に戻って来るんだ。


その後俺達はまたみっちりとサブマシンガンとピストルの扱いを含めた猛練習を行った。

いつも以上に気合が入った練習になった。


その晩、死霊屋敷での最後の夕食をキャンプファイアーを囲んで俺達はとった。

みんななぜかいつもより浮かれた気分でいた。

これから起こる戦いの不安を打ち消すためだろうか。

浮かれながらも酒自体はあまり飲まなかった。

食事をしながら今までの思い出話に花が咲いてとても楽しい時間を過ごした。

生死を共にした仲間達と、家族以上の繋がりを持つ仲間達と。

これは経験した者にしか判らない贅沢な物だろう。

命を懸けてお互いに守り守られて生き残って来た仲間。

普通に生きて来てこんなにも強い繋がりを人と持てるだろうか。

この中の誰一人欠けてもいけない。

全員無事にまたここに集まってキャンプファイアーを囲んで酒を飲み食事をしたい! 


「また全員が集まってさ、きっと全員で!絶対全員でこんなパーティしようね!」


加奈が笑顔で叫んだ。


「そうね!生き残るよ!」

「また全員で!絶対に!」

「絶対に全員でまたパーティを!」

「その時は吐くまで飲むよ!」

「ワイバーンに幸運を!」

「そう!ワイバーンに幸運を!」

「ワイバーンに幸運じゃの!」


俺達は口々に叫んだ。

叫びは祈りだった。


翌朝、午後に死霊屋敷をいったん引き払う事にした俺達が朝のトレーニングをしようとする時に客が来た。

リリー達がスコルピオのメンバーと隊長、そしてカスカベルの生き残りメンバー数人と第8騎兵ヤクルスのメンバーの1人、人間メンバーの20代の男が数台の車に乗ってやって来た。


「皆、朝早くに御免なさい。

 私達も忙しいけど事前のブリーフィングをここで出来るだけ細かくしようと思うのよ。

 作戦開始8時間前までに攻撃予定地点に集結するけどその時はあまり作戦説明に時間を掛けられないのよ。

 今ここで私達が突き止めた限りの情報と攻撃手順を教えるわ。」


そう言ったリリーも他のメンバーも憔悴している顔つきだった。

恐らく徹夜続きで情報収集と作戦立案をしていたのかも知れない。

俺達は暖炉の間に集まった。

人数が多いのでダイニングの椅子なども集めてなんとか全員が座る事が出来た。


「早速始めるわよ。

 まず、あの地下の状態が少しわかったのよ。

 カスカベルとヤクルスの生き残った人間メンバーが潜入に志願してね…成功したの…奴らに見つかってかなりの被害者を出してしまったけどね。

 これからその映像を見せるわ。

 あ、司と忍には見せない方が…。」


リリーの言葉を聞いて察した圭子さんが司と忍に2階に行くように言った。

司と忍は素直に2階に上がって行った。


俺達はカーテンを引いて暗くした部屋でスクリーンに映し出されるプロジェクター映像を見る事になった。


リリーがスクリーンの横に立った。


「これはね、カスカベルとヤクルスの生き残りの人間メンバーがやくざに扮装してね、ヤバい物を捨てに来たところでたまたま洞窟の奥に入り口を見つけたと言う設定で潜り込んだのよ。

 眼鏡に設置した超小型カメラの映像とネックレスに仕込んだ小型ピンマイクの音声だから少し荒いかも知れないけど、地下から生きて返ってきたメンバーの貴重な映像なの。

 少し我慢してね。

 彼は今回潜入に参加してくれたヤクルスの人間メンバー、蔵前君よ。

 最初は別物が動物に変化して侵入しようとしたけど、向こうにもはなちゃんの様な存在が居るらしくて近づけなかったわ。

 皆返り討ちに遭って入り込めなかった。

 そこで彼ら彼女ら人間メンバーが決死の侵入をしたの。」


リリーに言われた蔵前君が立ち上がって俺達に一礼をした。


「彼は今回の殲滅作戦にも志願して私達スコルピオと行動を共にするわ。

 それでは始めるわね。

 潜入には人間のメンバーだけで行ったの、私達別物、悪鬼がいると余計な警戒をされてしまうから、あくまで彼ら彼女らはやくざがヤバいものを見つからない所に捨てに来て、たまたま地下の入り口を発見したと言う事にしたのよ。

 武装もやくざが持つようなちんけなピストルとナイフくらいでね。

 5人が潜入して生きて帰って来たのは…蔵前君だけだった。

 今から見せるのは蔵前君のカメラ映像と音声よ。

 今回の事で奴らも警戒するようになったかも知れないけど、私達がのどから手が出るほど欲しい地下の状況が判ったのよ。

 これは大収穫よ。

 彼ら彼女らの犠牲は絶対に無駄にしないわ。」


俺達はヤクルス生き残りの蔵前君を見た。

蔵前君は椅子に座り微動だにせず、歯を食いしばりこぶしを握り締めて暗いスクリーンをじっと見つめていた。

彼はどんな惨劇を見たのだろうか…。


そして映像が始まった。








続く




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。