俺達ワイバーンは地下戦闘での戦術を再確認して練習をした…喜朗おじの新兵器の披露が凄かった…役に立つ破壊力そして名前も。
仮眠を終えた俺達は早朝トレーニングを取りやめ、ダイニングで朝食を食べた後で、司と忍は宿題のラストスパートに、圭子さんは2人の監視に2階に行った。
残った俺達はガレージに行き、リリーから貰った装備を手にしながら俺達なりの戦術の確認をした。
明石が講師で四郎がその助手、喜朗おじが時々アドバイスをすると言う感じで進めて俺達が質疑応答をするスタイルになった。
明石が暗視装置を手に取って話している。
「さて、あの写真で見ると地下での戦いになると言う事だな。
謎の集団には人間のメンバーもいると言う事で最低限の照明設備はあるとは思うがやはりこれは持って行くべきだと思う。
俺達は夜目が利くとは言え真っ暗闇でも見える訳では無いからこれは外せないだろう。」
そう言いながら明石は暗視装置をテーブルに置き、スプレー缶を手に取った。
「それともう一つの問題はあの地下の様子が今の所全く判らないと言う事だ。
君ら、あの新宿で有りながら無人の巨大マンションでの戦いを覚えているか?」
1か月前、新宿と言う大都会なのにほぼゴーストタウン化した団地が並ぶところに隣接する無人の巨大マンションで5匹ほどの小物の悪鬼の始末した事を明石は言っている。
「あの時はあの広いマンションで数匹の敵がいて俺達も分散して捜索するしか無かったな。
小物のくせに、いや、小物だからこそ身を隠すのが上手かった。
はなちゃんは音の壁を張り巡らせていたから建物の中の捜索は出来なかったな。」
「そうね景行、あの時は同士討ちを2回しそうになって怖かったわ。
見つけて始末するのは簡単だったけどね。」
真鈴が状況を思い出して言った。
「そうなんだ、同士討ちは不案内な所で分散して戦う時に付き物の問題だ。
インカムを駆使してお互いの場所を把握していながらあのざまだった。
そして今回はもう一つ問題がある。
それは迷子になる事だ。
そして地下でどのくらいインカムでお互いに連絡をとれるか不安な所もある。
そこでだ。」
明石がスプレー缶を顔の前にあげた。
「これは蛍光塗料が混ざっているスプレーだ。
少しの明かりでも良く見える。
俺達は侵入した時に角々に目印でこれを壁や床に吹き付ける。
これで分散しながら戦って万が一迷子になってもこれを辿って入り口まで帰りつける。
なるべく装備を少なくしたいが、これは必需品だと思うな。」
明石がスプレー缶をテーブルに置いた。
「そして俺達のフォーメーションの事だが。
俺と四郎が先鋒、まぁフォワードだな、そして中堅に加奈と喜朗おじ、そして後衛が彩斗と真鈴とジンコとはなちゃんと言う感じになる。
俺達の人数からしたら、最大でも2手に分かれて戦うと言うのがやっとだ。
その場合は俺チームと四郎チーム、便宜的にA、Bチームに分ける、その場合はAチームは俺と喜朗おじと真鈴、ジンコで、Bチームは四郎を先鋒にして加奈、彩斗、はなちゃんと言う編成にしようと思う。」
「うむなるほど、それはリリーにも伝えておこう。
われ達は最大で2チームと言う事だな。」
「そうだな四郎、リリーのスコルピオで何人地下に投入できるか判らんが、スコルピオも地下で有る程度分散する事は考えていると思う。
その時どう言う風にチーム分けするか考えている筈だ。
俺達の限界を教えて置く事は必要だな。
ワイバーンは最大2チームと言う事は伝えるべきだ。」
ジンコが手を上げて言った。
「出来れば突入前にリリー達とブリーフィングとかしておきたいわね。
最低でも何人か代表で作戦会議と打ち合わせに出席できないかな?」
俺達はスコルピオやカスカベル、タランテラと共同作戦をした経験はある。
指揮系統が違う集団との共同作戦にはいささか難しい所があるのだ。
事前の打ち合わせは絶対に必要だ。
「うむ、ジンコの言う事はもっともだ。
リリーはこの前に同盟チームのスキルに合わせて配置を決めると言っていたし、なんとか事前に作戦打ち合わせの時間を作ると言っていたがな。
いかんせん今のところ内部の状況が全く判らないのでリリー達も頭が痛いだろう、最悪ぶっつけ本番の作戦になると言う覚悟もしておかないとな。
キリングハウスを作って共同練習など望む事は到底無理だとは思うぞ。」
「そうだな四郎、まぁ、俺たちで可能な限り事態に備える準備はしておこう。
地下通路で逃げ場が無い所で多数の敵がわらわら湧いて来る事も想定しておかなければならないからな。」
「うむ、今回は先鋒のわれも景行もあのサブマシンガンを持って行く。
まず敵と遭遇したら撃ちまくるが弾が尽きたらその後はサーベルや日本刀での接近戦に持ち込むつもりだ、俺たちの背中を撃たないように頼むぞ。
君らも急に接近戦の真っただ中に飛び込む可能性もあるからな。
俺達が突っ込んだらすぐ後ろに付いて来てくれ。」
四郎の言葉に明石が頷いた。
「その通り、もう君らは充分判ると思うが悪鬼は銃撃だけで倒せないと言う事を、もう一度頭に入れておいてくれ。
俺と四郎が可能な限り敵をぶっ壊す、すぐそのあとを君ら人間メンバーが動けなくなった奴らに止めを刺してくれ。
完全に再生が無理に、息の根を完全に止めてくれ。
もっとも大量に涌いて来て接近戦に持ち込まれたら大混乱すると思うがな。
落ち着いて目の前の敵を完全に殺す事を考えて行動してくれよ。」
明石が苦笑いを浮かべると喜朗おじが手を上げた。
「まだ試作品なんだがな。
景行が言ったようにわらわらと無数の敵が正面から湧いて来た時に先鋒を一掃する物を作ったんだよ。
いきなり接近戦に飛び込むよりは相手の機先を制して有利に戦えるかも知れん。
後で実験するからみんな見てくれ。」
喜朗おじが鉄でできた少し湾曲した弁当箱のようなものをテーブルに置いた。
弁当箱からはコードが伸びていてその先に小さなグリップスイッチが付いていた。
「喜朗おじ、それは何?」
加奈が尋ねると喜朗おじがニヤリとした。
「武器庫に大量にあった手榴弾と擲弾の使い道を考えていてな、まぁ、後で見せるよ。
何個も持って行けないと思うが、いざと言う時に役に立つと思うぞ。
加奈の雷でも広い範囲の敵を一掃するのは難しいからな。」
その後俺達はガレージ地下の照明を消して暗視装置を付け、耳栓をはめてUMPマシンガンの射撃訓練をした。
反動に癖があるが慣れれば狙ったところに即座に弾を送り込めるようになった。
しかし30発入りの弾倉は撃ちまくるとすぐに空になる。
そして、動きに支障が無い程度に持って行ける予備のマガジンはせいぜい3~4本と言う事が多少無理をしても6本だと判った。
敵の数を予想したら、そして人間よりもはるかにタフな悪鬼相手と言う事を考えればあっという間に撃ち尽くすだろう。
俺達は素早いマガジンチェンジのやり方、マガジンチェンジが間に合わない時にホルスターからやはりリリーから供与された40口径のSIGピストルを素早く抜いて撃つやり方、尚且つ弾切れになったマシンガンを下げてナイフや槍で戦う準備をする訓練をみっちりとした。
今更付け焼刃になるような物だと思うが、少なくとも事前に動作の訓練をしておけば実戦でまごつく事も無いだろう。
マシンガンもピストルもサウンドサプレッサーを付けていたが、それでもやはり大量に撃っていると耳なりがしてくる。
耳栓無しでここで射撃を続けたらたちまち難聴になるだろう。
最後まで頼りになるのはやはり槍や刀の部類になる。
狭い地下での接近戦か…。
誰も不安は口に出さなかったが俺達人間メンバーの顔は緊張していた。
練習を終えて屋敷に戻ると宿題をすべて始末した司と忍がはしゃぎまわっていた。
「あ!彩斗!加奈!ジンコ!皆!凄いんだよ!」
忍が俺達に駆け寄り声を上げた。
司も興奮した様子で話した。
「ママと埋めた種がね芽を出したんだ!」
「おおそうか!」
明石が嬉しそうに言って司と忍を肩に乗せてみんなで畑に行った。
耕されて畝が出来たところにぽつぽつと緑の小さな芽が顔を出していた。
「うわぁ~!本当!
司、忍、何を植えたの?」
加奈が尋ねると司と忍は顔をしかめた。
「それがねぇ、ママが教えてくれないんだよ。
何が出来るか楽しみにしていなさいってね。」
「でも食べると美味しいものだって言ってたわ!」
俺達は笑顔で畑を眺めた。
このささやかな命の芽吹きがとても貴重で美しく思えた。
俺達は屋敷に戻り、少し遅い昼食をとった。
ガレージの地下に4時間もこもっていたのだ。
昼食後に喜朗が作った新兵器の試作品の実験を見る事にして俺達は屋敷から出てこの前あほ兄弟が凄まじい射撃を見せた土手がある所に行った。
喜朗おじがべニア板で作ったマンターゲットを数個並べて建てた。
「米軍のホリゾント型地雷を参考にして作ったんだ。
屋敷を守る武器をと作ったんだよ。
上手く行けば扇形に広がって前面にいるかなりの悪鬼を同時に倒す事が出来ると思う。
即死とまでは難しいかも知れんが暫く動けなくなるくらいのダメージを与えられるぞ。
こちらの面には500個のベアリングが詰まっている。
4個の擲弾が後ろに控えていてその破片を含めるとかなりの鉄片が銃弾より速い速度で飛んでゆくのだが、その爆発の威力に後ろ側の鉄板が破れないようにするの中々苦労してな、爆破する者も吹き飛んでは全く意味が無いし…」
「うむ、喜朗おじ、説明はあとで詳しく聞くと言う事で、実験して欲しいのだが…。」
「おお、そうか四郎。
これから良い所なんだがな…。
まあ良いか。」
喜朗おじが弁当箱の湾曲した山形に張り出た面をターゲットに向けて置き、裏側のパネルを引き出した。
パネルの舌がギザギザになってていて地面に食い込むようになっている。
喜朗おじが弁当箱を足で踏みつけてから出ているコードを持って後ろに下がった。
「悪鬼相手の必中距離は50~100メートルと言う所かな?
人間相手なら200メートルあたりまで少なくとも行動不能にできると思うぞ。
今はターゲットから40~50メートルと言う所かな?
みんな一応安全のために伏せてくれ。
司と忍はヘルメットを…おお、被っているなよしよし。」
伏せた喜朗が手に持ったスイッチをみんなに見せた。
「このグリップを一度押し込むと緑のランプが付く、そしてもう一度押し込むと赤のランプが付き、発火準備完了だ。
さて、物凄い音がするしもしかしたら破片が飛んで来るかも知れないから皆さっき配ったシューティンググラスを掛けてくれ。
準備は良いか?
あ、はなちゃん、音の壁を頼むぞ。」
俺達は地面に伏せてシューティンググラスを掛けてターゲットを見つめた。
「じゃ、行くぞ!」
喜朗が赤いランプがついているグリップスイッチを握り込んだ。
加奈の雷以上の爆音が轟き、ターゲットが白い煙に包まれ、皆、頭を抱えて悲鳴を上げた。
顔を上げると弁当箱前面に並んで立っていたターゲットの3つが消え失せていた、そして
両側のターゲットも遠くから見ても判るくらいに穴だらけで一つは半分に折れかけていた。
「凄いな…」
明石が呟いて立ち上がりターゲットに歩いて行き、全員が付いていった。
消え失せたと思っていたターゲットは弁当箱から飛び出したベアリングと擲弾の破片で粉々に引き裂かれてばらばらに散らばっていた。
喜朗おじは爆発した弁当箱を手に取って裏側が破れていないかチェックをしていた。
「どうやら大丈夫そうだな。
だが、安全の為に発火する者はヘルメットと防弾チョッキをして後方5メートル、最低でも3メートルは離れた方が良いな。
発火する時は絶対に顔を伏せてくれ。
下が地面だと発火する前に靴で地面に押し込む事だな。
下がコンクリートだと爆発の影響で弁当箱が後ろに飛んでくるかも知れんが、ヘルメットをしていれば問題は無いだろう。」
俺達は喜朗の説明を聞きながらターゲットを見つめた。
弁当箱からおよそ60度以上に扇形に広がりながらベアリングと鉄片が銃弾よりも早い速度で飛んで行き、真正面のターゲットは粉々に消し飛び、両脇にあったターゲットも人間なら即死状態のダメージを負っている。
「これは…凄いな。
地下でわらわら湧いた奴らが固まってきたら先頭から何体かは跡形もなく吹き飛ぶし、後続の奴らも相当な痛手を受けるはずだ。」
明石は弁当箱の破壊力にやや呆然としながら呟いた。
「そうだろうそうだろう。
米軍の地雷だと700個のベアリングを使っていると書いてあったがな、華奢な人間でなくタフな悪鬼相手なので一回り大きなベアリングを使う事にしたんだが正解のようだな。」
「うむ、これで先鋒を崩してわれ達が斬り込めば、そして彩斗達がすぐ後に続いて止めを刺しまくればかなりの数の敵でも粉砕できるぞ。」
「ふわぁ~!凄いですぅ~!喜朗おじ、何個作れるの?」
「頑張れば1日2個は作れるな。
材料を持って行けば店を閉めた後でも1日1個は作れるぞ。」
「よし、これなら地下の作戦に何個か持って行けるな。
俺達が生き残る可能性も高くなったぞ!」
明石が笑顔で言った。
「景行!名前はどうする?」
真鈴が手を上げて言った。
確かに武器に名前は必要だ。
戦いの真っ最中にあれとかこれとか言っても混乱するだけだから。
皆が考え込んだ。
「喜朗おじ地雷…長いな…。」
「オリジナルがクレイモアと言うぞ。」
「じゃあ喜朗クレイモアか…ちょっとな。」
「ちょっと言いづらいわね…。」
「喜朗の弁当箱と言う事で喜朗弁当箱…長い、長すぎる。
喜朗おじならではのニュアンスも入れたいな…。」
またみんな考え込んでしまった。
「決まり!ヲタ地雷!
ヲタ地雷で決まりですぅ!」
「ちょっと加奈…。」
「成る程呼びやすいな。」
「ちょっと景行…。」
「オじゃなくてヲって所がミソなのね!」
「ちょっと真鈴…。」
「決めた!呼びやすいし聞き間違いが無くて機能的よ!
それに喜朗おじの特徴もしっかり入っているし!
「ちょっとジンコ!」
「ヲタ地雷に決定!
喜朗おじありがとう!」
「ちょっとみんなぁ~!」
喜朗おじが両手で顔を覆い、加奈が嬉しそうに叫んで新兵器は『ヲタ地雷』に決まった。
俺達はまた一つ強力な武器を手に入れた。
続く




