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吸血鬼ですが、何か? 第7部 紛争編  作者: とみなが けい
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俺達はスコルピオの訓練を取り入れたいと思った…そしてリリーから加奈にプレゼントが…最高の芸術品で最強の武器、加奈嬉し泣き。

屋敷に帰り付いて暖炉の間でコーヒーを飲んでいた俺達。

窓を開け放ち、8月の暑気もここでは少し和らいで涼しい風が吹き込んでいて快適だった。


「ふわぁ~!

 加奈もせめてあほ兄弟並みにピストル戦をこなせるようになりたいですぅ~!」


あのあほ兄弟の人間離れした射撃術を見ていながら、恐れしらずで負けん気が強い加奈が言った。

皆がニコニコしながら加奈の言葉を聞いていたが、心の中で加奈ならやればできるだろうなと思っていた。

加奈はジンコ加入の時にリリーと約束したエレファントガンの撃ち方を時々スコルピオの練習場に行き練習していたのだ。


「じゃあ、加奈もあの化け物銃の練習で不規則に動くと言う標的を見たんだな?」


喜朗おじが尋ねると加奈が答えた。


「ふぁい、加奈が練習する時は他の隊員さんをあまり見なかったし、さっきの射撃術の練習も見なかったけど、左右に動きながら不規則に上下する標的で撃ち方の練習はしたですよ~!」

「うん、それはどういう構造なんだろうか?

 うちでも作ってみるかな。」


喜朗がメモと取りだしペンでレール?トロッコ?と書き始め、リリーが苦笑いを浮かべた。


「あら、喜朗おじ、私に聞きなさいよ。

 あれはね、標的の部分を掘り下げて簡単なレールを敷くのよ、そこに弾着の衝撃でも倒れないくらいの重さのトロッコを乗せてね。そして標的を付けているのよ。

 ギアを組み込んでトロッコが動くと上下に動く仕組みよ。

 ギアも少し手を入れていてね、あまり規則正しい上下運動をしないように細工してあるわ。

 左右に人がいて引っ張っても良いし、小型エンジンで動かしても良いわね。

 うちの練習場では複数のレールが敷いてあって同時に4つ迄トロッコを動かせるようになっているわ。」

「なるほど、研究してみよう。」

「喜朗おじ、それは良いな!」

「うむ、より実戦的な練習が出来るぞ。」


リリーが笑顔で四郎達を見ながらコーヒーを飲んでいていきなり声を上げた。


「あ!忘れてたわ!

 ちょっと車に行ってくる!」


リリーが暖炉の間を出て行った。


「なにかな?」

「なんだろね?」

「なんだろうか?」


俺達が口々に疑問を現すとあほ兄弟がニヤリとした。


「恐らくあれですよ。」

「うん、あれだと思います。」


やがてリリーが細長い木箱と梱包された段ボール箱を持って来た。


「リリー、それは何だ?」

「うふふ、わたしから加奈に個人的なプレゼントよ。」


そう言ってリリーはテーブルを引っ張って来て木箱を乗せた。


「ふわぁ!加奈にプレゼントですかぁ!

 なんですかなんですかぁ!」


加奈が飛び跳ねながら木箱に近づき、俺達も木箱の周りに集まった。


「加奈の合格祝いよ。

 免許皆伝のしるしに作ったのよ。

 開けて見なさいな。」

「ええええ!

 リリー!ありがとう!

 ありがとうございますぅ~!」


加奈が泣きだした。

どうやら木箱の中身を加奈は知っているようだ。


「加奈、泣いていないで木箱を開けてよ!」

「早く早く!じらさないで!」

「加奈!早く開けて!」


加奈が木箱を開けた。

そこには鮮やかな紅の布が敷かれた上に置かれた、あのエレファントガンが横たわっていた。

木箱を覗き込んだ俺達はふわぁ~!と声を上げてしまった。

重厚なダブルバレル頑丈極まりない薬室周り恐らく厳選されたであろう木材から削り出されたストックが上品な輝きを放っている。

そして、よく目にするあのベレッタの超高級品のライフルやショットガンの様に見事極まりないエングレーブ、彫刻が施されていた。

加奈が恐る恐るエレファントガンを手に取った。

バカでかい銃口と肉厚の銃身。

絶対にこれを向けられたくないと思った。

始めに廃ボーリング場でリリーがこれを構えた時に明石が慌てて俺達に気を付けるように叫んで物陰に隠れた事を今、実感として感じた。


「ふわぁ~!」


加奈はうっとりとエレファントガンを見つめていた。


「練習に使ったエレファントガンより400グラムくらい重くなっているわ。

 加奈にはそれくらいの方が反動を制御できると思う。

 弾も500発持って来ているから練習は続けてね。

 500発のうち50発はアーマーピアシングと弾の後部が炸裂する特殊弾だから実戦で使う時はあくまですごく厄介な奴相手にしてよ。

 雑魚相手ではもったいないからね。

 そして、うちの拘りとして着剣装置が付いているわ。

 着剣するとかなり重くなるけど加奈ならいつか使いこなす事が出来るかもね。」


確かにダブルバレルの銃口下側に銃剣を付ける突起が付いていた。

リリーが紅の布をめくると凶悪極まりない刃の銃剣が顔を見せた。

こちらにも見事なエングローブが施されている。


「もっともこれを食らった奴に止めの必要も無いかと思うけどね。」


リリーが段ボールの蓋を開けて600ニトロマグナム装弾の弾を一つ取り出してテーブルに置いた。

ごとりと音を立てて置かれたエレファントガンの弾はばかばかしいほど巨大だった。

加奈は練習でこんなでかい弾を撃っていたのか…。


「あれ?

 リリー、ここにKANAって彫ってありますぅ!そして次に…読めないですぅ!」


バレルの薬室周りの部分に流麗な筆記体KANA・ATSINILT,ISHと彫ってあった。


「ほほ、それは加奈・アゼネトレシュと発音した方が良いかな?

 私のアポイエル族の西隣の部族、ナバホ族の言葉で雷と言う意味よ。

 つまり『加奈・アゼネトレシュ』加奈の雷と言う意味ね。

 加奈がエレファントガンの練習を始めた頃に私がね、とっくに退社したベレッタの腕利き彫金師を探し出してもらってね頼んで彫ってもらったのよ。

 大事に使ってね。

 ちょっと酸化成分が強い厄介な火薬を使ってるから手入れはこまめにね。」

「ふぁい!ありがとうございますぅ!

 加奈は『加奈・アゼネトレシュ』を!加奈の雷を大事に扱いますぅ!

 加奈は!加奈は大感激ですぅ!」


加奈は再び目から涙が溢れ、俺達はエレファントガンを見つめてため息をついた。

今まで四郎達が武器に名前を付けるのをふ~んと言う感じで思っていた俺でさえも愛用の武器に名前を付ける意味を素晴らしく思ってしまった。


「ママ!プリント終ったよ!」

「早く早く!撃つのを見たいよ!」


司と忍が階段を駆け下りて来た。

息を切らせて俺達の所に来た司と忍に圭子さんがすまなそうに言った。


「ああ~!

 ごめんね、射撃練習終っちゃったのよ~!

 遅かったわね~!

 ごめんね~!」

「うひ~!くやしい~!」

「見たかったのに~!」

「忍!これは大人のいつもの手だよ~!」

「まんまと踊らされてしまった~!」


司と忍が残念そうに地団太を踏み、そして加奈が持っているエレファントガンに目が行った。


「あれ?

 加奈姉、それ何?」

「加奈姉、なんか凄いねそれ!」

「うふふ?

 じゃあ、代わりにこれを見せてあげる。

 これはね、『加奈・アゼネトレシュ』加奈の雷と言う名前のライフルよ。

 リリーから頂いたのよ。

 後で撃つところを見せてあげる。」


加奈がそう言って暖炉の前のテーブルにエレファントガンを持って行き、ごとりと置いた。

それにつられるように俺達も加奈について行き、低いテーブルに置かれた『加奈・アゼネトレシュ』を囲んだ。

ずっと見ていても全然見飽きない見事なライフルだった。


「すご~い…加奈姉…触っても良い?」

「私も触ってみたい…。」


司と忍が加奈を見上げた。


「うん。

 弾が入っていないのは確認したから触っても良いよ。」


司と忍が恐る恐るライフルに手を伸ばして見事なエングレーブにそっと指を這わせた。


陽が差し込む暖炉の間で司と忍が息をするのも忘れるような真剣な顔つきでそっと手を伸ばしてエレファントガンに触れている。

これが物騒極まりない銃でなければ絵にしたいような美しい情景に、俺には見えた。

俺達もつい手を伸ばして『加奈・アゼネトレシュ』に施された見事なエングローブに指を這わせた。

皆がため息をついた。


「加奈姉…持ってみても良い?」


司が恐る恐る加奈に尋ねた。


「う~ん、別に構わないけど…持てるかな?」


司がエレファントガンを掴み、持ち上げようとしたが重すぎて無理のようだった。


「う~重い!無理無理だよ~!」

「ほほ、司や忍はあと10年くらいたたないと持てないかもね。」


リリーが微笑んだ。


「そうね、そろそろしまおうかな。」


加奈が片手でエレファントガン、いや、加奈の雷をひょいと持ち上げて歩いて行き、木箱に入れた。

俺はもう少し見ていたかったが、後で加奈が試射するような事を言っていたのでそれを楽しみにする事にした。


リリーとあほ兄弟は午後から指揮下の別のチームに会わなければならないと言う事で俺達が見送る中をスカイラインGTRで死霊屋敷を出て行った。


俺達は昼食をとる間、スコルピオの射撃術や『加奈・アゼネトレシュ』や不規則に動く標的の件で話が弾んだ。


午後から皆でハイキングがてら『加奈・アゼネトレシュ』の試射を行うことにした。

適当な場所を見つけ加奈が『加奈・アゼネトレシュ』に装弾し、はなちゃんが音の壁を張り、俺達は下がった所から見ていた。


「皆行くわよ!

 音が凄いから耳を塞いでいてね!

 あの大きな木を標的にさせてもらうわ!

 大木さん!ごめんなさい!」


加奈は今はワイバーン全体で行う標的にする樹木に謝罪の祈りをしてから、イヤーマフを付けシューティンググラスを掛けるとおよそ200メートルほどの先の大木めがけて撃った。

想像以上の轟音。

加奈は奇妙な舞踊の様に上半身を捻って上手く反動を逃してまた素早く射撃姿勢をとり、忍が轟音の迫力で耳を押さえたまま尻餅をついた。

標的にされた大木全体が震え、そしてめきめきと太い幹が折れて静かに倒れていった。

標的が人間だったらと思うとぞっとして俺の背筋を冷や汗が流れた。

マグナム装弾の600ニトロなら人間の体は粉々に千切れ飛んでいるだろう。

加奈は、そして俺達ワイバーンは強力な武器を追加した。





続く


 

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