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親子島

 海賊のお頭に気に入られた大雅。

 そんなお頭が、

「おめぇ達、旅の目的はなんだ?」

 大雅達を見ながら聞いた。

「宝探しさ。俺達は、古文書に書かれた武王の宝を探しているんだ。この海域の、どこかの島に隠してあると書いてあるんだけど」

「そんな話、聞いたことねえぞ。それは内地だけの話であって、この辺りで埋蔵金の話なんて聞いたことない」

 お頭が言い切る。

「本当か? この地域に詳しい海賊でも知らないなんて……」

 埋蔵金があるのが疑わしくなってきた。

「埋蔵金があるって話があれば、ワシら、こんな汚れ仕事なんてしてねえ。てっとり早く宝を見付けて、贅沢な暮しをしているよ」

「そりゃ、そうだろうな」

「そんなぁ、遥々、こんな島まで来たというのに……。無意味な旅だっていうのか」


「いや、そうとも限らんぞ」

 と仙人の言葉に皆が一斉に視線を向ける。

「考えてもみろ、簡単に見つかる埋蔵金なぞ、ありやあせん」

「じゃあ、あるんだな、金銀財宝が。……じゃあ、どこにあるんだよ」

「このどこかの島に、眠っているんじゃろ」

「このどこかって、幾つ島があると思ってんだぁ」

 呆れるお頭。

「そうだよな……」

 急に不安になってきた。

 無数に島が点在する海域で、お宝を探すのは至難の業。

 

「唯一のヒントが、『海、島、橋』の三つのキーワードだ」

 大雅が重要な手掛かりとなる単語を言うと、

「そう、確か、『橋を渡って行った場所に洞穴があり、そこに隠した』と書いてあったんだよな、ジイさん」

 とタワンが続けて言って、仙人に聞く。

「ああ。それが、財宝に繋がる唯一手掛かりじゃ」


「橋か……こんな海に中に橋があるわけが……」

 と大雅は考え、

「まてよ、橋ではなく砂の道だとしたら……。向こうの世界でもあるんだ、潮が引いた時だけに現れる砂の道が」

 答えを導き出した。

「そうか! 砂の道を、橋に例えて書いてあるんなら……」

「その砂の道を進んだ先に、お宝はあるんだな。で、肝心の、潮の満ち引きで繋がる島があるのか?」

 彼らの言葉に、

「ある! 潮が引いた時に現れる、繋がった島が」

 お頭が声を上げて答えた。


 干潮時に現れる砂の道。

「そこの原住民は、親子島と呼んでいたな」

「益々、それっぽい島だ」

 消え掛けたともしびに、再び火がついた。



 お頭自慢のビーグル号。

 大きな帆が風を受け止め、スイスイと海を進む。

 見渡す限りの大海原、トオメガネ(双眼鏡)で覗きながら目的の島を探した。


「あれだ! あの島が親子島だ」

 目的の島を見付けた。

 太陽という名の大きな島(ハブロック島)に、月という名の小さな島(ニール島)が相対している。


 太陽の大島に上陸すると、愛嬌のある動物が出迎えてくれた。

 ヨタヨタと動きの遅い動物。

「ペンギンじゃないか。ペンギンといえば寒い所に生息しているイメージがあるんだが、熱帯性のガラパゴスペンギンなのかな」

 不思議そうに大雅が言った。

「何を食べるんだ? 餌なんて持ってないのに」

「こいつ、人間を恐れないんだな」

 人間を恐れずに近寄って来る。

「可愛いわね」

 よちよち歩きの動物にフランの目がすっかり女子の目をしている。


 ペンギンに大トカゲ。島に生息する珍しい生き物に目を奪われる。

 大陸と隔絶されたこの島は、ここにしか生息しない特別な生態系を生み出し、独自の進化を遂げきた。



 時間を忘れるほどに島内を散策していると、潮が引いていた。

「あれは――」

 とロッチが声を上げる。

「橋だ」「橋だぞ!」

 皆が口をそろえて言った。

 二つの島が繋がった。

「まるで、エンジェルロードだな」

 大雅が呟く。


 天使の散歩道と呼ばれるエンジェルロードは、好きな人と手を繋いで渡ると結ばれるという恋人の聖地として有名な場所。潮の干満により道が現れたり海に消えたりするため、一日に二回、干潮時だけ島に渡ることが出来る。


 細長い砂州さすの道を通って、月という名の小さな島に渡ると、お宝に繋がる痕跡を手分けして探す。

「あった! あったぞぉ」

 それらしい場所を発見。

 何かを覆い隠すように、大きな丸い石で塞がれていた。

 見事なまでに丸い石。

「この石って、あの王墓の中にあった石と同じだ」

「その剣を作った国じゃろ。たいした技術じゃな」

 と仙人がタワンの持つ聖剣を見やり、技術の高さに感心した。


 皆の力を合わせて大石を動かす。

『ゴッ、ゴロ、ゴロリ』

 大石が動き、中に入る通路が現れた。 

 皆がゴクリと息を呑む。

 自然の穴ではなく、手掘り。人工の坑道だった。

 手で掘られた坑道が、先の見えない奥の方まで続いている。


 人一人しか入れない小さな坑道に潜り込むように入って行った。

 ひんやりとした坑道内。

 進むに連れ、通路が大きくなる。

 そして、

「ここが……」

 行き着いた場所は、とても大きな空洞。

 何本もの柱で空間を補強されたその姿は、まるで神殿ように見えた。


「なんにも無い、空っぽだ……」 

「チェッ、先を越されたな」

 悔しそうにタワンが言うと、

「この状況、一足遅かったようだ。お宝は、盗掘者によって全て持って行かれたんだな」

 力なくロッチも言った。


 大きな空洞を見て、大雅は呟く。

「これって、採掘場跡じゃ……」

「そうじゃな。この一帯は、鉄のもとになる鉄鉱石が取れるんじゃろう。良質な鉄が作れるんじゃないのか」

 仙人が言うと、

「タワンの持つ聖剣、なんでも斬れる剣のもとになった原石なんだな」

 大雅が納得する。


 鉄を含む鉱石を鉄鉱石という。

 海底火山の噴火によって、鉄鉱石の岩石が地中に上った。

「鉄は強力な武器になる。平和と繁栄を願う武王が、誰の手にも渡らぬよう封印したんじゃろう」

 仙人の説明に、

「こ、これが、お宝……。探し求めていたお宝が、こんな鉱石だなんて……」

 タワンが言って、がっくりと肩を落とす。


「じゃあ、これが、俺達が探し求めていた、お宝なんだな」

 信じられない驚きでロッチが言うと、

「いいじゃねえか。金銀財宝はヒトを惑わし、なんの役にも立たねえが、この鉄は地味だが、おおいに役に立つ。この鉄を元手に、世界中を駆け回って手広くあきないをする。あいにくワシらは、自由自在に動き回る船を持っている。世界を相手に商いすれば、何不自由ない生活が送れるってもんよ。ガ、ハハハハッ」

 豪快に笑い飛ばした。


「おめえ達、苦労して遥々ここまで来たんだろ。半分はお前達の取り分だ、好きなだけ持って行け」

 親切にお頭がすすめるも、

「持って行けって、どうやって持って行くんだよ。まあ、お宝探しで楽しめた。十分だよ」

 大雅が言うと、

「人生に一度あるかないかの冒険が出来たんだ、これ以上何を求めるっていうんだよ」

 タワンが言い、

「僕も、お宝を見付けるまでがワクワクして楽しかったよ」

 シングも言った。

「欲のない奴らだな」

 呆れながらも感心するお頭だった。


「まあ、宝探しの目的は達成したんだ。で、これからどうするんだ? 何かしたいことはあるのか?」

 大雅が聞くと、

「そうだな……」

 とタワンが言ってしばらく考える。

「ムガル王国に行ってみたい。一度行ってみたかったんだ」

「そうね、私も行きたい」

「ムガル王国って、王様が居るのか?」

「当然だろう。王の国なんだから」

「猫の王様かぁ……。一度、会ってみたいもんだな」

 気品のあるペルシャ猫を大雅は想像した。

「ムガル王国は世界で一番繁栄している国なんだ」

 瞳を輝かしながらロッチが言う。


 向こうの世界のアメリカやヨーロッパなどの華やかな国と同じで、憧れているんだろうな。


「ムガル王国は大陸の西の果てにある。お礼に、近くの港まで送って行こう」

「それは助かる」

 お頭の行為にロッチが感謝した。


「ムガル王国に行くには、タール砂漠を通って行かなきゃなんねえ。あそこには危険な怪物が出るそうだ。気を付けるんだな」

 お頭が忠告する。

「怪物?」

「ああ、鎧をまとい、火を噴く怪物」

「鎧に火を噴く、って、怪獣じゃないか。本当にいるのか?」

 信じがたい話。

 疑いたくなるのも当然だ。


「さあな。ワシも見たことはない。聞いた話だ」

「作り話が、どんどん話が大きくなったんじゃねえのか」

 馬鹿げた話だとばかりにウルフが言った。

「本当にいるとしたら、恐竜の生き残りかも。でも、火を吹くなんて、大袈裟だよな」

「怪物より、むしろ砂漠の方が危険じゃないのか」

 仙人が注意を促した。


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