正義と力
昨日投稿できなくてすみません。
「う、嘘……。あ、あなたは……」
完全に霧の晴れた視界で、アランの睨む先を追ったローズが目にしたのは、ローズの知る人物であった。忘れているはずがない、昨日見たばかりの、金髪の若い男。
「今のを防ぎますか。さすがローズさん。ふふっ、またお会い出来ましたね」
男は昨日と全く変わらない様子で、ローズに語り掛ける。
「そう、そういうことだったのね……。やたらとしつこいと思ったのよ」
頭によぎる昨日の笑顔と優しい言葉。それを払拭するように、ローズは声を荒げて言う。
ローズとアランの前に現れたのは、別れてからまだ半日も経っていない見合い相手の男、
クリス・バディランであった。
「ひどいです、ローズさん。私は本気だったのですよ? ……昨日はね」
言葉のわりに、クリスは全く残念そうな様子ではない。
「どうして私は断られてしまったのですか? それが気になって昨日はなかなか眠れなかったんです」
「私はお見合いなんて全部嫌なのよ。しかも昨日は最悪だったわ」
「確かに父は少し性格が曲がってしまっているとは思いますが……」
「あんただって大概よ。ずっと笑ってて気持ち悪かったわ」
ローズのはっきりした物言いに、クリスは額に手を当てた。
「おやおや……。昨日はずっと楽しかっただけなのですがねえ」
そしてははっと笑う。見るものによっては心を奪われる爽やかな笑顔だが……。
「私はそんな誰にでも笑顔を振りまくような奴好きじゃないのよ―――っ!」
ローズはそう言い放った。そして同時に、頭に別の人物の顔を思い浮かべる。
それは学園に入学するより前、入学試験でたまたま一緒に試験を回ることになった人物だった。忘れることのできない超高威力の魔術。彼の魔術を目にした者は皆驚きと尊敬の念を抱いたに違いない。だが、ローズが見ていて一番胸が高鳴ったのは、彼の魔術に対してではなかった。
魔術を発動し、それが上手くいったときの笑顔。誰に見せるでもない、己への満足感からくるその笑顔が、ローズは脳裏に焼き付いて離れなかった。
彼は当然のように合格し、運よく同じクラスになったのだが、それ以来、彼のあの笑顔は目にしていない。
ローズはちくりと胸が痛んだのを自覚し、今考えるべきことではないと、思考を追い払うようにクリスを睨みつけた。
「そんなことよりあんた……、突然攻撃してきてなんのつもり?」
クリスもそれ以上言うつもりはなかったらしく、真面目な顔になって言った。
「それはもちろんあなたを倒すためですよ、ローズさん。私はこの作戦において、一番の障害はあなただと判断しました」
「だからふいうちってわけ? 態度のわりにせこいことすんのね」
「それだけあなたを警戒しているということです。まあ、失敗に終わってしまいましたが」
「いま、完全に殺す気だったわよね。しかも炎属性魔術なんて、ここで使えば一瞬で山火事ね。なにを考えてるの?」
ローズの声には怒りが滲み出ている。単純にクリスの言動に腹を立てているだけでなく、クリスから感じる妙な気配に焦りを感じていた。
「包み隠さずお話ししますよ。なぜなら私は悪者ではありませんからね」
クリスはそう前置きして、語り出した。
「まず初めに、これはシャルル・サンドレアさん誘拐を目的とした作戦であると言っておきましょう。ローズさん、あなたなら分かりますよね? なぜ彼女を狙うのか」
「……ええ」
ローズが返事を返すと、クリスは満足げに頷く。
「そう、サンドレア家と言えばイリア王国一の資産家です。我々の正義を貫くためにはまず先だった資金が必要なのです。まあそれだけではありませんが、それほど細かく説明する必要もないでしょう」
「正義ですって? 誘拐するとか言っといて笑わせないで」
ローズの言ったことは大方の人間にとっては正論だろう。だがクリスは全く動揺せずに言った。
「ローズさん、あなたは勘違いをしているようです」
「勘違いですって?」
ローズが怪訝な顔でクリスに問う。対するクリスは悠然と、確固たる意志を持って答えた。
「正義とは、志と結果なのですよ。過程での犠牲は致し方ありません」
「……あんたは結果のために罪も犯すっていうのね」
「そうです。例えば二つの国の間で戦争が起きたとしましょう。互いに死者が一〇万人出ないと戦争を終わらせる気がありません。さてここで、第三者が圧倒的実力差を見せそれぞれの国の兵士を三万人ずつ殺します。これで両国は第三勢力を恐れ、戦争を止めました。……どうです? 結果的に第三者のおかげで死者は少なくなりますね」
「……そんなの、成功しないかもしれない。ただ死者を増やすだけかもしれないわ」
ローズが言葉に詰まって、それでも言い返すと、クリスはうんうんと頷いた。
「その通りですよローズさん。だからこそそれを成す者が正義であり、圧倒的な力を持っていなければならない」
クリスの物言いで、ローズはやっとクリスの言いたいことを理解した。それと同時に、クリスへの反論の言葉が見つからなくなる。
「どうですかローズさん、今からでも遅くはありません。私たちの仲間になりませんか? 昨日はゆっくりとお話し出来なくて誘いそびれてしまったのですよ」
クリスの言葉がローズの頭を眩ませた。考えれば考えるほど、クリスが正しいように思えてくる。
(違う、違うわ。私はこんなやつとは違う。私は……、だめ、なにも言い返せない……っ)
ローズは無意識にクリスへと手を伸ばしていた。クリスは満足気に頷いて―――直後、その場にいたもう一人の人物の大きなため息によって、その場が凍り付いた。
「はぁ……。二人が知り合いっぽいから黙って聞いてれば、しゃあしゃあとぬかしやがって」
アランはローズの方を向いたかと思うと、あろうことか右手を緑に輝かせ、魔術を発動した。
「『風柱』」
アランの発生させた風が、ローズの身体を攫う。ローズはなんの抵抗もせずにそれを受け、二メートル先の地面に叩きつけられた。
突然の仲間割れに見える行為。だが、クリスの表情は冴えなかった。今にも舌打ちが飛んできそうである。
「やっと薄気味わりぃ笑顔じゃなくなったな、てめぇ」
アランが挑発するようにクリスに笑いかける。クリスはなにも言い返さず、唇をかんでアランを睨みつけていた。
「ちょっと、いきなりなにすん……の、よ」
起き上がったローズがアランに文句を言おうとするが、その言葉は尻すぼみになっていく。ローズはようやく、自身の異変に気が付いたのだ。
(私、今やられるって分かってたのに対抗しなかった? いや、それよりも前からなんだか私変で……)
考えてもなにが起きていたのかローズには理解できない。だが、どうやらアランが救ってくれたらしかった。
そしてローズの疑問は、直後のアランの発言によって解明される。
「フラれた相手を精神干渉で手に入れようなんて、正義が聞いて呆れるな」
ローズは目を見開いて驚いた。比較的多くの情報が入ってくる貴族の娘でも、精神干渉魔術は噂でしか聞いたことのない魔術である。そもそも魔術の属性は六つであり、精神干渉なんてものはどの属性でも成しえない。
それでもローズはアランの言うことを信じた。自身の味わった不思議な感覚、そしてなによりアランの指摘でクリスが表情を変えていることが証明である。
クリスはローズと目が合うと一瞬焦りを見せたが、すぐに元の繕った笑みを浮かべた。
「ばれてしまっては仕方ありませんね。まさか君が黒魔術のことを知っているなんて、思いもよりませんでしたよ。偽Aランク、アラン・レイヴェルト君。これだけ近くにいてもあまり魔力は感じませんが……君からはとても嫌な気配がします」
「はっ、それは買い被りだぜ? 俺は二年間もランキング最下位の偽Aランクだからな」
アランはそう言うが、クリスは警戒を緩めなかった。ローズはクリスを油断させられなかったことを残念に思った。だが、ローズのアランに向ける目はクリスのそれに近い。
アランの介入により冷静になった頭でローズが一番疑問に思ったこと。それは、クリスの初撃をアランがどうやって防いだのか、だ。
ローズは魔術発動の瞬間まで気配に気付けなかった。態度からしてアランは察知していたようではあったが、クリスの魔術が飛来するまで魔術発動の予兆は見られなかった。つまりアランは、ローズがクリスの魔術を認識し視線を逸らしてから、その魔術が自分達に到達するまでの間に魔術を発動したことになる。それはあり得ない早さだ。
属性魔力を練り、詠唱をして魔術陣を構築。そこに魔力を通すことで魔術は発動する。例え初級魔術を最小限の威力で発動したとしても、その工程には二秒は掛かる。すでに発動している魔術を迎え撃つのはほぼ不可能なのだ。
(もともと魔術を準備していた……? いいえ、そんな様子はなかった。でも、それしか……)
アランは二人の視線を受けながら、クリスに向けて言葉を続けた。
「つーか、こっちの戦力を探ろうってんなら、そっちも隠し事はよくねぇと思うぜ?」
アランはそう言ってクリスから視線を外す。クリスは意外そうに目を見開いた。
「おや? どうして分かったのですか?」
そして指をパチンと鳴らす。今度はローズが驚かされる番だった。
なんの気配もなかったクリスの背後の木々の間から、二〇人近い魔術師達が現れたのだ。
「これが、今ここにいる全戦力です」
同時に、一人一人の魔力が伝わってくる。ネクタイやリボンは着けておらず同じ格好に身を包んでいるが、感じる魔力からして全員Bランク以上の魔術師だろう。
(なっ、どこからこんなに……。いくらなんでもこんなの二人じゃ……)
敵との戦力差に、ローズが一歩後退る。どうやってかは分からないが、敵の存在を察知していたらしいアランは、表情を変えなかった。
「ご丁寧にどうも」
「いえ、実はいつ紹介しようか迷っていたところです。助かりましたよ」
クリスはそう言うと、背後にいる魔術師達になにやら視線で合図を送る。魔術師達は無言で頷くと、体内に魔力を循環させ始めた。魔術師の臨戦態勢である。それによって魔術発動までの時間を短縮し、万一敵の攻撃を受けてもダメージを軽減出来る。
指示を出したクリス自身も、アランも同じように魔力を巡らせ、場の緊張感が高まっていく。
「もっとお話ししたいところですが、時間が迫ってきておりまして」
「ああ、そうみてぇだな」
二人の魔力の流れがその勢いを増していく。クリスはリーダー的立場なだけあって、他の魔術師達より数段強い圧力を放っていた。
(クリスだけでも厄介そうなのに、こんな数相手にするなんて無謀だわ……。でも、やるしかない)
ローズも覚悟を決め、戦闘開始に備える。
「では、始めましょうか―――っ!」
クリスが一瞬声を張り上げ、もう一度指をパチンと鳴らす。それが、戦闘開始の合図だった。
クリスの背後の魔術師達が、一斉に右手を紅く輝かせる。ローズはその狙いを瞬時に見破った。
今ローズ達が対峙しているのは、森の中では木の少ない開けた場所だ。ここで辺りの木に火を付ければ、ローズ達は逃げ場を失う。戦闘中に消火など出来るはずがないため、クリス達はローズとアランを倒した後にゆっくり消火して立ち去ればいいという算段だろう。いや、消火する気はないのかもしれない。誘拐というクリスの言葉を信じるなら、なるべく騒ぎを起こして混乱を招こうとするに違いない。
アランの力を知っているとはいえ、普段の態度からするにどれだけ役に立つかも分からない。いざという時のために、逃走ルートも確保しておきたいところであった。
どれだけ防げるかは分からないが、少しでも対抗しようとローズは水属性の魔力を練り始める。
(いつでも来なさい……)
敵の数はクリスを含め一九人。視覚に頼っていては全員の動きを捉えることは不可能である。ローズは魔力の動きに意識を集中した。
互いに属性魔力が練り終わり、場の緊張感が最大限に高められていく。
しかし、ローズは魔術を詠唱し魔術陣を描こうとして―――――
「―――――っ!?」
唐突にそれを中断した。いや、中断したというのは正確ではない。あまりに強大な魔力を察知し、驚きと恐怖で魔術への集中が途切れてしまったのである。そしてそれは、クリス達も同様であった。
「『土壁』!」
唯一、アランの声のみが木霊する。
アランが地面に手を触れた瞬間、先ほどの爆発よりも大きな地震がローズを襲った。
徐々に視界が暗くなり、立っているのもままならない中、膝をつきなんとか転倒を凌いだローズが顔を上げる。
そこは、一〇メートルはあろうかという壁に囲われた空間に変わっていた。円形の壁の半径は二〇メートルほどだろうか。異常な地形の変化に、ローズは言葉を失った。
ローズほどの魔力保有量ならば、何度かの魔術に分け、時間を掛ければ同じことが出来るだろう。だがアランは、他の誰よりも早く、一度の魔術でこの地形を作り出している。
相当な魔力消費が予想されるが、ローズはなによりその魔術の制御に驚かされた。通常の『土壁』は、自身の前方の地面を盛り上げさせ、二、三メートルの壁を作り上げるものだ。壁の大きさは注ぎ込んだ魔力の量にもよって変わるが、それを円形にするとなれば強固なイメージと魔術陣を描く属性魔力の制御が必要になる。
驚愕の表情を浮かべているのはローズだけではなかった。クリスも、その配下の魔術師達も予想外の出来事に身体が動かない。
これほどまでとは思っていなかったにせよ、アランの実力をもともと知っていたせいか、思考停止を先に脱したのはローズであった。
(そういうことね!)
ローズは、アランが壁を作った理由に思い当たる。
大人数を相手にする場合、基本的に炎属性魔術が一番有効とされている。術の発動に時間が掛からないし、範囲攻撃が容易だからだ。しかし今は学園の敷地内の森の中で、炎属性魔術の使用は躊躇われる。
アランはこの壁によって山火事の心配をなくしたのだろう。
だが同時に、ローズの頬に冷や汗が流れる。周囲を完全に塞いだということは、逃げ場が上空しかなくなったことを意味する。今の魔術を見る限り、アランなら風属性魔術で逃げられるかもしれないが、一九人の相手の攻撃から逃れ一〇メートルの壁を超えるのは、ローズには難しい。
(まさか、私を置いて逃げる気じゃ……)
途端に巨大な不安に駆られ、ローズは祈るような気持ちでアランに目を向けた。
そして、それが全くの杞憂であったと知る。
アランの目は真っ直ぐに相手を捉え、静かに燃えていた。一目見ただけでその闘志が自分に移って来るようである。
アランの魔力が再び激しく流動する。超高威力の炎属性魔術を発動するのかとローズは身構えたが、アランの両手は蒼く輝いていた。
「『水激流』」
それは昨日、アランとの対戦でローズが使ったのと同じ魔術だった。だが、やはりというべきか、その規模は数段違う。誰もが為すすべもなくそれを見ることしか出来なかった。
アランの魔術により生成された水が、人を攫い、木をなぎ倒し進んでいく。水流の音が反響し轟音がローズの鼓膜を震わせた。
アランの魔術が終わりようやく落ち着いた頃には、壁の中は倒された木も半分以上水に浸かり、魔術師達はクリスを除いて全員水面から顔を出していた。ローズとアランとクリスのみ、盛り上がった地面に立っている。
ローズとアランはもともと壁を作った際に高い場所にしてあったのだろう。どうやらクリスは、一瞬の判断で土属性魔術を発動し逃れたらしい。
敵の魔術師達は意識はあるが、アランの魔力の混ざった水の中では満足に魔術を発動出来ない。無力化とはいかないまでも、大幅な戦力ダウンであることは間違いなかった。
僅か十数秒の間にこれだけのことをやってのけたアランに、ローズは戦慄を覚えた。
もし自分が相手だったら、クリスのように水流を避けることすら出来なかったかもしれない。そう思うと味方であることにホッとする反面、ゾワリと鳥肌が立った。
ローズは残った敵、クリスへと目を向ける。先ほどまでの笑顔はどこへ行ったのか、クリスは目を細め、鋭い目つきでアランを見据えていた。
「まさか、あなたがこれほどの魔術師だとは思いませんでした。アラン・レイヴェルト」
その声も、アランの魔術発動前とはまるで違う。
先ほどまでの笑顔と声を暖とするなら、今は冷。力を持たぬ者なら睨まれただけで動作を封じられるような、氷点下の冷たさだ。
「『雷矢』」
クリスが静かにそう唱える。一瞬アランとローズは対抗しようとするが、それは二人に向けられたものではなかった。クリスの手から放たれた稲妻はクリスの足元の水面に向かい衝突。それはそのまま水を伝い、クリスの味方であるはずの魔術師達へと流れ込んだ。
通常、魔術によって作り出されるのはなにも混ざっていない純水だ。土と混ざったせいもあるだろうが、アランの魔力の籠った水の中に電気を通すのは相当な威力の魔術でなくては不可能だ。クリスの魔術もまた常軌を逸したものであることの証明が、目の前でなされていた。
魔術師達の絶叫が響き渡る。ローズはその姿を見ていられなくなり、思わず目を逸らした。
「数とは全くあてにならないものですね。君のおかげでよく分かりましたよ」
「それはどうも。でもいいのか? そいつらだってまだ魔術は発動できただろうに」
「必要ありませんよ。それに、戦おうとして次にあなたの攻撃を受ければ死んでしまうかもしれませんしね。君は気絶している人間をわざわざ殺すようなことはしないでしょう?」
だから自分がやったとクリスは言う。水はだんだんと水位を下げ、魔術師達は流された木にもたれかかるようにして気絶していた。
「動いてたって殺したりはしねーよ。……それよりてめぇ、まだ本気じゃねーな?」
アランの目がクリス同様に細められる。しかし、クリスのような冷たさは感じられない。
温度のない、全てを見透かしたような目。
「どうやら君には隠し事が出来ないようですね、まあどのみち、このままでは厳しいでしょう」
クリスはそう言って、羽織っていたローブを脱ぎ捨てる。その左手に、黒い小さな石が握られていた。その石を眼前に掲げると、クリスは力を込めて砕く。パリンという音と共に粉々になり、破片は空気に溶けていった。
「では見せましょう。この世界の闇、黒魔術を!」
そう宣言した瞬間、クリスの体内の魔力循環が爆発的に加速する。それは一歩間違えれば魔力の制御を失い、一生魔術が使えなくなるか、最悪の場合死に至るほどの異常な速度であった。
徐々にクリスの魔力に何かが混ざり、そして何かが失われていく。
ローズはいつの間にか自分の身体が震えていることに気が付いた。正確にその形を捉えることは出来なかったが、禍々しく恐ろしいその魔力に恐れることを禁じ得ない。
やがてクリスの魔力はすべて変化し、落ち着きを取り戻した。
「おいローズ」
突然掛けられた声に、ローズの意識が引き戻される。アランの視線はクリスに向いていたが、その真剣な声音から重要な話だと悟り、ローズは一言一句聞き逃すまいと耳を傾ける。
アランからの指示は、とても単純なものだった。
「お前はとにかく威力の高い魔術を準備しろ。おそらくあいつの守りを突破するには並大抵の攻撃じゃ通用しねぇ。自分がここだと思う瞬間まで威力を上げることだけに専念しろ。その機会は俺が必ず作る」
それだけ言うと、アランはローズの返事も聞かず魔術の準備を始めた。
読んでくださりありがとうございます。




