第九話 ランク査定実技試験
「砌様、お待たせ致しました。登録が済みましたのでギルドカードをお返しします。ここで注意事項がありますのでお聞きください。ギルドカードの再発行には罰則があります。ワンランクダウンと1ヶ月間クエストの受注、素材の買取が禁止となりますので、くれぐれも無くさないように気をつけてください」
「なるほどな。……なりすましによる悪事への利用を見極めるためといったところか?」
「ええ、それもあります。では、次にランク付けの査定を受けて頂きますがよろしいでしょうか?」
「ああ、かまわねえよ。よろしく頼む」
「はい、ありがとうございます。砌さんは職業が特殊魔法剣士とありましたので、当職員のAランク魔法剣士による実技試験を行います」
「ほお。Aランクというと、Bランクの火鍼と菫の二人より強いということになるのか?」
「強さとランクが必ずしも比例するとは限りませんが、ここの職員は皆さんお強いです」
火鍼が苦虫を噛み潰したかのような顔で答えてくれた。表情から察するに、苦戦というよりかは倒しきれなかったことからくる歯がゆさなのだろう。
「火鍼さんは最初Dランクからでしたね。2年近くでAランク査定間近のBランク冒険者なんてすごいことですよ。鍛錬を怠っていない証拠ですね」
「へへへ。Aランクの査定、絶対通過してみせますから!」
火鍼は受付の言葉でやる気に火がつき燃え始めた。忍びとは? と思わせるほどの存在感にふと砌は笑みをこぼした。
「それで、どこに向かえばその実技試験とやらが受けられるんだ?」
「ニーナさん、私が案内するからいいですよ」
火鍼が受付の仕事を代行して案内してくれるそうだ。砌は受付に立つ彼女の名前を覚えた。
「砌さん、この階段を降りていくと修練場があるんです。そこで魔法剣士のホースさんと試合をします」
火鍼に促されるまま下の階に降りていく。結構な深さまで降りていくと、開けた空間にでた。そこはギルドの敷地内よりも広く、降りてきた長さの分だけ天井も高い。その修練場の真ん中に立っているのが、Aランクのギルド職員、魔法剣士の男が待ち受けていた。
「あなたが特殊魔法剣士の砌さんですね。私はホース。あなたの実技試験を担当する者です。よろしくお願いします」
ホースはとても礼儀正しく、よく通る声で話しかけてきた。
「お手柔らかに頼む」
砌は短く返事をし、周囲の状況把握につとめた。
「隙がないですね。それと、ここでは罠の設置はありませんので存分に動き回って結構ですよ」
「ああ、確かに罠の設置はなさそうだ。それで、ただ試合えばいいのかい?」
「魔法、もしくは剣術をを使わずに木刀一本で打ち合いをしてもらいます。勝ち負けはありませんが、評価基準はいたって単純。私の攻撃を受けて立っていられたらDランク。私に一本当てるとCランク。膝をつかせることができたらBランク。最後に、Aランクになるには、私に『参った』と言わせること」
砌は説明を聞きながら、壁に備え付けられた木刀を選び、腰に差した二本の刀をその場で抜いて地面に置いた。手に取った木刀の感触を確かめるように、一度二度勢いをつけて振り回すような素振りをするが一切風切り音を立てなかった。
「相分かった」
「相当な手練のようですね。試験官のつもりでいたら軽くやられてしまいそうです。これは気を引き締めないと……」
砌の素振りを見て、ホースの集中力が一気に研ぎ澄まされた。それは離れたところで見学している火鍼に鳥肌を起こさせるほどだった。
「くぅ、二人とも物凄い集中で、寒気が止まりません!」
「火鍼さん、これからですね。良かった間にあって。……例のクエストまだ残ってましたよ」
菫が火鍼の横に立ち修練場の中心に立つ二人を見つめる。
「……そうですか。砌さんがBランク以上だと受注できますね……」
「ホースさんに膝をつかせることができればいいんですが……」
二人の心配と期待の入りまじった視線をよそに実技試験は始まろうとしていた。
「魔法剣士の実技試験って魔法や剣術を使用してはいけないって言うなら、試験管は普通の剣士でもいいと思うのだけど?」
菫が素朴な疑問を口にする。
「それだと魔法や剣術を使われていた際に気づかれないことがあるから、それと、実戦で魔法や剣術を封じられた場合を想定してのことだと思います」
火鍼は考えうることを菫の問いに重ねる。
二人が見つめる先、修練場中央の砌とホースの間に変化が訪れた。




