第十八話 子どもたちの捜索
昨夜は、さゆみの歓迎会でたらふく食べたあと、元通り一式にさゆみを三人で送り届けてから木漏れ日亭に戻り、ベッドに横になるとそのまま眠りにつき朝を迎えた。
砌が一階の食堂でおにぎりを食べ終わると、さゆみを連れて火鍼と菫が返ってきた。どうやら二人は早起きして、さゆみの所で朝ごはんを共にしたきたらしい。手ぶらではなく、しっかり食材も持ち込んだという話だ。
「おはよう。それじゃあ、向かおうか」
「はい。パーティでの初クエスト頑張ります!」
さゆみが元気いっぱいで三人は親戚のおじさんおばさんになった気分でなごんだ。
「火鍼さんの防具を作る材料を得るために受注したクエストって聞きましたけど、相手はどんなモンスターなんですか?」
「双頭のギガントタートルというモンスターで、そいつの魔核が欲しいんだよね。楔帷子の材料になるかもしれないからさ」
「必ず倒して、楔帷子が完成したらお披露目してくださいっす」
「うん、いいよ。あ、でも、あれは中に着込むものだから、砌さんには見せれないよ。どうしてもって言うならお金取るから覚悟してほしいです」
火鍼は胸元の襟あたりをぱたぱたとさせて片目を瞑った。
「はあ!?見たいなんて言ってねえぞ!」
すかさず菫が砌の溝内を漆黒の色をした魔法杖の先端で小突く。
「ぐっ。……す、菫、何すんだ!?」
「わかってないですね。そこは、『相わかった』でいいんですよ、もう……」
そのやりとりを見てケタケタ笑うさゆみだった。
町を出て砌たち一行は目的地となる南の湿原へと向かった。
「そろそろ一つ目の村 “ハニーコットン” が見えてくるころですよ」
「こっちに来るのは一年ぶりでしょうか。また秋水に泊まれるといいんですが」
秋水というのは旅籠のようで、川魚の料理が絶品らしい。
「私はこっちに来るのは生まれて初めてなので、その、川魚料理がとても気になるっす」
川魚料理への期待を膨らませて歩みを進めると、村の入口付近でなにやら慌ただしくしている人たちが湿地帯に向かって走っていった。
「何かあったみたいですね」
火鍼が先行して様子を伺いに行く。
遅れて砌たちが村の入り口につくと火鍼が村の中から戻ってきていた。
「秋水の、女将さんの子どもたちが、湿地帯の沼地で魚の仕掛けを見にに朝早く出かけてからまだ帰ってきてないそうです。その沼池のあるところは昼から活発になるモンスターがいるので、いつもなら昼前には帰ってきてる頃だって話してくれました」
「それは心配です。私たちも捜索に行きませんか?」
「行くっきゃないっす!」
事情を聞いた菫とさゆみは意気込みを見せる。
「その沼地で気をつけることは?」
砌は二次被害にならないための準備について聞く。
「ぬかるみに気をつけることなんですけど、花の生えてないところが安全地帯で、触れると眠り粉の霧を吐くきのこが自生していること、ぬかるみにある花を好む沼地のモンスター、沼河童がいることです」
「河童はきゅうりが好物じゃなかったか?」
「ふふ。私も同じことを聞いてしまいました。その花の花びらが肉厚で水分を含んだ胡瓜のような食感なんだそうです」
「それはちょっと食べてみたいですね」
菫が好奇心を膨らませる。
「もしかして米みそで食べるとおいしい、緑色の花びらみたいな形の野菜のことかなぁ……?なんて名前だったかは思い出せないっす」
さゆみが額に手を当てながら一生懸命思い出そうとしている姿を見て、砌たち三人は移動しながらもなごんだ。
道なりに進んで背の高い木々が段々と少なくなり、その奥にはいくつもの沼池が点在している。辺りに群生した緑色した花が目についた。
「おおーーい!クルトーー!サニーー!」
「どこにいるんだーー!」
あちこちで子どもたちを探す大人たちの声が聞こえる。
「探知魔法展開!」
菫が真剣な表情となって魔法を使う。
「ここよりさらに奥に二つの点が存在します」
「おーい!もっと奥にいるみたいだぞー!」
砌が菫の探知魔法で得た情報を捜索している大人たちに声を張り上げて伝える。
「あんたらは冒険者か?俺たちの探知魔法には引っかからなかったが……、よし、もっと奥に行ってみるぞ」
4人の大人たちはぬかるみを慎重に避けて、奥に続くあぜ道を急ぎ足で進んでいった。
「いたぞ!」
「クルト!サニー!」
子どもたちは一番奥にある広い沼池に体から入り、縁に手をかけて意識を失っていた。その沼池の真ん中に、小高く盛り上がった土にいくつかのきのこが群生している。
男の子の手にはひときわ大きい虹色きのこがある。
「これは、この時期にはめずらしい」
「こんなに大きいのは豊潤な魔力を含んでいる証拠だろう」
「虹色きのこを採取したときに、まわりの眠りきのこに触れてしまったたんだろう」
「よく溺れずに済んだものだ」
子どもたちを引き上げ、息していることを確認すると、眠り毒の解毒薬を二人の口に注いでゆっくり飲ませる。
「よし、これで時期に起きるだろう」
大人たちは安堵して、子どもたちを背負う二人と、その二人を間に挟んで一列になって砌たちのほうに戻ってきた。
「あんたらのおかげで見つけることができたよ。ありがとう」
「じっとしてくださいっす!」
さゆみが緊張感を伴い、大人たちの背後に警戒を促す。




