第十七話 新しい仲間
さっそく仲間になったさゆみとの連携確認のため、星樹の森にやってきた砌たちは、街道から離れてはいるものの奥地まで踏みこまない距離にある、少し開けた場所へとやってきた。
「ここなら互いの技を出し合っても問題ないかと思います」
「はい、存分にやれるっす」
火鍼とさゆみは意気揚々としてやる気に満ちている。
「なんだか二人が姉妹のように見えて微笑ましいです」
菫はそんな二人を眺めてすっかり和んでいた。
「さて、さゆみ。まずお前さんのスキルについて話してくれねえか? もちろん俺たちも、得意な技やスキルについて話す」
「は、はい! えっとですね、防御に関しては完全に自動迎撃で、私を視野に入れて攻撃の意思を示すとその次の瞬間には、相手の眼前に巨大な大槌で叩き飛ばされます」
「私がやられたあれですね……」
「そ、そうです……火鍼さん、えっと、ごめなさーいっす!」
「ふふ、もう何度も謝らないでいいのです。今後はいい訓練になると思うからよろしくなのです」
「へ?」
「あの瞬間的な速さに対応できるようになれば、さらに強くなれる気がします!」
己の研鑽に余念がないことを火鍼はうかがわせる。
「火鍼よ、ほどほどにな……。それで、えっと……さゆみ以外も同様に守れたりできるのか?」
「それは無理っす。スキル『自己防衛』は私に対して有効なんすよ。皆さんを守るとしたら視認しないと、こちらの盾で守ることができないっす」
そう言うと、ストレージから大きな盾を出して見せてくれた。大きさはさゆみがすっぽり隠れてしまうくらいだ。
「この大盾は物理と魔法の両方を防ぐことができる優れものっす」
くすんだ灰色をした縦長の四角い形。真ん中よりやや上の方にのぞき窓があって、なにやら横長の四角い形で透明な板がはまっている。
「素朴な色合いながら高い能力を持つなんて……渋い!」
火鍼が変な方向に暴走する前にすかさず菫が割って入る。
「その盾、私知ってます。消防や自衛隊が使用していたものとよく似ていますよ。異世界補正なのかな、魔法を弾くんですか!すごいですね!」
「これは、町外れのごみ置き場をあさってたときに見つけたもので、ぐしゃりと折れ曲がってたのをお父さんがスキルで直したものなんすよ」
こんな硬そうなものが折れ曲がるとはいったい何と戦ったんだろうと三人は想像したが、恐ろしくて思考を打ち切った。
「ところで、その迎撃は多人数にも有効なのか? それと迎撃は正面からのみの対応になるのかい?」
「私が装備しているものに限り有効なんすけど、大槌と大盾なら際限なく複製できて、私の視界に入っていれば、いろんな方向から迎撃と防衛ができるっす。あと、歩く要塞と言っていたのを覚えてるっすか?」
「ロザーナさんが確かそう言ってたな。要塞というのは城と同じだよな?」
「えっと、そうですね……たぶん同じ意味っす。一人で討伐クエストをしてたときの方法なんすけど、自己防衛で迎撃して弱ったところに直接攻撃もできるっすよ。複数いようが大型だろうがひるまないっす」
「おおおお!」
さゆみの万能さに三人は感嘆の声をあげる。
「ただ状態異常や呪詛の類いは防げないっす。あくまでも物理による迎撃のみで、あと大槌以外の武器は使えないっす。ちなみに、この装備には状態異常耐性が付与されているので、気をつけているのは、精神緩衝による攻撃を受ける前に敵を倒すことができるかどうかが課題だと思ってるっす」
さゆみからひと通りの説明を受けて、砌、菫、火鍼の順にスキルとその特性について説明し、戦闘時の陣形について重点的に話し合った。
こちらから敵を発見した際は、砌と火鍼が先行し、菫を守る形でさゆみが防御陣形をとる。相手に先に気づかれて攻撃を受けた場合は、さゆみの迎撃が炸裂したあとを砌、火鍼、菫による相手の弱点となる攻撃を仕掛ける。二つの明快な手順として、見事に戦術がまとまった。
「あとは実戦で調整していきたいが、この森にはトレント以外のモンスターっているのかい?」
「いることはいるのですが、単独で狩れる程度のばかりなんです。群れで行動するものもここいらでは見かけません。なので、今日受けたクエストの場所に向かう道すがら、連携確認を取るのがいいと思います」
火鍼の提案に皆も頷く。
「そうね。それがいいわ。このあとは町に戻って親睦を深めるための歓迎会をしましょう」
「それは名案ですね!早く町に戻りますよ! ささ!肉が私たちを待っています!」
菫の発案に善は急げと言わんばかりに、火鍼によって町に戻ることを急かされる砌たちだった。
「火鍼お姉ちゃんはお肉大好きなんすね。私もお肉大好きっす!とくに鶏の照り焼きが好物っす!」
「照り焼きですか! 甘辛いタレと香ばしいお肉の組み合わせは最高ですね! 町に着いたら美味しいお肉をたくさん食べましょう!」
火鍼とさゆみはお互いに目を輝かせながら手を取り合い、砌たちは賑やかに町まで戻る道中、肉料理の話に花を咲かせたのだった。




