第十五話 文明の利器
ひと通り食べ終えると、三人はまた通りはずれの武器屋『元通り一式』へと向かった。
「そういや、武器屋って聞いてたけどよ、屋号は変な名前だったな。元通りって、作るんじゃなくて治すのが専門なんじゃねえのか?」
砌が疑問を口にすると、菫が答えてくれる。
「それなんですけど、なんでも元通り、新品の状態にするところからついた名前らしいですよ」
「そういうスキルだとしたら、店主は異世界人かもしれねえな」
「気になることばかりです」
そう言うと火鍼は武器屋『元通り一式』の前に立ち声を発した。
『御免!店主はおられるか!』
店の奥まで通る声を発すると、奥からこちらに歩いてくる人影が二人分見えた。
「いらっしゃいませ……って!お客様は!申し訳ありませんでした!うちの娘がとんだ粗相を働いてしまって!それでお怪我は大丈夫なのでしょうか?」
店の奥から出てきて火鍼を見つけると急に土下座をして謝りだした。
「お姉さん、眠ってたとはいえ、怪我をさせてしまってごめんなさいっす!」
こちらは先ほど居眠りしながら店番をしていた女の子で、しおれた花のようになって父親の横に同じく土下座で謝ってきた。
「あ、いや、貼り紙を見て試しにしたことなので、非は私にあります。だから、立ってください。それにほら、怪我はもう治ってますから、ね。」
火鍼はその場で元気に動いてみせる。
立ち上がった二人は砌たち三人を店の奥、カウンターの前に椅子を用意してお茶を出してくれた。
お茶を頂戴し一息つくと、砌は本題を切り出す前に、先ほど気になったことを聞いてみる。
「二人は火鍼とは初対面だよな?」
火鍼も店主に看板娘も一同に初対面であることに同意するように頷く。
「だとしたらなんで娘っ子が撃退した相手を知っているんだい?これも何かのスキルなのか?」
砌の質問は、辻褄が合わないことへの至極真っ当な疑問であった。
「その疑問、店主さんの代わりに私が答えてもいいですか?」
「わかるということは、もしや同郷!?」
「全く同じ時代ではないと思いますが、そこの店先と店内の四隅にカメラが設置されています。そのカメラで映像を記録として保存、のちほど店番の様子を確認されて事の顛末を知った、ということですよね?」
砌と火鍼の二人は、菫の言っていることがわからなかった。店主の一式直継は表情を明るくしてほほ笑んだ。
「こっちに来て、二十年近く経ちましたが、初めて同郷の人にお会いできました」
「えっと、その、映像というのはどういったものか教えてもらえないでしょうか?」
火鍼が話に割って入り、未知なるものへの興味を示した。
「カメラについては店内の四隅の上の方、天井近くに設置してあって、そこに映し出された店内の様子をこちらの箱の中の画面『モニター』で見ることができるという仕組みになっています」
モニターに映しだされた映像には、数時間前に起こったことがそこにはあった。それを見た火鍼と砌は目を大きく見開き、口を半開きにして驚いていた。
「これ、私たちですよね……? あ!私が吹っ飛ばされました!」
「これは過去を覗き見るからくりなのかい?おったまげたぜ……」
「過去を覗き見る……うん、そうですね、それがわかりやすいと思います……砌さん……」
菫は電力について確認したい気持ちもあったが、まずはここに来た理由、本題について話を進めるよう砌に目配せする。
「おっと、そうだった。店主、不躾で申し訳ないんだがよ。あんたんとこの看板娘、さゆみを俺らのパーティに入れる許可をもらえねえだろうか?」
「是非とも仲間になってほしいです」
「私たちのパーティには盾役がいないのでどうかお願いします」
砌、火鍼、菫と続けざまに熱意をぶつけられた『元通り一式』の看板娘こと、一式さゆみ14歳は勢いよく立ち上がった。
「……お父さん、私、火鍼さんたちの仲間になるっす! これで、一人だとできないクエストも受けられるっす! ……私Bランク冒険者なのに、誰もパーティを組んでくれないから、困ってたっす……」
Bランクと聞いて驚きつつもすぐさま納得の表情に変わる砌たち三人は顔を見合わせ頷く。
「落ち着きなさい、さゆみ。お母さんにも話を聞かないで即断即決はよくない」
「俺たちも急ぎってわけじゃない。よく話し合って決めてほしい。一式さんの家庭を壊したいわけじゃないねえからな」
「砌さんの言うとおりです。それに拠点はこの町にしようと思ってるんです。あ、これまだ砌さんには言ってなかったですね。ごめんなさい」
「いやいいよ。俺もこの町に来たばかりだし、しばらくはここを拠点にしたいと思ってたからな」
「そういう訳なんで、よおく話し合って答えを聞かせてください。当分は木漏れ日亭に宿泊してますから、いつでも訪ねてきてくださいね。それと砌さん、忘れてませんか?肝心の武器の手入れをしてもらいましょうよ。あと、着ているものも元通りにしてもらうってのはどうですか?」
火鍼が完全に忘れていたことを思い出させてくれた。




