第十四話 盾役候補
砌はベッドに寝転び天井を見つめた。
殺気を向けた途端に現れた大槌、寝ていた女の子のスキルなんだろうが、あれは俺にも避けられるか分からない。……いや、必ず喰らうだろう。火鍼の場合は正面に現れたが、屋内ゆえの縛りと見ていい。だから、扉はなく明けっ放しの入口なのだろうからな。
「ふむ。感知式で後の先をゆく、難攻不落の城塞。……仲間にできたら戦いの幅が広がるが、さて、親御さんにまず話を通したいところよなあ……」
寝転びながら独り言を言っていると部屋をこんこんと叩く音がした。
「菫です。砌さん、入っていいですか?」
「ああ、いいよ」
砌がベッドから起きてドアを開けると菫が入ってきた。
「火鍼は落ち着いたかい?」
「はい。すっかり落ち着いて、もう少ししたら目覚めると思います。……あの、それで、武器屋の女の子のことなんですが……あの子を仲間に誘いませんか?」
菫も砌と同じ考えに至ったようだ。
「奇遇だな。俺も今それを考えていたところだ」
砌の返事に菫が目を大きく見開く。
「推測なんだが、あれはたぶん歩く城なんじゃねえかって思ってる」
「砌さん、私のいた世界の言葉にこんなのがあります。攻撃こそ最大の防御。あの子のスキルはまさにこの言葉の通りに思えました。けれど、歩く城というのは?」
「今回のは一人による一方向からの敵意の感知だったけれど、これがもし、多人数も想定されているとしたらどうなると思う?」
「!?」
「そう、全方位完全防御もとい迎撃が可能なんじゃねえかってことさ。だとしたら、俺らの世界じゃ城そのものと言える。とはいえ推測の域はでねえんだが、とても一人相手だけとは思えねえな」
「確かに、なるほどですね。あの子のスキルとても気になります。私たちに足りない盾役候補として是非勧誘したいです! 仲間になってくれるかはわかりませんけど……。うん!まだ陽は高いですし、火鍼さんが起きたらまた行ってみませんか!?」
「ああ、いいけどよ、火鍼のことだから飯が先になると思うぜ」
「ふふ。起きがけに『肉!肉を食べないと治った気がしません!』って言いそうです」
二人は火鍼の回復を待つ間、戦いの連携について話し合った。
そろそろ火鍼が目覚める頃合いだと思い、菫は火鍼の元へと戻った。部屋へ入ると、火鍼は少しうめき声をもらして目覚めそうな兆候を見せていた。
「火鍼さん、起きたらお肉食べに行きませんか?」
菫はお肉に吊られて起きるか試してみた。
「肉!肉はどこですか!」
「起きたー!ふふ、……肉の力は偉大!」
「菫!……肉じゃない。ここは……? あの娘、……私は意識をなくしたんですね」
「はい。口から血を吐いて倒れました。ここは昨日泊
まった木漏れ日亭の一室で、砌さんが背負って運んでくれたんですよ。軽いなぁって言ってました」
「!?軽いのは当然です!忍びですから!」
火鍼は恥ずかしさに顔を赤くしてあわてた。
「そ、それで、あの娘は仲間にするんですか?」
「え?火鍼さんもそう思いましたか?……すごいです。怪我を負わされた相手なのににいいんですか?」
「貼り紙に書いてあったことを実践してみての結果ですから、非は私にあります。何があっても致命傷は避けられると自分を過信していました。皆さんにまで危害が及ばなくてよかったです。ですが、今後は気をつけます」
「わかりました。反省はそこまでです。砌さんに声をかけて下でご飯を食べましょう。火鍼さんお腹すいてますよね?」
「ふふ。肉を食べなきゃ治った気がしませんからね。行きますよ菫!」
いつの間にか部屋の入口を開けて菫を置いていこうとしている。
「え?はやい!待ってください火鍼さん」
廊下に出ると隣の部屋から砌も出てきた。
「飯だろ?俺も腹減ったし、おすすめの肉料理食べようぜ」
「あ!砌さん……、ここまで運んでくれてありがとうございました……」
火鍼は顔を赤くして砌に礼を言うと足早に階段を降りていった。
「砌さん、軽いのは忍びだから当然だそうですよ」
「あんなにたくさん食べるのに、体のどこに消えてるんだろうな?」
砌は笑いながら火鍼の食い意地を称賛した。
階段を降りて食堂を見渡すとまだ人はまばらで空席が目立つ。火鍼はカウンターに陣取りこちらだと手を振ってくる。
「注文は済ませましたよ。肉煮込み御飯定食で良いですよね?」
火鍼を間に挟んで左に砌、右に菫と座った。
「よっこらしょっと。異世界で米が食えるってのは嬉しいことよなぁ。稲を持ち込んだ異世界人に感謝だ。ありがてぇ」
「そうなんですよ~。私たちも泣くほど感動しました」
「菫は本当に泣いてたけどね」
火鍼はすっかり元気になって笑顔を見せている。
「ところで砌さん、菫にも言ったんですけど、あの娘を仲間にしませんか?」
火鍼からの提案に砌は驚いた。
「……もしや、貼り紙に気づいていたってのかい?無茶をするなぁ。次からは先に言ってくれよ。ありゃあ、俺も避けられねえ」
「ごめんなさい。はい。次からは独断専行は控えます……。それで……どうですか?」
「俺も同じ考えだ。あの看板娘を仲間にしよう」
「決まりですね」
菫が締めたところで肉煮込み定食が三人の前に出された。
「いただきます!」
声を揃えて合掌をすると、三人は無心で食に向き合った。




