第十一話 ドラゴラルド王国
「すごい!いきなりAランクですよ! 砌さん!」
火鍼が治ったばかりの左肩を激しく揺すって喜ぶ。
「砌さん、おめでとうございます! Bランク以上だから火鍼さん、例のクエストようやく受注できますね!」
菫も満面の笑みで喜び、火鍼となにやら期待を膨らませていた。
「ああそうか。二人はあのクエストを受けるのに同ランク以上の信頼できる冒険者を探していたんだったな? なるほど。この男、いや、砌となら達成できると言うんだな?」
「はい! 勝算ありです!」
菫と火鍼は声を揃えて元気よく返答した。
俺は何のことかわからずにいたが、よく知らない世界で案内役になる存在がいるのはありがたいので、パーティ入りについて言及はしなかった。
「それより、あの術はどうして禁術と呼ばれるのか?とても良い術に思うが……?」
「あれは対ドラゴン用に編み出したホースの秘技でな。あいつは、この世界で五人いるドラゴンスレイヤーの称号を持つ一人。ちなみに俺もそのうちの一人だ」
「ドラゴンスレイヤー……つまり、我らの国で言う『竜殺し』と同じか」
そう呟くと砌は口が耳まで裂けているのではないかと見紛うほど口角をあげた笑みをつくった。
「そのドラゴンとやらはまだこの世界に存在するのかい?」
「ああ、血気盛んなのがうようよとな」
バーンズからその言葉を聞き砌はこの世界での目標を明確に定めた。
「俺もその称号が欲しくなった! どこに行けば竜に会える?」
「待て待て、Aランクだからって勝手に討伐に行くことは許されねぇよ。それに、討伐していいのは邪竜認定された個体とその眷属のみだ」
バーンズが聞き分けのない子供を言い聞かせるかのように、興奮気味の砌に説明する。
「そうだよな。すまぬ。国を守ってくれる竜もいたりするもんな。大抵そういう竜は人化して人間との間に子を設けたりするものだが、この世界でもあるかい?」
「あるもなにも、この国がまさに、砌の言った通り竜人と人間の間にできた子供の子孫が起こした国『ドラゴラルド王国』だ」
「こりゃまた、そうですかい……じゃあ、国外に行かねえと狩れやせんかねぇ?」
「クエストが出ることを祈るしかねえわな。年に一、二回はクエストで回ってくる。だから、まったくないわけじゃない、それまで他のクエストをこなして待つといいさ」
「なるほどのぉ。相分かった」
「それより俺はホースの意識が戻ってから聞き取りと説教をしないといけないんでな。これで失礼するぜ」
「説教とな……原因は俺にあるのでどうかお手柔らかに頼む」
砌はホースを追い込んだ手前、これ以上の痛手を被らないでほしいと心から案じた。
「言わなきゃいけないことを言うのがギルド長の仕事なんでな。まあ善処はするさ。あぁ、それと言い忘れてた、ギルドカードを受付に提出して、ランク確定の登録を済ませたらクエストを受けられるからな」
そう言ってバーンズは上階へ向かう階段入口へと走っていった。
俺がその後姿をぼんやりと眺めていると火鍼か声をかけてきた。
「先ほど、我らの国で言う竜殺しと同じって言ってましたけど、私の時代には、いえ、それ以前にも竜なんて存在しませんでした。砌さんと私は似てはいるけど違う世界の住人かもしれませんね」
「むっ、そうなのか? 竜がいないとは! 昔から厄災と言われ、竜狩が盛んであったぞ。とくに、あやつらの肉は美味でなぁ……くうぅ!思い出すだけで涎がでてくるらあ!」
「砌さん! それってもしかして、肉厚に輪切りした上に塩や香辛料を振りかけて焼くものでは!? 仕上げにフルーツソースを掛けるんですけど、その名もドラゴンステーキ!」
菫が目を輝かせて聞いてきた。
「名前はドラゴンステーキではなかったが、料理法は大まかだがよく似ていると思う。うむ。その名も『竜の殿様焼き』と言って、殿様に献上するときに振る舞われたのでその名がついたとか」
「砌さん! その竜の討伐なんですけど私も同行してもいいですか!? 一口でもいいので竜の殿様焼きを食べてみたいです!」
「ずるいです! 私も一緒に狩りに行きますから連れてってください!」
「お、おう……クエストが出たときは力を貸してもらえると嬉しい……頼めるか?」
「はい喜んで!」
二人の元気のよい返事が返ってきたところで俺たちも一階の受付へと階段を上がることにした。
階段を登りながら菫が自分のいた世界について話してくれた。
「竜のことなんですけど、私の住んでいた世界にも竜はいません。獣人、エルフ、悪魔などの亜人と呼ばれる種族もいないわ。ただ、物語としては広く知られている名称ではあったわね。ちなみに、魔法も存在しないのよ」
「人族は一種類のみという点では同じのようだ」
「そこは私のいた世界も同じです」
菫の話に、砌と火鍼は共通しているところに同意した。




